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「ルウラは今頃どこにいるだろ…」
そう呟いてパンを齧る優恵楼(ゆけろう)。
優恵楼はいつも通り朝起きて、成長している小麦の収穫、収穫した場所に種を植え
その種の余りを今や家族であるニワトリのお主(ぬし)とお奥(おく)に朝ご飯としてあげる。
そして成長した果実の成る木から果実を収穫し
さらにその実が成っていた木を伐り、木材を回収し、今朝ご飯を食べている。
優恵楼がやることはほぼ毎日同じ。チェスト(箱)に入れたアイテムの整理
収穫した果実をクラフトしてジュースを作ったり、収穫した小麦をクラフトしてパンを作ったり
釣りをして魚を釣って燻製機で魚を焼いて焼き魚にしたり。
とにかく来たる引っ越しの日に備えて、持っていく順位の高いアイテムを吟味し
移動距離がとてつもないときに備えて食べ物を用意する。朝ご飯を食べ終えた優恵楼はいつも通り釣りに励む。
「…」
無言でどこを見るわけでもなくボーっとしながら釣り糸を海へと垂らす。
釣りをしていてわかったことがあった。優恵楼が“ゲーム”としてワールド メイド ブロックスを
画面を見ながらコントローラーでプレイしていたときは、川だろうが海だろうが池だろうが
たかが1マスの水たまりとも呼べる水場だろうが、釣れる魚は一緒だった。
しかし実際にワールド メイド ブロックスの世界で生きてみて
実際に釣りをしてみると、川と海では釣れる魚が違うということがわかった。
いや、実際にはゲームのときと同じで釣れる魚はどこも一緒なのだが
釣れる”率“が違うということがわかった。川で釣りをしていると鮭が多く釣れる。
海で釣りをすると鱈や熱帯魚、フグが釣れ、鮭が釣れる率はぐんと下がる。
さらに川でも海でもない、優恵楼が掘って水入りバケツで水を入れただけの場所では
魚が釣れる率がぐんと下がる。睡蓮の葉や糸、木のボウルや腐った肉が釣れる率が高くなる。
ほとんどやることが釣りしかない優恵楼は釣り場を変えて、釣りを楽しむ工夫をしていた。
一方、ルウラは海を渡って孤島で家族のラマ、シェアとハーフと寝て一晩を明かした。
そしてシェアとハーフにご飯をあげ、ルウラ自身も朝ご飯を食べた。
朝ご飯を食べながら周囲を見回す。前方、海。左側、海。後方、海。右側、海。焼き魚を食べながら
「こんだけ海が広がってると、優恵楼には悪いけど、魚もなんか…なんかになるわ…」
と呟いた。地図を見る。
「まだこっち埋まってないけど、こっち側も見る限りは海だしなぁ〜…」
と地図の、今ルウラたちがいる孤島の上部を見て、そちら側の海を見て呟く。
「海の向こうに大陸あったりするか?なあ?シェア?ハーフ?」
モニョモニョ口を動かしながら首を傾げるシェアとハーフ。
「さて。とりあえずこの地図を埋めよう」
と腰を上げる。シェアとハーフも立ち上がる。ルウラはシェアとハーフの手綱でシェアとハーフの胴を括る。
そして2人の胴の上に絨毯を敷く。そしてその上、絨毯の中央にサドル、鞍を乗せる。
「よしっ。準備完了。よし、2人とも行くぞー」
シェアとハーフが海に足を踏み入れる。そしてサドル、鞍の上に座るルウラ。
「この地図はあと半分くらい。たぶんあと半分は海だろうけど…頑張ってくれな?」
「(「ふ」と「く」の間)ん!(まかせろ!)」
「「(「ふ」と「く」の間)〜ん…(しょーがないなぁ〜)」
と言うシェアとハーフの頭を撫でるルウラ。海へと繰り出していった。
「あぁ〜〜…暇だぁ〜〜」
と声び出しながら釣り糸を海に垂らしている優恵楼。
釣り場を変えて、なるべく釣りを楽しもうとはしているものの
結局は川、海、自作の池の繰り返しであまり光景も行為も変わらない。
「こんだけバンバン釣れてたら釣り好きには楽しいんだろうなぁ〜」
と呟きながら浮(うき)が沈んだので思い切り釣竿を引く。すると色鮮やかな熱帯魚が釣れた。
「おぉ…熱帯魚…」
海では鱈の他に熱帯魚も釣れる率が非常に高くなっていた。
「…はいはい」
優恵楼は熱帯魚を釣竿から外し
「リリース」
と言いながら海にリリースした。熱帯魚は焼いても食べられないし、そもそも
「焼けたとしても…食べたくないよな…」
熱帯魚を食べたくはない。一応熱帯魚の使い道もあるのだが
そこまで必要としていないので、熱帯魚が釣れたときは毎回リリースしている。
「場所変えるかー」
自分で作った池ではなく、森の中に自然生成された池へ行くことにした。
木々に囲まれたその池は都会で生活していた優恵楼からしたら、珍しいほどの大自然を感じられた。
鼻から息を吸い込む。木々の葉や幹の香り、地面に生え、風にそよぐ草の香り
池の周りの、少し湿った土の香りが鼻に届き、肺まで到達する。そして吐き出す。
別に汚れてもいないはずだが、心が浄化された気分になる。
「さて、釣りますか」
と言った後に浮(うき)を池に投げ込む。
波が立つ海と違って穏やかな水面に浮(うき)が着水すると、水面に、その浮(うき)を中心として波紋が広がる。
「ま、釣りますかって言ったけど、池では魚が釣れる率のほうが低いんだけどね」
