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ネフテリアは少し考え、次に紹介する人物を決めた。
「ん~……はい、続いてちびっこ達の紹介いくわよー。最初はピアーニャちゃんね」
「ピアーニャちゃんいうな!」
ちびっこの枠に入れられてしまったピアーニャは、不満を露わにした。
”ぶふぉっ”
”ピアーニャちゃん”
”ピアーニャちゃんって……くふふっ”
”がんばってピアーニャちゃん!”
「おまえらっ」
思った通りにウケたと、ネフテリアは腕を組んでほくそ笑んだ。
過去に自分がヴェレスアンツに連れてこられた時にも、強さと師匠であることをアピールしていた事もあって、ピアーニャの行動パターンは今回も同じだろうと察していたのである。さらに今は、何故かアリエッタが手を繋いていて動けない。
この状況でやるべき事は1つしかないと思い、ピアーニャを笑いのネタにしたのである。
「あの、どうしたの?」
アリエッタの隣でビクビクしているメレイズを見て、ニオが声をかけた。
「えっとね、おししょーさまをちっちゃい子扱いすると、ボッコボコにされるんだよ……」
「そうなの!? こわい……」
「………………」
説明を聞いたニオが素直に怖がってしまい、ピアーニャが何も言えずに目をそらす。
”ピアーニャちゃん怖がられてるぞ”
”ひどいな、罪のない子まで怯えさせて”
”これだからピアーニャちゃんは”
「オマエらさがしだして、カミナリづけにしてやろうか」
「はいはいピアーニャちゃん。エルトフェリアとして自己紹介お願いね。アリエッタちゃん、ちょっとピアーニャちゃん借りるからねー」
「はぁい」
「なんでコイツはいつも、わちのいうコトきかないのに、テリアのいうことはきくんだ……」
「知らない所で愛する妹ちゃんを手放すお姉ちゃんがいるわけないでしょう。ほら早く早く」
「オマエな……」
ネフテリアに運ばれ、光妖精の前に出たピアーニャを迎えたのは、もちろん揶揄う言葉と愛でる言葉の嵐だった。
”がんばれピアーニャちゃん!”
”だめだもう腹いてぇ~”
”わかるかな? こっちにむかって喋るんでちゅよー”
”ヤバい、姉妹関係が可愛すぎて血ぃ吐いた”
”ははははっ! ひーっひーっ! たすけっ、ハラよじれっ、んはははははっ!”
(コイツら……っ)
コメントを見て腹が立ったので、ここは少々脅してやろうと、考えを巡らせた。カッコよく自己紹介をしてやれば、アリエッタも自分を見直すだろう……そんな結論を出し、こっそり捏ねていた『雲塊』を2つ遠くに飛ばした。
「ピアーニャ・セグリッパだっ。いまわらったヤツら、あいつみたいなメにあわせるからな!」
そう言って、『雲塊』を飛ばした方向の地面を指さした。そこにはこちらに向かって走ってくる馬のようなヴェレストがいる。ピアーニャ達を獲物として認識している様子である。
しかし、ピアーニャ達の元にたどり着く事は無かった。
「【女王の刑落】っ!」
ピシャアアアアン
「キャーーーッ!」
鬱憤と共に空の『雲塊』から放たれた落雷がヴェレストを襲った。雷鳴とニオの悲鳴が重なり、ヴェレストは黒焦げになって倒れる。ニオもネフテリアの足にしがみつきながら地面にへたり込んだ。
ピアーニャはこうやって、圧倒的な攻撃力を見せて強者の地位を築いたのである。しかし、そんな努力と悪知恵が通じない者もいる。
「ピアーニャっ! めっ!」
「おふっ、ちょやめっ」
「ニオ、ごめんなさい、こわい、めっ」
「ちがうんだ! わちはつよいのをみせて」
「ピアーニャ?」
「うっ……」(コイツ真面目な顔して変な圧をっ)
アリエッタへの苦手意識からか、それとも神からの圧を感じているのか、ピアーニャが大人しくなっていく。その姿を見て一瞬畏れを抱いたコメントがまた笑いへと持ち直した。
”ピアーニャちゃんはあの子に弱いのか”
”そりゃいい事知った”
「アリエッタちゃんに手を出すのはやめてね。消されかねないから」(リージョンごと)
”なんか裏がありそうですね……”
「もう……話が進まないからなんとかするか。ほらアリエッタちゃん、おいでおいで」
「?」
ネフテリアがピアーニャの自己紹介を強制的に進行。アリエッタを離し、ピアーニャをゆっくり回す事に成功した。
ピアーニャの今回の服装は、大きなポケットのついたふわふわのポンチョ。そしてモコモコのブーツを履き、子供の愛らしさをバッチリ引き出している。
”どこからどうみても赤子だな”
”おいしい物食べさせてあげたい……”
「シツレイだなっ!」
「はいはいピアーニャちゃんは終わりね。それじゃ次いってみよーう」
ピアーニャをアリエッタの腕の中に戻して強制的に大人しくした後、今度はメレイズが前に出た。ピアーニャが色々やっている間に次を決めていたのである。
「メレイズ・ナーナイーラですっ。おししょーさまの弟子で、アリエッタちゃんの一番の友達です!」
”よくできました!”
