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『儚き重い恋文(ラブレター)』
両角斑羅著
第一章『真実も事変』
2025年1月1日
新年を迎えたおめでたい日に1人の女刑事はやることも無く1人で居酒屋バーのカウンター席でつまみを5皿程並べながらウィスキーを飲んでいた。そのせいなのかうつ伏せで座っているから傍から見ていれば微かに寝ているように見受けられる。だが誰しも彼女に声をかけない訳というのは、手がまだ口につけるグラスを持ち、動き続けているからである。
あるひとりの店員が女性の元へ歩み寄った。
「すみません」
「……ん?」
「すみません」女性は小声で返事をするが店員はその声を聞こえることなく再び聞く。
「なんだよ。2度も言わせるなよ、一体なんだよ」
「ラストオーダーです。」女性の言葉に周囲がピリつくが店員さんは勇気を再び振り絞り続きの言葉を吐き続ける。
「それじゃぁ、『真実』というラストオーダーをしてもいいか?」
「は?何を言っているんですか、お客様。」
「3年前の未解決事件。山頂山崎 華香(やまざきはなか)殺人事件の犯人はお前だろ。金田 聡(かねた あきら)」
「だから何を言ってるんですか!?酔った感覚で言わないでくださいよ!なんで私が山崎 華香を殺すんですか!!」
「2022年のちょうど今どき?いや1時間後だな。山頂に女性の死体がひとつあると言う通報があり警察官が駆けつけた。死体は1時間前、ちょうど年を超えた時間に殺されてんだ。犯人探しで先に事情聴取をしたのは確か、その時彼氏だったあなたからだったからな。」
「あぁ、そうだ。俺は華香の彼氏だった。だが俺には立派なアリバイがあるんだ。犯人って決め付けるわけはないだろうが!!」
「あぁ、だがそれを覆すことが出来る嘘しんじつが出てきたらどうする。」
「真実?」
「お前は犯行時間、『職場の先輩の家に行き、共に酒を飲み年を超えていた』とそう話していましたね?」
「えぇ。」店員は固唾を飲んだ。
「その時。貴方はそこにはいない。共犯者を脅した。その時に全てぶちまけたよ。犯行の計画全て。貴方は毎日遅く帰って来て口うるさく文句を言う彼女に嫌気が差した。そして、新しい年を迎える門出に人を殺したんだ。彼女という名を新しい星にしてね。なんてユニークでロマンチックな人だろうね。 」
「ちっ、あいつが履いたなら仕方がねえ。お前をここで殺せば『真実』は全て沈む。ここで死ね!」店員はカウンター席に立てておいてあった肉を切るナイフを手に握り女性の首を絞めようとするが女性は素早く懐から銃(ハイキャパ5.1ゴールドメッキ)を手にし発砲する。放たれた銃弾は犯人の左耳をかすり腰を抜かした。
「ひっ。 」
「そしてラストオーダーをもう一度やり直そうか。『真実』を一つ私にくれ。」
「あんたが言った通りだよ。俺は嫌いだったんだよ。1日頑張って続けてきたがそれを貶し踏みにじる口うるさい文句に。」
「それが人を殺す経緯の『真実』ね。永遠の愛は大きな船と一緒。一つの永遠なる偉大な船は大きく揺れる大海原のどん底へと沈んだ。0時30分 金田聡逮捕。」
《1時間後》
警察が犯人連行してる間。彼女は再びカウンター席に座りウィスキーを飲んでいた。その少し横にはウィスキーの瓶が一本たっていた。店の奢りか分からないがその光景を見るに何かと割ることをせずストレートで飲んでいた。
「確かあなたですね。容疑者逮捕の刑事は」
「ん?あぁ、私が彼を逮捕した。」女性のすぐ後ろには刑事長が立っていた。
「私達が追っていた伊藤 哉(いとう はじめ)とはまた別の人物だった。なぜお前はアイツだと思った?」
「アンタ達が追っていた人物はもちろん犯人で間違えない。いや犯人と呼ぶよりかは共犯者の方が正解かな。でも私は気づいてた。アンタ達刑事達が集まって事件の整理を行っていたあの会議室。あの場でね。」
「なんであの場で言わなかったんだ。」
「理由は2つ。1つ目は、アンタ達が追っていた同犯者を逃がさないため。2つ目は、今捕まえた犯人の素性を調べたかったため。」
「そうか。それじゃぁ、お前に一つお願いしたい事件がある。」
「一体なんです?」女性は刑事長の命令を直に聞くため顔ごと傾ける。
「今解決した事件に絡む事件だ。山崎華香の生まれ岩手県の地域でとある事件が昨日、いや日が変わったから一昨日か。一昨日起こった。そこに向かってはくれないか?」
「はぁ?今からですか?移動費は」
「費用はこっち持ちだ。新幹線と電車で向かってもらう。」
「それなら任せてください。絶対に解決させてみせます。」女性は向けていた顔を再びカウンターに戻しグラスに口をつける。
「あぁ、伊集院 透美(いじゅういん とおみ)いや、伊集院 カルラとして公平に迎え。」
