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ド葛本社も出てきます。モブも少し喋ります。
ご了承頂ける方のみお進み下さい。
『』叶
「」葛葉
叶side
キーンコーンカーンコーン
?「やべっもう授業かよ!」
クラスのみんなが慌ただしく席に着く。今日も同じような先生が入ってきて、同じような授業をしている。
・・あーつまらない。
何度目かわからないがついこう思ってしまう。別に今の生活に不満がある訳じゃない。先生もクラスメイトもみんないい人だし、成績だって良い方だ。放課後には遊びに誘ってくる奴だっているし、女子からもそれなりにモテているのだろう、毎回バレンタインは山のような数のチョコを貰っている。
それでも僕はなにかパズルのピースが埋まっていないような、なにか物足りないような気がしていた。
?「叶〜、今日ゲーセン行かね?」
『あー、今日は僕やめとく、ごめん』
?「おっけ!また明日な!」
『うん、また明日』
クラスメイトの誘いを断り1人帰路に着く。
・・なんか面白いことないかなぁ。
最近毎日そう考えている気がする。
『・・そんな簡単に叶っちゃ面白くないもんなぁ。』
つい声に出てしまう。
チャリンチャリン
硬貨がアスファルトに落ちたような音が聞こえ、つい音の方角に目をやる。
そこには自販機と地面の隙間に何か落としたのか、顔を地面に擦り付けて探している人がいた。
顔は見えないが、背丈は僕と同じくらいの男子のようだ。何故か僕は吸い寄せられるようにそちらに向かって歩き、気づけばその子のすぐ傍まで来ていた。
『・・どうしたんですか?』
僕が声をかけるとビクッと肩を揺らし、すごい勢いでこちらを向く。
白い髪に赤い大きな瞳のその子は僕を見て俯くと、
「・・金、落とした、ここに、、」
と言って自販機と地面の隙間を指さす。
『あぁなるほど』
僕はそう言い自分も地面に這いつくばる。
「えっ、、お前、、」
その子は一瞬そう言ったが、次の瞬間には僕と同じ姿勢になった。
『・・ないなぁ』
「・・ねぇな」
『うーん、何飲みたかったんですか?』
「えっ、いやっ、別に、、」
『いやでもあんなに探すなんてよっぽどですよね』
「・・これ」
『これですか?』
ピッ
ガシャン
『はい、どうぞ』
「はっ?お前、金、、」
『別に良いですよ、1本くらい』
「・・まじで?」
『はい』
「・・お前良い奴だな!」
そう言いその子はニカッと笑う。笑顔に八重歯が見える。
あまりにその笑顔が綺麗で僕もつられて笑ってしまう。
『・・じゃあ、僕はこれで』
「あ、あぁ、・・ありがとな」
その子は僕に手を振ってくる。僕も手を振り家に帰る。
・・今日はちょっと面白かったな。
何故か先ほどよりも上機嫌になっている自分に気づく。
(次の日)
?「叶おはよー」
『あ、おはよう』
クラスメイトに挨拶され、同じように挨拶を返す。今日も同じような1日が始まる。
窓の外を眺めながら朝のホームルームまでの時間を過ごす。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、今日も先生が教室に入ってくる、、、と思ったらその後ろに1人また入ってきた。黒髪で前髪が少し長めの男の子のようだ、緊張しているのか俯いていて顔はよく見えない。
先生「みんな静かに!今日は転校生が来てくれました!はい、挨拶してもらっていいかな?」
?「・・く、葛葉です。よ、よろしく、、」
突然の転校生にクラスはざわつき拍手が起こる。
先生「じゃあ、席は窓際の1番後ろ、叶くんの後ろだからね。叶くん?」
『あっはい!』
僕は返事をして手を挙げる。
転校生はゆっくり歩き、僕の後ろの席に着く。
先生「じゃあホームルームはじめるよ!今日は、、、」
僕は頬杖をついて窓の外を眺める。青い空が広がっていて、ここから飛んで行けたら、なんて思う。
・・そういえば後ろの転校生はどんな子なんだろう、後で話してみようかな、、、
