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「ふむ……また聞きに来られたのか、お客人。
では、早速続きを話すといたそう。 」
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出会って2日ほどで、我々は村上様と小笠原様に会うことができた。
村上義清様は、某の顔を見るなり、口を開かれた。
「ふむ……お前か、あの近習の知り合いというのは。 あの男には期待しておるのよ。」
「元甲斐の出身だと聞いているが、先代に
随分と酷い目に遭わされたらしくてのぉ。
村上に逃げてきた時には、かなり活躍したわ。
あの信玄の軍師とは知り合いらしいが、そのおかげで付け入る隙が、逆にできるやもだし……。
今は訳あって怪我をしておるから……少し休ませねばならぬが…。」
「それと…そなたには悪い事をした。
わしが負けてしまったせいで、村はとんでもない事に……」
某は、静かに頭を下げた。
「いえ………仕方の無いことでございます …。どんな身分であっても、今の世の中では、
あっという間に転げ落ちてしまう……」
すると村上様は、某の言葉遣いを聞いて、少し怪訝そうな顔をされた。
「先程から思っていたが……あの村の人にしては、言葉遣いがやけに………。 いや……追求はやめておこう。 人には、探られたくないこと1つ2つあるものよ」
「ありがたきお言葉、ご配慮感謝いたします……」
村上様は、某をしばし見つめていた。
「…………ふむ………」
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方円様は、戻ってきた某を見つけると、声をかけられた。
「ふむ……、随分と話し込んでいたわね」
「ええ……村上様からは、謝罪を受けました……」
方円様は、少し考えるようにしながら口を開かれた。
「被害者なのにねえ……。 村上様は、やっぱり強いお方よ……。 心もね」
「二度にわたって兄を退けた、武の強さ。
奥方……を兄上に殺されて、信濃から追い出されても、諦めていない、あの心の強さ……」
その言葉を聞いた某は、思わず驚いた。
「なんですって?! 奥方様が殺されてる?!
どこでその情報を……」
方円様は、落ち着いた様子で答えられた。
「戦をするには、情報が鍵なの。 だから、
バレない独自の情報網を私、もってるのよ。
昔 これからは武力だけでは足りないと誰かに言われたよう…な…うっ…頭が!!!」
「…!大丈夫ですかな?!」
「ええ…、ごめんなさいね…最近、昔のことを思い出そうとすると、頭に激痛が……」
「…………」
某は、黙って方円様を見つめた。
方円様は、さらに続けられた。
「本当は、三ツ者がいたらいいだけれどね。
……そうすれば、もっと有利に勝てるってのに……」
「三ツ者………」
思わずその名を口にしてしまった。
方円様は、すぐに某の方へ振り向かれた。
「どうかしたのかしら……?」
「いえ………」
「…………」
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某は、あの時とても迷っておりました………。
ですが、あの時動いて良かったと、今でも思っております。
ですが当時は、恐ろしかったのです。
某は、お客人が思っておられるように、
本当はあの村の人間ではありませんでした。
……父上が……とある忍び里から逃げてきた。
抜忍だったのです。
ですが、逃げた頃のことは、某は覚えておりませぬ。
まだ、生まれて間もない頃だと聞いておりました。
そして、すぐ父上は消息を絶ったとされています。
そんな自分を育ててくれた、あの村こそが。
某の故郷だったのです。
ですが、それはもうなかった……。
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??? 丑三つ時
出浦昌相は、縁側に座り、目を閉じていた……。
そこへ、村上様がやって来た。
「ふむ……そなた、眠れぬのか」
「村上様! ええ……お恥ずかしながら………」
村上様は、縁側に腰を下ろされた。
