:終電を逃した夜のスタジオ
スタジオの空気は、ほんの少し湿っていた。
雨が降っている。終電は、もうない。
この部屋にいるのは、涼架・滉斗・元貴、そしてあなた。
ふいに滉斗が声を漏らす。
「……ねぇ、俺のこと見てる?」
あなたが顔を上げると、滉斗がじっと見ていた。
その目は、どこか不安げで
――だけど、優しくて。
「さっきからずっと、涼ちゃんのほうばっか見てない?」
「……なんか、悔しい」
涼架はソファに座って、無言でスマホをいじっていたが、聞こえているらしい。
視線も上げずに、ぽつり。
「見てほしかったら、もっと声出せばいいのに。わかりやすく」
「え、なにそれ……」
滉斗がムッとする。
「じゃあ俺、今からめっちゃわかりやすくするからな。覚悟して」
滉斗があなたの隣にすっと座って、肩に寄りかかってくる。
「……ねえ、○○、今日泊まるんでしょ?」
「だったら、俺の隣で寝てよ。ベッドは俺の場所ね」
「他の人と寝たら、怒るよ?」
あなたが目を見開くと、元貴が少し離れたところから口を挟んだ。
「は?何言ってんの、滉斗」
「○○は俺と寝るから」
あなたが言葉を探す前に、元貴はスタスタと近づいてきて、あなたの手を取った。
「……この手、俺があっためてあげる」
「涼ちゃんに触られたあとだと、冷たく感じるでしょ?」
「……俺は、ちゃんと熱くできるよ?」
あなたが赤くなると、涼架がようやくスマホを置いた。
無表情なまま、静かに言う。
「どっちも譲る気ないんだ?」
「ない」
滉斗と元貴が声を揃える。
涼架はふっと笑って、あなたに近づく。
「……じゃあ、こっちはどう?」
そう言って、あなたの髪をさらりと指ですくい上げ、耳元に囁いた。
「今夜は……俺が独り占め、してもいい?」
ゾクリとするような声。
滉斗が叫ぶ。
「ずるい!!急にスイッチ入れんな!!」
元貴も真っ赤な顔でツッコむ。
「お前、普段放置してんのに、そういうときだけ甘くすんのマジで反則なんだけど!?」
涼架は肩をすくめて微笑む。
「だって……○○が、俺のこと見てくれなかったから。嫉妬してたんだよ?」
あなたの頬に、ふわりとキスを落とす。
「……今夜は、放置しない。ずっと、くっついてる」
その瞬間、滉斗も元貴も怒涛の勢いであなたに詰め寄る。
「俺もキスする!!!!」
「は?俺が先だし!!!」
「ちょ、○○、こっち見て、俺が一番好きでしょ?」
「いや、○○は俺のだから!!!なあ、言ってみ?」
「ちょ、涼ちゃん、また無言で○○の腕触るのやめて!!!」
「マジでそういうとこずるいんだって!!」
あなたは思わず笑ってしまう。
3人の甘くて必死な声に包まれて。
雨音すら、遠くに感じた。
次回、お風呂イベント