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「それじゃー、ライブ見てる皆さんに自己紹介でもしとこっか」
「必要なのよ?」
「……主に迷子対策に」
「よしやるのよ、絶対やるのよ、すぐやるのよ」
「小さい子4人もいるから即答よね」
「おい、わちをいれるな」
尖った雲が突き刺さった鳥の横で、和気あいあいと騒ぐ一同。人数分いた光妖精は、今は2体しかいない。1体はイディアゼッターに憑いた光妖精。そしてもう1体は少し大きなサイズの光妖精。
「これはわたくしも知らなかったわ。さすがゼッちゃんね」
”近い近い!”
”ガチ恋距離で美人のお顔がああああ!”
”オレもう我慢できねぇ!”
”お前何する気だよ……”
「人数分いても光妖精が多くて邪魔になりますからね。まとまるように命じるとそうなります」
大きくなった光妖精を覗き、関心するネフテリア。ジルファートレス内の影晶板ではネフテリアの顔がアップで映り、一部の人がちょっと大変な事になっていたりする。
光妖精は1人につき1体憑き、その様子を撮影する。障害物や戦闘行為があれば、ある程度勝手に動き、憑かれている者が念じれば自由に動かす事が出来る。さらに近くにいるときは命じれば複数を1体に合体させる事も可能なのだ。これによって、グループで1つのライブにしたり、複数の視点から見せる事も出来たりする。
今回はイディアゼッターの光妖精を防犯や分析用の予備ライブとし、合体させた方をメインのライブにする事になった。
「それでは皆さんっ! わたくし達は『エルトフェリア』といいまーす! よろしくねっ!」
”うおーーーー!!”
”よろしくー!”
”結婚してくれー”
”もうグループ名あったんだ”
「本当にお店の名前で始めちゃったのよ」
”店の名前かよ”
立場的にも慣れという意味でも、ライブの進行にはコイツが適任という話になり、ネフテリアが司会進行兼実況をする事になった。イディアゼッターとピアーニャによる采配である。
「メンバーにはヴェレスアンツに来たのが初めての子の方が多いけど、温かく見守ってね」
”はーい”
”そりゃ初々しいな”
”怪我すんなよー”
光妖精の周りに温かいコメントが表示され、ネフテリアは内心ホッとしていた。殺伐としたリージョンではあるので、普段は攻撃的なコメントも多く見られる傾向がある。
「……みんな優しいね?」
”だいたいピアーニャ様のせい”
”だから安心していいぞ”
「ピアーニャ何してたの?」
「……しるか」
実はコメントが温かい原因はピアーニャとメレイズにあった。
見た目3歳児と見た目7歳児が数日間ライブしていた時、実際に罵倒などのコメントはあったのだが、それを見たメレイズが泣きそうになってしまい、ピアーニャが「こんなコドモをバトウしないとイイきになれないとは、なさけないザコどもだな」と冷たく言い放った為、子供を虐めるやつは卑怯で弱虫のザコという風潮と、子供は励まし見守るべきという考えが一気に強まったのである。
3歳児にしか見えない女の子に罵倒された視聴者達は、心にグッサリと刃が刺さった者と、キレてしまったせいで子供を虐めた大人という事が周囲にバレて居場所を失った者に分かれたという。一部復讐しようとした者もいたが、シーカー最強のピアーニャに勝てる筈もなく、幼児に手まで出したあげく返り討ちにあったたという汚名だけが追加されていった。色々な意味で復帰は当分出来ないだろう。
「まぁいいか。ちなみに『エルトフェリア』っていうのはわたくし達のお店の名前で、ファナリアのニーニルで絶賛営業中でーす。ファナリアに来る事があったら是非来てねっ」
ついでに店の宣伝をする王女様。もちろんそれだけが目的ではない。
”ほほう、そりゃ行かねーとな”
”ん? ちょっと待ってエルトフェリアってあのエルトフェリア?”
”知ってるのかライデーン”
”いや私はライデーンって名前じゃないけど? っていうかその服! しかもほぼ全員! 間違いないわ!”
”一体なにテリア様なんだ……”
知っている人がいると判明し、ネフテリアはすぐに自己紹介へと移った。
「ご存じの方もいるようね。わたくしはネフテリア・エインデル・エルトナイト。エルトフェリアのオーナーであり、ついでにエインデル王国の王女もやってまーす☆ よろしくぅ!」
ぽんっ
しっかりポーズを決めながら自己紹介をすると、頭から花が生えた。花も葉を振って挨拶しているようだ。
”うわああああ!! やっぱり本物おおおおおお!!”
”見たことある顔だと思ったらやっぱお姫様じゃねえかあああああ!”
”生えてる! なんか生えてるっ!”
”情報多すぎてどこからツッコめばいいのかわかんねええええ!”
”えっまじで本物なの? うっそだろ?”
”嘘乙って言おうとしたのに証言まであってワロタ”
”えっ、王女をついでとか言ってなかったか?”