「はい。」女性の名前がわかると共に一つの大きな扉が開こうとする。それは幸と出るか不幸と出るか、サイコロの目は誰も知らぬまま。
《プロフィール》
《氏名》伊集院 透美 (いじゅういん とおみ)
《別名》伊集院 カルラ
《出生日》5月22日
《趣味》ビールとタバコ、散歩
《職業》探偵
《職種名》警視庁本部 刑事
【同日 5:30 東京駅】
カルラは昨夜の事件解決後すぐに自宅に戻り移動の準備を始めた。大きな肩掛けバックに事件で使うものや着替えの服など必要最低限のものを詰め込んだ。そのバックと駅内にあるコンビニで買った、移動中に飲むお酒とそのおつまみが入った袋を握りしめて乗る新幹線をひたすら待っていた。ブーツの踵を『コツコツ』と武者震いしながら鳴らす。
【同日 6:04 東京駅23番ホーム】
カルラは東京駅始発、盛岡駅終点の新幹線に乗り、指定された座席に着くと酒とおつまみを準備する。新幹線は動きだし約3時間の移動を始める。カルラは酒とつまみを楽しみながら今から向かう大きな事件の詳細を調べる。刑事長がメールで送ってもらった資料を見ながら全てをまとめる。
12月30日 5:00 港町海面にて
平田町住在、酒井 碧(さかい あお)さん、30歳、殺害。
腹部に大きな切り傷があり、切られた刃物は見つからず切り傷から見るに出刃包丁の可能性があり。
一真さんの懐には1つの手紙が入っており、その外見から見るに『恋文(ラブレター)』のように見える。
【手紙の内容】
『工藤一真さんへ 行く年を惜しみながらも、新しい年に希望を馳せるこの頃、気ぜわしい時期でございますが、一真様にはお変わりなくご健勝にて何よりと存じます。今年の1月1日に私の最愛の方、山崎華香さんは金田聡さんに殺害されました。その後、私は沢山の月日をかけて貴方達を見つけることができ、光栄に思います。山崎華香さんの殺害に貴方が関わっていたことにより、その第一の裁きを与えるため貴方を殺害することを決めました。華香さんは死んだとしても貴方達を恨んでいます。私はその恨みを晴らすため貴方達全員を殺害します。それまでさぞ足掻いて見せてください。 山崎華香さんを愛していた私より』
犯人は山崎華香さんを愛していた者に絞られる。
だけど今は愛していた者のみに犯人を絞るのは難しい。釜石市警(あっち)が犯人の候補を絞れていればいいんだけど。
カルラは刑事長のメールに『山崎華香が付き合っていた人の詳細を求む』と打ち込みカルラは眠りにつく。
【同日 9:05 新花巻到着】
新幹線を降りるとすぐに駅を出る。すると、1つの風が吹気荒れる。カルラは東北地方の肌を指すような凍てつく風に慣れておらず着ていたコートに身を包む。風が止むとカルラは目を開け、そこには喉かな景色に太陽の輝かしい日が当たる。都会では決して見ることができない自然が広がっていた。カルラはその美しい光景に目を光らせる他はなかった。
目を輝かせているのも束の間、カルラのスマホのバイブ音が鳴る。カルラは次に乗る電車のホームまで歩くと共にスマホを取り出し刑事長のメールを見る。
『ほれ、こっちとそっちの連携で見つけたぞ。これで全員だ』
【元恋人】
小林 湊(こばやし みなと) 30歳 小佐野町
中学時代、付き合っていたが荒い性格から嫌われた1人目の彼氏。付き合っていた期間 約2ヶ月
坂本 律(さかもと りつ) 29歳 港町
高校時代、付き合っていた一つ下の後輩。片付けができない性格から疎遠に。 4人目の彼氏
工藤 一真(くどう かずま)31歳 平田町
高校時代、付き合っていた先輩。リーダー的でチームを引っ張る性格だったが愛が冷めたと言われ、それっきり関わることが無くなった。3人目の彼氏。 付き合っていた期間 約3ヶ月
常山 先人(とこやま さきと)30歳 鵜住居町
高校時代の同級生。1年間付き合っていたが人見知りな性格と華香が他の人に目移りしたことで縁が切れる。2人目の彼氏。付き合っていた期間 約5ヶ月
大塚 蓮人(おおつか れんと)31歳 甲子町
高校時代に一つ上の先輩。当時2年生からしたら頼もしい先輩だったがネットアプリで他の人に目移りして縁の破綻。5人目の彼氏 付き合っていた期間 約5ヶ月
『Thank you』
カルラは一通り詳細を見ると刑事長へ返信し、次の被害者と容疑者になりそうな元恋人達の詳細を見て少し頭を悩ませる。
見ている内にあっという間に電車が到着し、カルラは重たい肩掛けバックを持って乗り込んだ。ここから約2時間の移動が始まり、その間カルラの脳内には恋の殺人鬼の捜索が始まった。
(もしかしてこいつら…)カルラは一つの絡まった糸は解けたように感じた。でもまだ可能性。このミステリーの絡みは解けることを知らない。
【同日 10:52 釜石駅到着】
ここを舞台に絡む大きな恋愛ミステリーは一つの大きな扉を開ける。
第一章『真実と事変』 終わり