「無理もあるまい……。 あのような惨状を目の当たりにしたら、 心から休めぬわ………」
某は、少し迷いながら尋ねた。
「村上様も、もしや……」
「うむ、そうだ……。 流石に今回は応えたわ………」
村上様の表情は、とても重かった。
某は、先程耳にした話を思い出した。
「………少し耳に挟んだのですが……。 奥方様のことでしょうか」
村上様は、少し黙った後、静かに話し始められた。
「やはりそなたは只者では無いな…」
「舟を使って、妻や女や子供を逃がすため、近習を含む数人を共としてつけていたのだが……。 動きを読まれていたようだ……。
船着場で……待ち伏せされていたのだ。
そして、そのまま…。 とにかく、悲惨だったと………」
「近習だけは、なんとか帰ってきた。
命からがら…かなりの怪我を負っておるが…
でも怪我を治して、仇を討つためにもまた
武田と戦うと言うておるわ……。 ほかは皆……あの場所で………」
「怪我をしているとは聞いておりましたが、そこまでの出来事だったとは……。 女子供にも容赦せぬとは……。 外道め…………!!!」
思わず怒りが込み上げた。
しばしの沈黙の後、村上様が尋ねられた。
「ところで、あの女とはどこで出会った」
「焼かれた村で出会いました……。
武田の姫と言っておりましたな」
「!!! それは本当か?!」
村上様が驚きの声を上げられた。
「はっ……元とも言っておりました。 それと、妹だと名乗っておりました……。 あの男に追放されたと言っておられます。 復讐してやると……」
「………そうか…………。 まさか……実の親に
飽き足らず、妹すらなあ……。 あの外道が……!!!」
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その流れで某は、村上様の部屋に招かれていた…。
「で、先程はあまり聞かぬことにはしたが……やはり気になるわ」
村上様は、改めて某へ尋ねられた。
「某は、たしかにあの村の出身です。
あそこしかありません。 故郷は……」
「それよ。 『某』など、村人は普通言わぬわ……。 どこかの武家の出身か、何かか」
「いえ……そこまでは……。 ……父は、
物心着く前に失踪しておりますし……」
村上様は、しばらく某の目を見つめていた。
「…………そうか……………。 そなた……嘘は言っておらぬようだ。 ワシには分かる……目を見ればな………。 深いしがらみがあるようだな」
「…………」
村上様は、ふっと息を吐かれた。
「ふむ……少ししかないが、寝れぬし。
酒でもどうだ???」
「いただきもうす……」
「そうか……。
ひとりだと寂しくてな。 付き合ってもらって、たすかるわ」
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~朝方~
方円様は、村上様と小笠原様の前で一礼された。
「ふむ、お二人方。 それでは、一旦失礼いたします。 またすぐ会えることでしょう」
(⌒ ͜ ⌒)
「うむ……」
村上様が答えられた。
すると、小笠原長時様が方円様へ尋ねられた。
「……我らの領地を取り戻してもらえる
こと、確かなのだな」
「もちろんでございます。 この方円、
偽りは決して申しませんわ」
方円様が、迷いなく答えられた。
「ならよい。 どうせもう失うものは無いのだ。 お主に乗ってやるわ」
小笠原様は、覚悟を決めたように言われた。
村上様も、怒りを滲ませながら口を開かれた。
「わしは、あの鬼畜外道の男をぶっ潰せればよい……。 また絶望を味わわせてやる!!
|˙-˙))……領地も、出来れば返して欲しいがな」
方円様は、槍に手を添えながら力強く答えられた。
「その望みも、必ず叶えて差し上げます。
絶対にお約束致します、この槍にかけて。
あの男には、私も思うことがあるのです。
絶対に……許してなるものか……!!!」
村上義清は、その言葉を聞いた瞬間、背筋に悪寒を感じた。
「!! かたじけない……」
(なんだ……、急に悪寒が………!!)
同じく、出浦昌相も方円様から発せられる殺気を感じ取っていた。
(ぐっ……なんだ、この殺気は……!!)