”元気があってかわええなぁ……”
元気よく挨拶をした後は、夜のうちに練習しておいたファッションショー。ぎこちない動作でゆっくり回っていき、なんとか全身を見せた。
左右アンバランスの赤いジャケット。その下に見える黒い厚手のシャツには刺繍で白い模様のミニミューゼが描かれている。そして下もは、右がショート、左がロングのアンバランスな黒パンツになっており、ショートの右足には赤黒のストライプのニーハイソックスを履き、寒さ対策も万全である。そして頭には小さなシルクハットもつけていた。
”ほんとにかわいいな!”
”こんな娘ほしい……”
「えっへん」
褒められて嬉しいメレイズは、笑顔でアリエッタの所へ戻った。
「えへへ、アリエッタちゃんの服すごいね! いっぱい褒められたよ!」
「メレイズ、すごい!」
実はメレイズの服は、アリエッタの予備の服である。もともとメレイズがいる事を知らなかったのでピアーニャと違って専用の服は無かったのだが、体系がアリエッタやニオとかなり近いので、問題なく着る事が出来た。
続いての紹介はニオ。名前を呼ばれて緊張しながら前に出た。
「えと、うちの名前はニオ・ホロア、です。よろしくお願いします。あのそのあの、さっきから怖がってばかりですみません……」
”ええんよ”
”全部許す”
”かわいいかわいいかわいいかわいい……”
”やべえ顔熱くなってきた”
儚げな見た目と可愛らしい服、そして年齢に似合わない丁寧な話し方が見ている人の心に刺さり、挨拶の時点から大好評である。
フラウリージェで練習していたニオは服の見せ方も分かっており、まずはクルリと1回転。白いコートと白いスカートがふわりと舞い上がった。
”か゛わ゛い゛い゛い゛い゛!!”
”これが浄化……私はもう、満足だ……”
”なんか隣のやつの体が透けてるんだが?”
”こっちも致命傷を受けた奴がいる! だれかー!”
ニオの影響力が異様に強く、コメントが大量に表示されていく。それを見てネフテリアはご満悦。
「さすがニオ。可愛さではアリエッタちゃんに負けてないね」
「いやいや、アリエッタの方が可愛いのよ」
「そうかしらー」
「そうなのよー」
楽しそうに睨みあうネフテリアとパフィ。ネフテリアはニオを拾った事で、なんとなくアリエッタに対抗して遊んでいるのだ。もちろん可愛いと思っているのは本心だが。
再度服をゆっくり見せていくニオの服装は、白い翼付きコートに白いプリーツスカートと白いポンポン付きソックス、そして白いセーターと白いヘッドドレスという、白で統一されている。所々についている青いリボンがアクセントとなって、さらに白さを際立たせていた。
”なんて儚い……”
”純白の美幼女だ”
”昔いた魔王だってこの清らかさならイチコロだな!”
”俺らもイチコロだけどな”
「ははは……」
「………………」
何気なく魔王と対比され、ちょっとドキリとするネフテリアとイディアゼッターであった。
そして残るはアリエッタのみ。ちゃんと自己紹介してくれるのか、サイロバクラムと同じ事にならないか等、ネフテリアの懸念は多い。
しかし考えても仕方がないので、ミューゼに付き添いを頼んで送り出した。
(よーし、配信の挨拶だな! 前世で見てたからいける! まかせてミューゼ!)
本人は凄くノリノリだった。
「言葉覚えてる途中だから、間違えても許してくださいね。ほらアリエッタ。自己紹──」
「あたし、アリエッタ! よろしく! きらっ☆」
緊張と共にテンションが上がっているアリエッタは、アイドルのように挨拶をした。スカートを舞い上げながら腰を突き出し、ウインクしてのポーズもバッチリである。
アリエッタの服装は白と紫の冬用ゴシックドレス。白のブラウス、紫と黒の小さな翼付きワンピース、白のフリル、白紫ストライプのソックスと、前世の秋の祭りでよく見たものをモデルにしたのだ。サイドテールは大きなリボンとオバケのようなアクセサリで留められている。
『ごぼろあっ!』
”ぶふっ!”
”あ゛っ……”
”っ────”
”ぉぶぉっ!?”
ミューゼとパフィが倒れ、ネフテリアが膝から崩れ落ちた。コメントも何かを噴出した音や断末魔ばかりが出ている。
この時ジルファートレス内では、多数の鼻血噴出者と失神者が出てしまい、大惨事となってしまった。影晶板から目を離していた者達が何事かと慌て始めている。
「さ、流石はアリエッタちゃん……いやこれ無理でしょ」
「何がですか……」(いや野菜女の娘ですよね? 強力な魅了の力とか無いですよね? 変な力も使ってないですし……)
大人達が悶えるその横で、メレイズとニオが尊敬の眼差しをアリエッタに送っていた。
「これがアリエッタちゃんの本気。やっぱりすごいね!」
「う、うん」(すごいけど、やっぱり怖いよぉ)
こんな大事件を起こした本人は、倒れたミューゼを見ながら困惑するのであった。
(……あれ? なんで?)