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「あの女、やっぱり不倫してたか。心配するな。想定内だ。そんなことで暴れたりしない」 「それがただの不倫でなくて……」
と言い出したから、余は青ざめた。
「ただの不倫でない? まさか余が生まれる前から不倫していて、パパが余の本当の父親ではないとか……?」
もしそうだったらあの女も間男も生き地獄を見せてから殺してやる!
そのときの余の怒りの炎はおもちゃ花火の火花とは比較にならないもので、この街を焼き尽くすほどであっただろう。
でも、それからすぐにそれ以上の怒りに震えることになるとはそのときはまだ知らなかった。
「いや、托卵ではなかったようですが……」
「托卵でないなら別にいい。まどろっこしい言い方せずにどんな不倫だったのか早く教えろ!」
「おれたちが言っても信じてくれないと思うので、隠し撮りした動画があるので見てください」
「隠し撮り?」
「森瑠奈がいつも利用してるラブホの支配人を脅して部屋にカメラを設置させてもらいました」
森瑠奈はあの女の名前。パパにはさん付けなのにあの女は呼び捨てなところに、慎司がどれだけあの女を嫌悪しているかがうかがえる。托卵ではなくて正直ホッとしたけど、それに劣らず悪質な不倫だったということだろう。出会い系にでも手を出して間男が一人二人でなく無数にいるというパターンだろうか? それはそれでパパに知られれば、床に叩きつけられたグラスのようにパパの心は砕け散るだろう。
慎司はおずおずとタブレットを取り出して、余の目の前で動画を再生させた――