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放課後の校庭は、すでに夕暮れ時の静けさに包まれていた。美咲は机に向かって数学の問題を解いていたが、何度もペンを止めては考え込んでしまう。智也との関係が少しずつ進展しているのは感じるものの、どうしても気になることがあった。それは、智也に告白するタイミングだ。
彼が自分にどう思っているのか、確信が持てずに美咲は毎日のように心の中でその問いを繰り返していた。しかし、春菜の言葉が頭をよぎる。『智也くんには少し気をつけた方がいいかも』というその言葉が、彼女の心の中でずっと響き続けていた。
そんな美咲の心情を知らずに、智也は次の日、いつものように美咲に話しかけてきた。学校が終わると、二人で一緒に帰ることが日課になっていた。その日も、放課後の帰り道、智也はいつものように自転車で待っていた。
「美咲、今日はどこ行く?」
智也が問いかけると、美咲は少し戸惑いながらも答えた。「えっと、特に決めてないけど…」
智也は微笑んだ。その笑顔を見ると、美咲の胸がドキドキと高鳴り、ますます彼に対する想いが強くなっていくのがわかる。しかし、それと同時に、告白する勇気がなくて、心が押しつぶされそうだった。
「じゃあ、少し公園に寄ってもいいかな?最近、なんだかゆっくり話したい気分なんだ。」
美咲は驚きながらも、智也の提案を受け入れることにした。二人は公園に向かって歩きながら、自然と会話を交わしていた。智也の言葉の一つ一つが、美咲の心に響いていた。
公園に着くと、智也はベンチに座り、美咲を隣に誘った。二人は並んで座り、しばらく無言で空を見上げていた。美咲は緊張して手を膝の上に置き、どうしても言葉が出てこなかった。
「美咲、なんか最近元気がないみたいだね。何かあった?」
智也の優しい声が、美咲の心に刺さる。彼が心配してくれるのが、嬉しくもあり、悲しくもあった。美咲は自分の気持ちを伝えたいと思いながらも、なかなかその一歩を踏み出せずにいた。
「智也くん、私、あなたに伝えたいことがあるんだ。」
ついに美咲は、言葉を口にした。智也は驚いた様子で彼女を見つめた。
「え、何?」
美咲は緊張で手が震えながらも、意を決して言った。「実は、私、ずっと前から智也くんのことが好きだったの。好きになってしまったんだ。」
言葉が出た瞬間、美咲は自分の心臓が跳ねるのを感じた。智也の表情は一瞬固まり、その後、少し考えるように目を伏せた。
「美咲…」
智也は少し間を置いてから、ゆっくりと口を開いた。「俺も、美咲のことが気になってた。でも、なんで今さら?」
美咲は驚き、少し顔を赤くした。「え…?それって、どういうこと?」
智也は顔を上げ、美咲をじっと見つめながら言った。「俺もずっとお前のことを気にしてた。でも、俺たちの関係がまだ少し微妙だと思ってた。だから、告白するタイミングを探していたんだ。」
その言葉を聞いた美咲は、驚きとともに、心の中で安心感が広がった。しかし、同時に不安もあった。智也が自分に対してどう思っているのか、完全に理解できていなかったからだ。
「でも、今こうして言ってくれて、嬉しいよ。」智也は微笑んで、美咲の手を優しく取った。その温もりに、美咲は一瞬、心が満たされるのを感じた。
「智也くん…私、これからもっとあなたと一緒に過ごしたい。ずっと、あなたのそばにいたい。」
智也は一度深呼吸をしてから、優しく美咲の顔を見つめた。「それなら、俺も。これから一緒に過ごそう。」
その瞬間、美咲は自分の気持ちが智也に届いたことを実感した。二人の間に、ただの友達以上の何かが確かに芽生えたことを感じながら、彼女はもう一度、智也の手を握った。
それが、二人の新しい始まりだった。
しかし、今後がどうなるのか、美咲はまだ予測できなかった。智也の心の中に何があるのか、彼の本当の気持ちはまだはっきりしない。それでも、美咲はこの瞬間、彼と一緒に歩むことを決意していた。
その後、美咲と智也の関係は少しずつ深まっていくが、二人が迎える試練はまだ先に待っていた。
美咲の心は、まだその先に待つ複雑な感情に対して、心の準備ができていないことに気づいていたが、それでも智也との未来に希望を抱いていた。