僕はそんなことを思いながら午前中の時間を過ごす。
キーンコーンカーンコーン
?「やっと昼休みだ〜、あー腹減った」
昼休みの時間になり、教室がザワつく。
?「叶ー、今日食堂行かね?」
『あ、今日お弁当なんだ』
?「そっか、残念!」
『うん、ごめんね』
クラスメイトに食堂に誘われたが何故かことわってしまった。ほんとはお弁当なんて持ってないのに。
クラスメイトの大半が教室から出ていき、少し静かになったところで、ふと後ろの転校生の存在を思い出し、振り向く。
向こうも驚いたのかバチッと目が合う。
「『あっ!』」
思わず声が重なる。
僕の後ろの転校生は、昨日の自販機の子だったのだ。
「あっ、お前、、」
『君、転校生だったんだね、葛葉くん、だっけ?僕、叶。よろしくね。』
「えっと、、あ、よろしく、、」
そう言いながら何かに気づいたようにはっと息を吸って自分の頭を触る葛葉くん。
『あ、髪の毛黒に染めたんだね、白いのも似合ってたのに。』
「えっ?あ、あぁ、学校、だし?」
『ふふっ、意外と真面目なんだね、葛葉くんて!』
「いや、、んなことねーけど、、」
『あ、葛葉くん、お昼持ってる?良かったら一緒に食べない?』
「・・いいけど、メシ持ってない」
『じゃあ一緒に買いに行こ!ついでに学校も案内するよ』
そう言い僕達は立ち上がる。
「な、なぁお前」
『ん?』
「・・さっきお弁当持ってるっつってなかった?」
『・・あ、聞いてた?実は持ってないんだよね』
「は?」
『なんか僕もよくわかんないけど嘘ついちゃった』
「・・お前変わってんな」
『えー?そうかなぁ?』
そんな会話をしながら購買に行く。
『すいません、メロンパンとミルクティー下さい。葛葉くんは?』
「・・メ、メロンパンといちごオレで、、」
パンと飲み物をお互い手に持ち、廊下を歩く。
『どこでお昼食べる?教室戻る?』
「いや、どこでも、、」
『じゃあ屋上行こっか』
「え、入れんの」
『ほんとはダメだけど、鍵壊れてて入れるんだ』
ガチャガチャ、、ガチャン
ドアノブを回し屋上へのドアを開ける。
誰もいない青空の広がる空間。ここは僕が学校で1番好きな場所だ。
「・・お前、意外とわりーのな。」
『ふふ、でもいいでしょここ』
壁にもたれて葛葉くんと並んで地面に座る。
心地よい風が吹き、校庭のざわめきを背景にミルクティーを飲む。
「・・たしかに、いいかも」
そう言い葛葉くんは笑った。
メロンパンを食べながら色んな話をする。葛葉くんは親の仕事の都合で引越してきたようだった。
『葛葉くんは休みの日とか何してるの?』
「・・ゲ、ゲームとか、?」
『えっ!僕もゲームばっかり!』
葛葉くんは急に食いついた僕にたじたじしている。
「・・どんなのやるの」
『えっとね〜、、』
僕は好きなゲームについて話しはじめ、気づいたら止まらなくなっていた。
『それでね、あれは~』
「ふはっ!」
『・・え?』
「お前、楽しそうすぎだろ」
そう言い笑う葛葉くん。
『えっあっごめん、、』
引かれたかなと思い、喋りすぎてしまったことを反省して下を向く。
「いや、別に謝ることねーけど。俺も今名前の出たやつ全部好きだし。」
『えっほんと?!』
「ん、なんならカバンに入ってる」
『・・僕も入ってる』
「・・まじ?お前やっぱ悪いやつだなぁ」
キーンコーンカーンコーン
「あ」
『やばっ葛葉くん、急いで!!』
「えっちょっ」
僕は葛葉くんの手を引っぱり走る。
走りながら葛葉くんは話しかける。
「なんで急にこんな走んの?」
『あそこ昼休みの後体育の𓏸𓏸先生が来るんだよ、見つかったらガチやばい』
「どうやばいの」
『普通に竹刀でぶっ叩かれる』
「やばすぎだろ」
『でしょ、だから逃げんの』
「www」
息切れしながら教室に戻り、席に座って午後の時間も過ごす。
(放課後)
『葛葉くん、今日この後なにかある?』
「・・いや、別に何も」
『どこかでゲームして帰んない?』
「・・いいけど」