と言っていると早速浮(うき)が沈む。
「キタキタ」
と釣竿を引く。すると抵抗感が一切なく、スルッっと優恵楼の手元に浮(うき)が帰ってきた。
「はいー大当たりー」
大外れの睡蓮の葉だった。海に移動して
「…よいっ…」
とすでに浮かべていた睡蓮の葉に
「しょ」
と恐る恐る飛び乗る。睡蓮の葉は揺れることも滑ることもなく
安定した足場となってくれているので乗ることができる。そして
「はい足場」
と言いながら海の水面に睡蓮の葉を浮かべる。
「さてさて、もう1回蓮の葉でも釣りますかー」
なんて冗談を言いながら睡蓮の葉から砂浜にジャンプして池のほうへと帰る。冗談だったのだが
「…」
帰って1発目に釣れたのが
「有言実行ってか?」
睡蓮の葉だった。また海に浮かべに行って帰ってきて睡蓮の葉が釣れたら
たぶんイラッっとするので貯めておくことにした。
後ろに一回振りかぶり、池の中央に向かって浮(うき)を投げ込む。ポチャンッ。
穏やかな水面に浮(うき)が着水し、水面に、その浮(うき)を中心として波紋が広がる。
そよ風で釣竿と浮(うき)を繋ぐ糸が微かに揺れ、浮(うき)も微かに動く。
その動きに呼応して、水面にも微かに波紋が広がる。そよ風で木々の葉がさかさはと音を立てる。
地面に生えている草花もそよ風に揺らぐ。呼吸が自然と深くなる。すると一瞬風が強まった。
「ん?」
なにかを感じた。瞬間、手に手応えを感じた。釣竿を引く。
「うおっ。まさかの大物か?」
と言いながら釣竿を引く。相手は大物のようで引きが強い。釣竿がしなる。
優恵楼も腰を落とし、綱引きで綱を引くときのような姿勢になる。浮(うき)が段々と近づいてくる。
「っ…あと…ちょい…」
次の瞬間引く力が緩んだ。浮(うき)は水滴と共に宙を舞い、優恵楼は尻もちをついた。
「イテテ…」
と尻もちをついた優恵楼の足元にペチャッっという音と共に、紫色に輝いた本が落ちてきた。
「おっ!大物だ!」
魚ではないが大物だった。それはエンチャント本と呼ばれるもの。
エンチャント本とは、ツール(道具)、武器、防具につけることができるエンチャント(強化)が記された本。
「大当たりぃ〜」
どこかで聞いたことある言い方をする優恵楼。その場にあぐらをかき、エンチャント本を拾う。
エンチャント本はまるで防水加工が施されているように
表紙に水が染みることなく、水の粒として乗っかっていた。まるで埃を払うように水を払いのける。
「これは?…中に?」
中にエンチャントの名前が書いてるのかな?と言おうとしながら
エンチャント本をぐるっと見回してみた。すると表紙にエンチャントの名前が書いてあった。
飛び道具耐性Ⅲ
忠誠Ⅱ
火属性Ⅰ
宝釣りⅡ
「おぉ…」
なんとも言えないものだった。
「なんだろう…この素直に嬉しいと感じないこの感じ…」
エンチャント(強化)にはツール(道具)につけられるもの、武器につけられるもの
防具につけられるものと、それぞれつけられるものが分かれている。今回の場合だと
飛び道具耐性Ⅲ→防具
忠誠Ⅱ→武器(トライデント)
火属性Ⅰ→武器
宝釣りⅡ→ツール(道具)(釣竿)
という感じである。
「じゃあそれぞれにつければいいんだから、素直に喜べば良いのに」
と思う方も仰る方もいるだろう。しかしそれができないのだ。
エンチャント本は1回で消費されてしまうアイテム。
なので今回でいえば「防具に飛び道具耐性をつけたい」となったら
他の3つはどこにつくこともなく、そのエンチャントごとエンチャント本は消えてしまうのだ。
なので嬉しいのだが素直に喜べないのである。
「ま…。うん。初エンチャ本だからね。大事に取っとこうかな」
なんて冗談を呟く。
「そういえばこれ、中身ってどうなってんだろ」
優恵楼がワールド メイド ブロックスを“ゲーム”として
画面を見ながらコントローラーでプレイをしていたときは
エンチャント本になにが書かれているかなど気にしたこともなかった。
なんならエンチャント本が本であることすら認識していたかどうか。
優恵楼は興味津々で紫のオーラに包まれ光る本を開いてみた。
「…」
そこに書かれていたのは
「…何語?」
何語かわからない文字の羅列だった。
「…あぁ〜…エンチャントテーブルから出てる…ん?あれは本棚から出てるのか?
ま、エンチャントテーブル周辺に漂ってる変な文字か」
なんて呟いていた。
一方のルウラは、シェアとハーフと共に海を漂っていた。ルウラは地図を見たり前方を見たりしながら
「まだ海か…」
と呟きながら地図を埋めていた。地図は1枚埋まり、2枚目も縦の半分ほどが埋まっていた。
「2枚目は全面海で埋まるか?」
なんて言っていたら、埋まっていく地図の端、そして視界の遠くの方に陸地が見えた。
本来なら海を抜けて陸地が見えたら嬉しいはずなのだが
「…マジか…」
ルウラも
「(「ふ」と「く」の間)〜ん…(Oh〜no…)」
「(「ふ」と「く」の間)ん…(あぁ…)」
シェアとハーフも難しい表情を浮かべていた。
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