二人の様子を見た小笠原様が、心配そうに声をかけた。
「ふふふ……お二人方。 顔色が悪いようですが……大丈夫ですかな???」
出浦昌相は、とっさに理由を答えた。
「昨日、寝ず酒を飲んでおったゆえ。
そのせいでございましょう」
村上様も、笑って誤魔化された。
「わしや出浦殿は、少し寝れなかったのです……あはははは」
小笠原様は、申し訳なさそうに頭を下げられた。
「…っ…!失礼いたした。 あのようなことがあれば、たしかに寝れませんな……。
信濃守護として、お二人方には配慮がありませんでした。 心より、この長時、お詫びいたす……!!」
「いえ……とりあえず、頭を……」
「頭をあげてくだされ……。
信濃守護に、頭を下げさせる訳には……!」
「では、そろそろ……私は……」
方円様が、その場を離れようとする。
村上様は、方円様へ声をかけられた。
「おっと…申し訳なかった、気をつけて 帰られよ。」
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方円様が去っていく。
出浦昌相は、その後ろ姿を見つめていた。
「……………行ってしまわれた。」
村上様も、遠ざかる方円様を見ながら答えられた。
「……ああ。 だが、すぐ会う事ができよう。
あの殺気……ただ事ではないわ………!」
「ええ……あのような殺気は……。
あのデカさは、尋常ではございませぬ」
村上様は、少し考え込む。
「よほど追い出されたことに、腹立っておられるのだな……。 命はあるのに、あのデカさ……。 本当に、あの男は何をしでかしたのやら」
出浦昌相は、方円の話を思い出していた。
「追放された理由が分からないと言っておられました……。 小さい頃は、仲良くしていた気がするとも……。 ……その時の、あの方……は。 なんだか、悲しそうでした………」
村上様は、しばらく黙っていたその刹那!
(うぐっ…!!頭が……!!)
頭痛と共に、何やら義清は声が聞こえた気がした、いや、実際に聞こえていたのだ。
…だがその記憶は、すぐさま何者かによって消されていたのだ。 送り出さねばならないという、ことだけ残して…。
それに導かれるように、出浦に話始めた。
「………………ふむ…。 で……
追わなくて良いのか……???」
「え……???」
「わしはなあ……。 そなたは、あの女について行かないとダメな気がするのだ……。 ただの直感だがな」
「……………はあ……、左様ですか…笑」
「……あっ……。 わしの直感なんて……って、思っただろう今!! その顔!!!」
「そのようなこと……は……」
「嘘じゃ……。 ぜーったい思うておるわ!!!」
小笠原様が、思わず吹き出された。
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方円様は、追いかけてきた某に気づかれた。
「で……なんで追いかけて来たのかしら。
寝れてないのでしょう。 ちゃんと休んだ方がいいわ。 倒れるわよ………」
「………」
「……何も、言わないのかしら…………」
某は、少し迷いながら答えた。
「いえ……村上様には、ついて行けと……」
「そう………………」
しばらく歩いた後、某は言葉を思い出して尋ねた。
「………三ツ者が、必要だと言っておられましたな」
「ええ……。 兄は忍びを使うからね。
対等に渡り合うためには必要なのよ」
「………ここにいると言ったら……???」
「えっ???」
某は、覚悟を決めて自分のことを話し始めた。
「……父が抜忍だったのです。 まだ物心着く前に失踪していて……詳しくは知りませぬが。
母から色々、父上の残した書物などを見せてもらって教えてもらったゆえ。
少しだけ使えますし、戦えます……。
逃げるのが得意なのも……」
方円様は、すぐに察したようだった。
「………忍びの術で、煙のように消えることができるから………」
「………ええ………」
方円様は、少し驚いたように某を見つめた。
「村人にしては話し方が、とは怪しんでたけど……。 そんな境遇だったとはね……………。
でも、いるなら助かるわ……。
手がまだ足りないと 思っていたのよ……。
信濃を元に戻すため、動かすための手が」
某は、方円様の言葉に疑問を感じた。
「復讐ではなかったのですか?」
方円様は、迷いなく答えられた。
「元に戻すことを含んだ復讐よ。
あの男が間違っていたとね???
これが私なりの方法なのよ。
文句は言わせないわ!!!」
(くっ……相変わらず、なんだこの威圧感は…………)
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そうして、某は方円様の配下として組み込まれたのだ。
あの時、村上様が「追え」と言わなかったら。
今、この場にはおらぬやもしれぬ……。
ふむ……もうこのような時間。
かなり長くなり申したな……。
ここでまた切るといたそう。
またの話を楽しみにしててくだされ。
お客人ーーーー。
出浦との出会い中編 ~終~
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コメント
1件
出浦さんが抜忍の子だったと明かす場面、すごく胸にきました。村こそ故郷と語るからこそ、失った重みが伝わってきて……。方円様の殺気に村上様も出浦さんも震えた場面は背筋が凍るようでした。夜に酒を酌み交わす静かな時間との温度差もまたいい。あの謎の声も気になります。続きを楽しみにしています🤍