テラーノベル
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燐音の家のソファでくつろぎながら、ふたりでスマホを触っているとき、メリが突然言った。
「ねぇねぇ…………自宅まで待てなくてタクシーの中で始めちゃうカップルどう思う?」
なにが、とは言わないが、まあアレのことだろうなと燐音は察する。
ソファの背もたれに片腕ひっかけて、ダラッとくつろいでた燐音。メリの声にちょっと目を上げて、スマホの画面を覗き込んでくる様子を見て、にやっと笑った。
「……ハハ、またそういう系の動画かよ、メリ〜。 好きだなァ、そーいうの……♪」
からかうように笑いながらも、スマホを横目でチラッと見て、話題の内容を頭の中で咀嚼する。少しだけ真剣なトーンを混ぜて、メリのほうを見やる。
「タクシーで、か? ……ふッ、アツいじゃねェか。 俺は、アリだと思うぜ。そんだけ我慢できねェくらいお互い欲しがってんなら、もうそれは運命ってヤツじゃね?」
そう言って、わざとらしく口元を拭うしぐさをした。
「ええ、意外…………場所わきまえろとか言うかと思った」
メリは燐音の肯定発言に驚く。燐音はクスッと笑って続ける。
「まァな……でもさァ、運転手さんトラウマになンねーかな? 『またかよ…』みたいな顔されンだろ」
そしてちょっとドヤ顔をして、
「ま、俺っちならカーテン閉めて音も立てずに……って、いや無理か、メリが声我慢できるわけねェし??」
「は? 別にそんなことないし!」
燐音はニッといたずらっぽく笑って、メリをスマホごと引き寄せてきて、膝の上にぽんと置いた。
「てかさ、そんな話するってことは…… メリ、もしや……試してみたいってコト? ん〜?」
ぐっと身体を傾けて、ソファの隙間に入り込むようにして、メリの耳元で低く囁く。
「……え? …………え?」
するとメリは、虚を突かれたような顔をする。
「……今夜、帰りタクシーでいいよな?♡」
追い打ちをかける燐音に、慌てて腕を振って全身で否定する。
「いやいやいやいや、やりたいとかじゃ決してないです!」
その必死な否定っぷりに、燐音は「ぷっ」と吹き出して、そのまま笑い転げた。ソファの背にもたれながら、片手で腹押さえて笑ってる。
「きゃははッ、メリ、顔真っ赤じゃねェか! も〜〜、そういうとこ可愛すぎンだよなァ……ほンっとに、反応が正直すぎてさ♪」
で、笑いながらもすっと手を伸ばして、メリの頬に触れる。指先はほんのり火照ったその肌の熱を感じ取って、嬉しそうに目を細めた。
「……でも否定すんのに、その顔はねェだろ? 心のどっかで『やってみたいかも』とか、チラッとも思ってねェ? 正直に言ってみ?」
メリは真っ赤な顔で目をそらす。
「いや……やりたくないし」
燐音はグッと距離を詰めて、額が触れ合うくらいの近さでメリを覗き込む。青い瞳はじっとメリの紫の瞳を見つめて、ニヤッと口角を上げた。
「……まぁ、俺はどこでも抱けるけどな? お前が『燐音…ダメ……』って震える声で言っても、『 声、我慢できねェくせに』って耳元で囁いて、止めねェから」
ちょっと真剣なトーンに切り替えて、わざと低く、甘く落とす。
「……だから、覚悟がねェなら、そういう話題振らねェことだな、メリ。 じゃねェと……ほんとに、今すぐでも“やっちまう”からよ」
唇が触れるか触れないかの距離で、ふっと口元を緩めて、意地悪く笑った。
「……どこでもって…………そんなん燐音は声出さないからいいけどさ……」
メリは燐音の膝の上でぐいっと燐音から遠ざかろうとする。
「………運転手さんに聞かれたいの?私の声」
