テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
297
47,951
あっぷるぱい
137
橘 柚
441
第2話「お昼ごはんと、争奪戦」キーンコーンカーンコーン――。
昼休みを告げるチャイムが鳴った瞬間。
「よーし! お昼だ!」
潔世一は、嬉しそうに立ち上がった。
「みんなで食べるんだよね?」
その一言で――
「…………」
教室の空気が変わった。
凪。 玲王。 千切。 凛。 蜂楽。
そして、生徒会組の冴、士道、雪宮、氷織、烏、黒名、乙夜。
全員が潔を見る。
(……隣)
誰もが同じことを考えていた。
潔の隣に座りたい。
しかし。
「潔、こっち」
最初に動いたのは凪だった。
自分の隣の席をぽんぽん叩く。
「ここ空いてるよ」
「え、ほんと?」
潔が近づこうとした――その瞬間。
「待て凪」
玲王が肩を掴んだ。
「なんでお前だけ先に確保してんだよ」
「早い者勝ち」
「そんなルールねぇよ!」
「じゃあ今作ればいいじゃん」
「作るな!」
「ふふっ」
潔が二人を見て笑う。
「仲良いね!」
「「……」」
二人とも固まった。
(違う!!)
(そこじゃねぇ!!)
しかし潔は気づかない。
「じゃあ、みんなで座ろうよ!」
そう言って、近くの机をどんどん動かし始めた。
「こうやって繋げたら、みんな一緒に食べられるよ!」
「…………」
全員、潔を見る。
「……天才か?」
乙夜が呟いた。
「何が?」
「いや、なんでも」
乙夜は笑った。
(この子……天然すぎるだろ)
◆そして始まる席取り
机を大きく繋げた結果。
潔の右隣――凪。
左隣――千切。
正面――玲王。
斜め前――凛。
「……」
凛が無言で席に座る。
「凛、そこ座るんだ?」
潔が声をかける。
「……悪いか」
「ううん! 嬉しいよ!」
「……っ」
凛は顔を逸らした。
(……嬉しい、って……)
その隣では。
「潔、こっちも空いてるよ!」
蜂楽が手を振る。
「ほんとだ!」
潔が笑って手を振り返す。
「……」
凛の眉がピクリ。
「おい蜂楽」
「ん?」
「近すぎる」
「えー? いいじゃん!」
「よくねぇ」
「なんで?」
「……うるさい」
「凛ちゃん嫉妬してる?」
「してねぇ!!」
「してるじゃん!」
「してねぇ!!」
「ふふっ」
潔はまた笑っていた。
――本人だけは、何が起きているのか分かっていない。
◆生徒会組も参戦
「……随分と楽しそうだな」
低い声が響いた。
糸師冴。
生徒会長である。
その後ろには士道、雪宮、氷織、烏、黒名、乙夜。
「冴!」
潔が嬉しそうに手を振る。
「こっち空いてるよ!」
「……そうか」
冴は自然に潔の近くへ歩いていく。
すると。
「会長、そこ俺の席やったんやけど?」
烏が言った。
「空いてるなら誰が座ってもいいだろ」
「……潔ちゃんの隣やから言うてんねん」
「知らん」
「うわ、出た」
乙夜が笑う。
「会長まで本気じゃん」
「……何の話だ」
「なんでもないなんでもない」
「?」
潔は首を傾げる。
その横で氷織が小さく笑った。
「潔ちゃん、ほんま鈍感やなぁ」
「え? 何が?」
「……いや、なんでもないで」
「?」
◆お弁当タイム
「いただきます!」
潔が手を合わせる。
「いただきます」
全員が続く。
「潔、何入ってんの?」
凪が覗き込む。
「今日は卵焼きと、からあげ!」
「……からあげ」
凪の目が輝く。
「一個ちょうだい」
「いいよ!」
潔は何の迷いもなく、からあげを一つ取る。
「はい!」
「……」
凪が受け取る。
「ありがと」
「どういたしまして!」
その光景を見ていた玲王。
「……おい凪」
「なに?」
「お前だけずるくね?」
「玲王も欲しい?」
「……」
「いるなら言えばいいじゃん」
「……いる」
潔が笑う。
「はい!」
玲王にも一個。
「……ありがと」
玲王は満足そうに食べる。
すると――
「潔」
凛が口を開いた。
「俺にも」
「え?」
「……からあげ」
「あ、うん!」
潔が渡す。
「はい!」
「……」
凛は受け取る。
(……こいつ、誰にでも優しいな)
その事実が嬉しいような。
少しだけ腹立たしいような。
複雑だった。
◆そして千切が爆発寸前
「潔」
「ん?」
「それ……美味しい?」
千切が潔の卵焼きを指差す。
「うん! 美味しいよ!」
「……そっか」
「千切も食べる?」
「え?」
「はい!」
潔が卵焼きを差し出す。
「……」
千切の顔が一気に赤くなる。
「いや、その……」
「?」
「……もらう」
ぱくっ。
「……美味しい」
「でしょ!」
満面の笑み。
千切は固まった。
(……無理だろ、これ)
その様子を見ていた雪宮。
「……なるほど」
氷織。
「……また一人落ちたな」
烏。
「いや、最初から全員落ちとるやろ」
乙夜。
「それな」
黒名。
「潔、罪深い。罪深い」
「えぇ!?」
潔だけが驚いていた。
「なんで!?」
◆決定打
昼食を終えた頃。
潔がふと思い出したように言った。
「そうだ!」
全員が潔を見る。
「明日もみんなで食べようよ!」
「…………」
沈黙。
そして。
「もちろん」
冴。
「食べる」
凪。
「絶対」
玲王。
「……別に」
凛。
「食べたい!」
蜂楽。
「ええよ」
氷織。
「もちろんや」
烏。
「楽しそうじゃん」
乙夜。
「潔と一緒なら」
雪宮。
「一緒」
黒名。
「俺も行く」
士道。
全員、即答。
潔は嬉しそうに笑った。
「やった!」
その笑顔を見て――
全員の心臓が、また跳ねる。
そして誰もが思った。
明日は絶対、潔の隣を取る。
こうして。
まだ入学初日だというのに――
潔世一・争奪戦は、昼休みを境に本格化した。
しかし当の潔は。
「明日のお弁当、何にしようかな〜♪」
そんなことを考えながら、楽しそうに笑っていた。
――完全に無自覚だった。
第2話・終。
コメント
3件
潔くんの天然さが本当に最高でした!からあげを「いいよ!」って差し出すシーン、凪くんも玲王くんも凛くんもみんな素直になるのが愛おしくて…。乙夜くんの「天然すぎるだろ」に全力同意です。千切くんが「無理だろ、これ」って悟るところで思わずニヤニヤ。本人だけ無自覚な争奪戦、続きが気になります!