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「太宰さん!太宰さん!」
「ん?どうしたんだい?」
「これ見てください!」
「え〜と……花火大会?」
「そうです!探偵社の皆さんで行きませんか!」
「……いいね」
「浴衣でも来て行く?」
「はい!」
「それじゃあ浴衣を買いに行こうか!!」
「えっ!?今からですか!?」
「そうに決まっているじゃないか!」
「さぁ!行こう!」
「わぁっ!」
「うーむ……敦君には白が似合いそうだけど……」
「太宰さん……これで何着目ですか……?」
「12着目!」
「もうそろそろ決めましょうよ!」
「だって敦君はなんでも似合うんだよ!」
「これは悩み所でしょ!」
「もう……自分のは選び終わったんですか?」
「敦君に決めてもらうつもり!」
「はぁ……」
「よし!決めた!」
「これにしよう!」
太宰さんが選んだのは白と黒、金で出来た
上品な浴衣。
とても高そうだ。
「これ幾らですか?」
「7万!」
「ななっ……!?」
流石に驚きの数字だ。
「まぁ妥当かな!」
「いやいやいやいや!こんなの無理ですよ!」
「お金はあるよ?」
「お金……はあるとしてもこんなの着れませんって!」
平民の僕にはとても似合わない。
「似合ってるんだけどなぁ〜……」
「兎に角買いませんから!」
「え〜……」
「折角、私が選んだんだけれども……」
「うっ……」
僕は押しに弱い。
こんな事云われたら……
「わ、分かりました!良いですよ……」
当然こうなる。
「やったぁ!!ありがとう敦君!好き! 」
「抱き着かないでください!ここ外ですよ!?」
「いいじゃないか!」
ジロジロと見られて恥ずかしい。
「まぁ仲良しねぇ〜!」と云う声すら恥ずかしい。
「早く帰りますよ!」
「もう少し抱き締めさせてくれ給え!」
「駄目です!」
花火大会当日。
「しゃちょー林檎飴食べたーい」
「あそこにあるぞ」
「太宰買って〜」
「太宰さんいませんよ?」
「敦もいないねぇ……」
真逆……
「だっ、太宰さん!ここ何処ですか!?」
「此処ね、花火がよく見える場所なんだよ」
「そ、そうなんですか……?」
「でも、皆さんが……」
「あの人達なら大丈夫でしょ〜!」
「まぁ、そうですね……」
「さぁ、あのベンチに座ろう」
「確かに眺めがいいですね」
「だろう?」
ー 間もなく、花火大会が始まります ー
アナウンスが響く。
「早いね」
「そうですね」
「……緊張してるの?」
「はい、こういうのは初めてなので……」
「そうか……」
この子は孤児院育ち。
劣悪環境で育った子。
毎朝毎晩暴力を振るわれ続けた子。
それでも……この子は強い。
そして優しい。
そんな所に惹かれたのだ。
「あ!始まりましたね!」
ドン、と大きな音を立て始まった花火大会。
彼の瞳を見ると、美しい花火が映っていた。
花火の色が彼の白銀の髪を彩る。
とても綺麗だ。
「綺麗ですね〜!」
素敵な笑顔を浮かべる彼。
あぁ、とても可愛らしい。
私はそんな彼に近づき、
そっと、彼の唇と私の唇を合わせた。
「……へ?」
一気に真っ赤になる彼の白い肌。
「……綺麗だねぇ〜!」
暗闇に咲く美しい花の下、
二つの黒い影が揺らりと揺れていた。