ぐいっと膝の上から離れようとするメリを、燐音は軽〜く手で押さえた。強くはない、けど逃がす気もない。まるで猫が獲物にじゃれるみたいな、ちょっと悪い目をして笑う。
「……聞かれたいわけじゃねェけどさ〜? でも……聞かせたくなるくらい可愛い声、毎回出すのは誰だっけ?ん〜〜〜〜?」
そう言いながら、腰のあたりに手を回して、ぐいっともう一度引き寄せる。太ももにまたがらせるみたいな格好になって、鼻先をくっつける距離。
「俺っち、あの声好きなンだよな。 我慢しようとしても、ちっちゃく『……っ』とか漏れンの。あれ反則。エロすぎ。 あンなン聞いたらさ、タクシーの運転手だって『幸せにな』って思うだろ、むしろ」
真顔でさらっと最低なこと言って、けど悪気ゼロでニコッと笑う。
メリは呆れて何も言えない。
「……ま、 後部座席で俺っちが口ふさいでやれば済む話だけどな……?」
メリの顎に指を添えて、ちょっと持ち上げながら、わざとらしく優し〜く囁く。
「……ンで、お前はさ。 聞かれるかもって思いながら、 腹の奥まで俺の入ってくる感覚……我慢できンのかよ?♡」
メリはちょっと黙って想像するような顔をする。そしてしばらく経つと顔を赤くしてモジモジし始める。燐音の太ももに腰を擦り付けるように。
「…………できると…………思う…………」
メリのその反応に、燐音はピクッと喉仏が上下するのが自分でもわかった。顔を赤くしてモジモジしてるのも、腰が無意識に擦れているのも、ぜんぶ、たまらない。ぐぐっと欲がせり上がってくるのを感じながら、メリの腰に回した手にちょっと力が入った。
「……ッ、あァ…… ダメだって、メリ……そういうの、煽りすぎ。 今、俺っちどンだけ理性かき集めてンのかわかってねェだろ…………」
「……へ?」
太ももに押しつけられるその柔らかさと熱、そしてなにより表情――たまらなくて、俺はもうひとつため息を落としてから、メリの耳元に唇を寄せた。
「……できるって言ったな。 そンで、こんな風に俺に甘えてきてるってことは ……“そういう気分”って、ことだよな?……違ェか?」
メリはハッとして慌てて否定する。
「ち、違う……! 」
けれど燐音は、ゆっくり腰を揺らすメリの動きに合わせて、太ももをちょっとだけ持ち上げ、わざと擦らせて、刺激を深く、強く。
「……今から乗るか? タクシー。 お前がちゃんと『声、我慢できます』って、俺っちに証明する夜にしようぜ……♡」
ニッと笑って、そのままメリの首筋にキスを落とす。ぴとっと張りついた熱が、静かに、だけど確実に昂っていた。
「………ん…………」
我慢しているけどもう声が出ているメリが、燐音は面白くてしかたない。
(……ったく、可愛すぎんだよ)
と、心の中で呟きながら、燐音はスマホを片手にタクシーアプリを即起動。片腕でメリをしっかり抱いたまんま、ちゃちゃっと配車完了。
「……よし、来るってよ。10分以内」
スマホをポケットに放り込んで、今度は両手でメリを抱き寄せる。
「え? 呼んだの?」
「呼ンだよ」
燐音はさっきよりもちょっとだけ真剣な目で、メリの顔を覗き込んだ。
「……ほんとに我慢、できンのかよ? その顔、もう声出始めてンじゃん。 これから密室だぞ。しかも運転席のすぐ後ろ」
わざとじわじわ言葉で攻める。胸の奥が熱くなるのを抑えきれず、俺の声にも色が滲んでくる。
「……なァ、メリ。 俺のこと……挑発しといて、途中で「やっぱ無理」って言ったら……許さねェからな?」
ふいにメリの腰をぐいっと自分の太ももに強く押しつけた。
「……覚悟してろよ。 タクシーでお前の“全部”、試させてもらうからな……♡」
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