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美咲は、放課後の静かな時間が過ぎていく中、智也との距離をどう縮めるかを悩んでいた。彼との関係が少しずつ深まってきていることは感じていたが、どうしてもそれが自然に進んでいくことができない。智也の気持ちが本物であることを信じたいけれど、何か不安で、心の中にはモヤモヤとしたものが残っていた。
その日、美咲は放課後にいつものように春菜と一緒に帰ろうとした。春菜は美咲の親友で、いつも悩みを聞いてくれる頼りになる存在だった。美咲が智也との関係について話し始めると、春菜は少し考えてから、いつもの元気な笑顔でアドバイスをくれた。
「ねえ、美咲、ちょっとアドバイスしていい?」
「うん、もちろん。」
春菜はしばらく黙って考え込んだ後、思い切ったように言った。「智也くんともっと仲良くなりたいなら、ちょっと距離を縮めるために、彼に自分から少しだけ頼んでみるのはどう?たとえば、何か手伝ってもらうとか、少し甘えてみるとか。」
美咲は驚いた顔をしたが、すぐに春菜の言葉を噛みしめた。確かに、自分から智也に頼ることが少なかった。いつも智也が気を使ってくれていたが、それでも彼にもっと近づきたいという気持ちはあった。
「甘える、か…そういえば、あまりしたことないかも。」
春菜は微笑んで頷いた。「うん、男の子って、ちょっとした頼みごとをされると、意外と嬉しがるんだよ。特に、美咲みたいに真面目な子が頼んでくると、智也くんもきっと喜ぶと思うよ。」
美咲は少し考えた後、決心したようにうなずいた。「ありがとう、春菜。やってみる。」
次の日、美咲は智也と一緒に帰ることになった。その道中、彼女は春菜のアドバイスを思い出しながら、勇気を出して智也に話しかけた。
「智也くん、ちょっとお願いがあるんだけど…」
智也は歩きながら振り向き、少し驚いたように彼女を見つめた。「うん、どうした?」
「この前、数学のテストのことで悩んでたんだけど、ちょっとだけ教えてもらえないかな?一緒に勉強できたら、すごく助かるんだけど。」
美咲は、恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、言葉を続けた。智也は少し考えてから、優しく笑顔を見せた。
「もちろん、いいよ。勉強だったら、俺も手伝うよ。」
その言葉に、美咲は心の中でほっとした。智也が自分を助けてくれることを嬉しく思いながらも、同時にこれで少しずつ距離が縮まったような気がして、胸が高鳴った。
その後、何回か二人で放課後に一緒に勉強する時間が続いた。智也は最初こそ遠慮がちだったが、次第に自然に二人で笑い合いながら勉強するようになった。美咲も徐々に自分の気持ちを智也に素直に表現できるようになり、二人の距離は確実に縮まっていった。
だが、そんな中、春菜は少し複雑な表情をしていることが多くなった。美咲が智也との関係を深めていくたびに、春菜の表情が曇っていくことに美咲は気づいていなかった。それはまるで春菜が何かを隠しているかのように、時折、微妙に彼女の顔色が変わるのだ。
ある日、放課後に美咲が春菜と一緒に帰ろうとしたとき、春菜が突然、少し不安そうに言った。
「美咲、あのさ…智也くんと仲良くなってきたけど、ちょっと気をつけた方がいいかもしれないよ。」
美咲は驚き、すぐに春菜を見つめた。「どういうこと?」
春菜は少し躊躇いながらも、言葉を続けた。「智也くんって、みんなに優しいけど、ちょっと誰にでも手を差し伸べるタイプじゃない?そのせいで、あなたが傷つかないか心配なんだ。」
美咲は少し黙って考えたが、すぐに首を振った。「でも、智也くんは私に本気だって、私にはそう見える。大丈夫だよ。」
その言葉を聞いた春菜は、何とも言えない表情で微笑んだ。しかし、その笑顔はどこか空虚なもので、美咲はその変化に気づくことができなかった。春菜の心に秘められた複雑な感情には、美咲はまだ気づいていなかった。
智也との関係が進展する中で、美咲は春菜の微妙な変化に気づかないままでいた。その日が来るまでは…。