テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「ハンバーグね。じゃあちょっとスーパー寄っていい? 材料買わなきゃ 」
「うん」
荷物も多いし嫌がるかなと思ったけど、意外にも素直に頷く尚。
(そんなにハンバーグが食べたいのかな?)
そう思うと、ちょっと可愛く思えてしまった。
そしてスーパーに寄ってから帰宅し、私は休む間もなくハンバーグを作り始めたのだけど、疲れていたはずなのに不思議と苦ではなかった。
その夜。
「あ、洗面所の電球切れちゃった」
洗面所で歯を磨いていた時に突然電球が切れてしまい、私がバタバタとやっているのに気付いた尚がリビングからひょっこり顔を見せ、「何してんの?」と聞いてくる。
「見て分からない? 電球が切れちゃったから替えようとしてるの」
「ああ」
私の言葉に納得した尚。
そのまま戻るのかなと思ったら、
「貸せよ」
「え?」
「替えてやるよ」
俺がやると、私が手にしていた替えの電球を取っていく。
「替えてくれるの?」
「おう。これくらい言えばやってやるって」
「……あ、りがとう」
こんなの当たり前だと言うかのように尚は手際よく替えてくれた。
(……何だか、頼りになるじゃん)
一人暮らしだと、こういった事も全て一人でやらなきゃならなくて大変だと思っていたけど、こうして代わりにやってくれるのを見ていると、尚との同居もまぁ悪くないかなと思ったりもしたのは内緒。
月曜日の朝、
「やばいっ、寝坊した! 今日は二限から講義だから早く準備しないと!」
休み明けの朝というのはどうにも苦手なようで、いつも慌ただしい朝を迎えているのだけど、今日はいつもより遅く起きてしまい普段以上に慌てていた。
今から支度をしないとちょうどいい時間の電車に乗り遅れてしまう事もあって、私は慌ててベッドから降りると勢い良く寝室を出た。
バタバタと準備をしている私とは対照的に、尚は先日買った布団にくるまり気持ち良さそうに眠っている。
(全く、呑気なものね)
今の尚は学校に行く訳でも仕事に行く訳でもないので、私のように急いで準備したりする必要がないのだ。
(本当、羨ましいったらないわ)
けれど、私は一つ重要な事を思い出す。
いくら暫くこの部屋に住まわせる事を了承したとは言え、私の留守中に彼を一人部屋に置いていくというのはどうだろう。
悪い人じゃない事は分かるけど、やっぱりまだ留守を任せられるくらいに信用出来ているかと問われると素直に頷けない。
(申し訳ないけど、私が留守中はどこかで時間潰してもらおう)
着替えを済ませ、髪型を整え終えた私はメイクをする為リビングにあるローテーブルの上に鏡を立てて置き、メイク道具を準備し終えたタイミングで、
「ねぇ尚、そろそろ起きて!」
強引に尚の事を揺さぶり起こした。
「んん……」
「ねぇ、尚ってば」
「……んだよ……」
寝起きが悪いのか、無理矢理起こした私の事を恨めしげに見てくる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!