『やった!』
僕と葛葉くんは一緒に歩きながら公園に向かう。
昨日葛葉くんと出会った自販機で飲み物を買い、公園のベンチに座る。
『うわぁぁあああああ!!!!』
「wwwwww」
『っしゃ!!!』
「ないすぅ!!!お前上手いな!!」
ゲームに夢中になり、気づけば周りが暗くなっていた。
『あ、そろそろ帰る?』
「・・たしかに」
『葛葉くん、今日はありがと、僕すごく楽しかった!』
「・・葛葉でいい。別に俺も、楽しかったし」
『ふふっまた明日ね、葛葉!』
「あぁ、また明日な、叶」
葛葉に手を振り帰路に着く。
知らぬ間に鼻歌を歌いながら歩いてしまっていることに気づく。
母「あ、おかえり〜、どうしたの鼻歌なんて歌って」
『今日転校生が来たんだ!葛葉くんって言って、ゲームが好きでね、さっきまで一緒に遊んで帰ってきたんだ!』
母「あらよかったじゃない。ふふっ叶がこんなに楽しそうなの珍しいわね。」
葛葉side
母(ドーラ)「あ、おかえり〜遅かったじゃん」
父(社)「どうだ?初日は」
「・・ゲームやる奴がいた」
母(ドーラ)「えっ良かったねぇ!」
「ん、叶って奴で、席が前で、真面目そうなのに屋上とか勝手に入んだよ、それで〜」
姉(ひまわり)「葛葉良かったなぁ!その叶くんと友達になれたんや!」
「いや、友達ってほどじゃ、、」
父(社)「とりあえず初日無事に帰って来れて偉いっ!」
全員「「「偉いっ!!!」」」
「・・なんなんだよ、、」
それから俺と叶は当たり前のように仲良くなった。
『ねぇ葛葉、今日僕の家来ない?』
「えっ、いいの?」
『当たり前だよ!』
そう言われ、叶の家に着く。
叶母「あらっいらっしゃーい!あなたが葛葉くんね、いつも叶と遊んでくれてありがとうね」
「こ、こんにちは、、お邪魔、します、、」
叶母「叶ったら葛葉くんが来てから本当に楽しそうで。最高の友達ができたって大喜びしてるのよ。」
『母さん!あんまり余計なこと言わないで!!』
叶母「あらごめんなさい、葛葉くんゆっくりしてってね」
「あ、ど、どうも、、」
パタン
『ごめんね、僕の母さんあんな感じだから、、』
「いやっ、別に普通だろ」
『葛葉が最高の友達ってのは、ほんとだけどさ、、本人の前で言うなよな』
そう言いくしゃっと笑う叶。
「・・・友達」
『え?』
「あ、いやなんでもない!ゲームしようぜ」
『やろやろ!!』
叶の家で晩御飯までご馳走になり、家に帰る。途中までと言って叶も着いてくる。
『葛葉、家来てくれてありがとね』
「いや、メシまでありがとう」
『また遊べたらいいな』
「・・そーだな、、」
『・・葛葉?』
「・・叶、ちょっと時間あるか?」
『・・うん、大丈夫だけど、、』
俺は叶を引き連れて初めて一緒に遊んだ公園のベンチに座る。
『葛葉、どうしたの?もう真っ暗だけど』
「・・・」
『・・葛葉?』
「・・叶はさ、魔法、とかどう思う?」
『えっ?魔法、?そんなのあったら最高だなって思う』
「え」
『僕、正直葛葉が来るまで毎日退屈でさ、いっつも教室の窓から空に飛んで行けたらなって、、校庭にモンスターが現れてそいつと戦いたいなって、、そんなことばっかり考えてたから』
「・・・」
『あっ僕また1人で喋ってごめん、、やっぱり変だよね、僕、、』
「いやっ」
『・・・』
俯いてしまう叶。
「その、もしも、もしもだぞ?俺が人間じゃない、とかになったら、どうする?」
『えっそしたら憧れる!!!』
「は」
『かっこいいじゃん!!僕も人間意外になりたい、、なんて』
「・・そ、そっか」
『・・葛葉?なんかさっきから変だよ?』
「か、叶、あのな、、」
俺はそこまで口にし、目をつぶると変装を解いて黒髪から白髪に、人間の耳から魔族の耳に戻る。
「俺、人間じゃ、ねぇんだ、、、」
『・・っ!!』
叶はこぼれ落ちそうなくらい目を大きく丸くして、口も大きく開けて絶句している。
・・やばい、引かれた、か?このタイミングで話すの、間違えた、、か、、??