驚きのコメントがたくさん表示され、ネフテリアはご満悦。さらにもう一押しするべく、光妖精に指示を出した。
「妖精ちゃん、わたくしの全身を映してね」
エルトフェリアの宣伝をするならば、外せないのがフラウリージェの宣伝である。今日のために着てきた新作のお披露目も、目的の1つなのだ。
「本日はフラウリージェの新作で、結構動きやすいファッションで参りました。ご照覧あれ」
ネフテリアが手でマントを開き、ポーズをとりながらゆっくりと回る。アリエッタデザインの服を見せびらかして、売り上げに貢献しようとしているのだ。
今回は寒い中、外に出かけて戦う事も出来るというコンセプトでアリエッタがデザインしたもので、サイロバクラムの時のような過度な露出は無いものの、かなり動きやすくなっている。
ネフテリアの服はふわふわの毛糸で作られた胸元を強調するチューブトップだが、ファー付きのケープ付きマントで肩などを冷やさないようにしている。下はタイツと厚めのキュロットで、全体的に可愛い魔女をイメージしたアリエッタも満足している。
(いろんな魔法が使えるテリアはこういうの似合うなー)
”くっ、可愛い……”
”これが王女様の貫禄か”
”はぁはぁ……”
コメントの反応も良く、ネフテリアはいい気分に浸っている。
「って感じで、みんな自己紹介しましょうね」
「なんかいつもフラウリージェがやってる新作お披露目みたいなのよ」
「そゆことー」
「それならたまにやってたし、いいんですけど……」
ミューゼは困った顔で、ネフテリアと光妖精を見た。
”最初に王女様が自己紹介とか”
”後に続く子は可哀そうだな”
”わたしには無理だわ”
”っていうかなんでそんな所に花が?”
「別に気にする程じゃないわ。王女なんて所詮下っ端だもの」
”いやおかしくね?”
ネフテリアの普段の扱いが雑な為、本人の感覚が結構ずれていた。
「確かになのよ」
「それもそう……だっけ?」
”うっそだろ!?”
パフィはもとより、ミューゼの感覚も徐々にずれているようだ。普段から王女にツッコミをいれたり邪見にしているので、だいぶネフテリアの扱いに慣れてきたのである。
「それじゃ次はあたしかな。ミューゼオラ・フェリスクベルです! ミューゼって呼ばれてます。よろしくお願いしますっ」
「堅いよミューゼ!」
”だがそれがいい”
”ふーん、かわいいじゃん”
「あら、ミューゼの良さが分かる? 見どころあるわね」
「いやどーゆーこと!?」
「ほら服も紹介して」
「あ、はい」
簡単に紹介を終えたミューゼは、スカートの裾をつかんで挨拶。そのままフラウリージェで覚えたのか簡単なポーズをとって全身を見せていく。
派手な動きをしないミューゼは、黒のプリーツミニスカートと暖かめの黒のニーハイソックスを装着。太ももがチラチラと覗いている。その代わり上半身はしっかり温まるように、短いケープと植物模様のセーターのような服を着こんでいる。
”ふぅ……”
”ふぅ……”
”ふぅ……”
「おいこら……」
妙に満足したようなコメントが多数流れたせいで、ピアーニャがちょっぴりお怒り。ネフテリアは鼻血を我慢している。
”もうこの子が王女になればいいんじゃないかな”
「わたくしもそう思う」
”おい”
”本物が言っちゃダメでしょ!?”
「いや前に城でも、ミューゼと王女を交換してほしいって話もあったし」
”どんな城だよ!”
「だって可愛いじゃん?」
”おかしい! このお姫様おかしい!”
”鼻血漏れてるから!”
なんだか恥ずかしくなったミューゼが下がり、入れ替わりでパフィが光妖精の前に飛び出た。
「よっ」
ばるん
「次は私なのよ」
少し動くだけで揺れ動く2つの塊に、コメントが一気に湧き上がる。
”デッッッ”
”うわああああああ!!”
”勝てない……これが絶対的強者の貫禄”
”ごふっ”
『………………』
なんとも言えないコメントの数々に、ミューゼとネフテリアとピアーニャが呆れていた。
「パフィ・ストレヴェリーなのよ。オシャレしてるけど、ちゃんと料理もするのよー」
そう言いながらポーズをとるパフィの服装は、薄手だがとても暖かく伸縮性のある生地で作られたインナーシャツで、絡まないようにボディラインがくっきり浮かぶようなピッチリしたものになっている。そのため胸部の主張も激しいのだ。さらに動きの阻害を減らす為に胸元だけを覆う長袖のジャケットを羽織っている。大きすぎて胸元は全く隠れていないが。
下半身はスリットの入ったショートパンツとストッキングで、走り回っても問題無いように仕上がっていた。
”なんか服着てるせいでエロくなってるんじゃない?”
”奇遇だな、俺もそう思う”
「しょうがないじゃない、パフィだもの」
「どーゆー事なのよ!」