テラーノベル
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《Re:Layer》の都市北端。そこは公式には“存在しない場所”とされている。
古いアップデートの残骸、捨てられたテストエリア、未完成の地形データがぐちゃぐちゃに重なりあう、廃棄街(スクラップゾーン)。
夜のネオンはここまで届かない。代わりに、無数の壊れたホログラム広告がチカチカと断続的に光っている。まるで、過去の記憶が消えきれずに残っているみたいに。
「うわ……めっちゃ雰囲気あるじゃん……」
アカネ(あかり)は思わず声を漏らす。
怖い。でも、どこかでワクワクしてる自分もいた。
「警告:このエリアは通常アクセスを制限されています。進行を中止してください。」
システムボイスが機械的に告げる。無視して一歩進むたびに、周囲の空間がカクカクと歪みはじめる。
「……やっぱ、ここ、普通の場所じゃない。」
データの海の中に沈んだ街。その奥に、ひときわ目立つホログラムの建物がひとつだけあった。
廃ビルみたいな外観。けど、扉は新しく“誰かに使われてる”気配がある。
――その中に、“もうひとりのわたし”がいる。
手を伸ばして、ドアに触れた瞬間。
*ガシャンッ*
音とともに、アカネの足元に鋭い何かが突き出された。黒いロボットのような存在――
いや、それはセキュリティAIだ。公式では廃棄されたはずの、旧型のガーディアンタイプ。
「警告。未許可ログインID《Akari_001》、侵入を確認。削除処理を開始します。」
「えっ、ちょ、削除って何!?私この世界のデータなの!?!?」
ミウが急いで横から突っ込む。
「やばいアカネ、本気で攻撃くるやつだよ!下がって!」
「うわっ、いや、待って――!」
ガーディアンの腕が光り、ビーム状の何かがアカネを狙う――そのとき、
*バチッ!*
紫色のエネルギーが空中で炸裂し、ビームがかき消された。
「……やめなよ、そいつは“まだ”知らないだけ。」
その声に、アカネの全身が凍りついた。
ビルの入口に、ひとりの少女が立っていた。
銀髪に青い目、そして何よりも――あかりにそっくりな顔。
「あなた……だれ?」
「うーん、難しい質問だね。」
少女はニコっと笑ってこう言った。
「私は“アカリ”。あなたの、未来のログイン記録。」
――未来の、わたし?
コメント
3件
えなんかさ...普通に売れそう...w
こういう急展開の小説好き