俺は怖くて目をギュッとつぶる。
『かっこいい!!!!!!』
バカでかい叶の声が聞こえ、思わず目の前の叶を見つめる。
『葛葉、かっこよすぎ!!それ、どうやってるの?!うわぁぁああめちゃくちゃかっこいい!!!』
「おまえ・・引かねーの?」
『なんで?だってこんなに最高で最強な友達なんていないよ!!!』
満面の笑みでそう言う叶。
「・・へへっそうか。」
『やっぱり僕の親友は葛葉しかいないや!』
「・・お前、ちょっとだけ今から俺ん家こない?」
『えっいいの?こんな遅くに』
「ん、、でも、その母さんも、人間じゃないから」
『えっ!!かっけぇ!!!』
「・・ははっお前それしか言わねーじゃん」
『だってかっこいいだろどう考えても!!!』
ガチャ
「ただいまー」
母(ドーラ)「あ、帰ってきた」
父(社)「おかえりーーってあれ?」
「母さん、おやじ、叶連れてきた」
『あっこんばんは!叶です』
姉(ひまわり)「葛葉が友達連れてきた!」
母(ドーラ)「まぁいらっしゃい!!」
父(社)「いつも葛葉と遊んでくれてありがとうな、叶くん」
「おやじ、やめろって!」
母(ドーラ)「今日晩御飯ご馳走になったのよね、叶くん、これ大したものじゃないけどお家に持って帰って」
『あっありがとうございます!』
姉(ひまわり)「ママのクッキーは美味しいんだよ〜」
母(ドーラ)「ひまわりありがと、、って叶くん、どうかした?」
『あっ!あのっ、、そのっ、、』
「母さん、叶はしっぽが気になるっぽい」
『く、葛葉!』
「いいって」
母(ドーラ)「あ、これ?熱いけど触ってみる?」
『えっ』
つんつん
『か、かっこいぃいいいいいい!!!!』
「声でかwwwwww」
父(社)「叶くんは正直だなぁ」
母(ドーラ)「しっぽだけでこんな喜ばれたの久しぶりだよ」
しばらく談笑しているとかなり遅くなってしまっていることに気づく。
姉(ひまわり)「時間!」
『あっ!僕そろそろ帰らなきゃ』
母(ドーラ)「葛葉!ちゃんと送ってきな」
「わかってるよ」
『え、いいよ葛葉!僕一人で帰れるし!』
父(社)「いやいや、子どもが遠慮するんじゃないぞ」
パタン
「ごめんな、こんな遅くなって」
『ううん!!葛葉の家族、かっこよかった!僕、なんかもう、今日全部夢みたいで、、』
「・・よかった」
『え?』
「お前に嫌われたらどうしようって、ずっと思ってた、、初日に髪の色が変わったのがバレたのも、やばいと思った」
『・・そうだったんだ、、でも、僕にとって葛葉は前も今も変わらず最高の友達だよ』
「・・お前だって、俺の最強の友達だ」
『ふふっやったね』
「・・嬉しそうだなw」
『ねぇ、また今度葛葉の家にも遊びに行っていい?』
「・・あたりめぇだろ」
『っしゃ!じゃあここでもう大丈夫、ありがとね、ここまで着いてきてくれて。』
「いや、遅くなったの俺のせいだし」
『じゃあ、また明日ね!葛葉!』
「あぁ!また明日な!叶!」
叶が見えなくなるまで手を振り、家に戻る。帰り道は知らない間にスキップしていた俺だった。
おしまい