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マモショー
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しのん
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第13話 聖なる泉
夜が明け、朝になった。
いつの間にか寝てしまっていた。
「たっつんさん!起きてぇ!」
うりくんの…声…。
「んーっ…。」
「ほら!起きて!やばいよ!」
「え?なにが…。」
ぼんやりと意識が浮上しはじめる。
起き上がる。
「じゃぱさんが死にそう!!」
え?死にそう?
「――じゃぱぱ?」
じゃぱぱが倒れているのが見える。
俺は、じゃぱぱの顔を覗き込んだ。
顔色が、明らかに悪い。
「……ん…あはは、大丈夫だよ……。」
声に、力がなかった。
「大丈夫そうに見えへん……!」
「もしかしてアドレナリン切れた?」
のあちゃんが呟く。
魔族にもアドレナリンとかあるんだ……って、それどころじゃなかった。
手に触れると、いつもは暖かいその指先がすごく冷たかった。
まるで血が通ってないみたいに。
手をぎゅっと握った。
俺が手を握った瞬間、突然じゃぱぱがガバっと起き上がった。
「ちょっ!じゃぱさん死ぬって!!」
「うわぁ!じゃぱぱ起き上がるなぁ!」
「じゃぱぱが死んじゃうビ!!」
「…え?え…!?///」
じゃぱぱがなんか驚いている。
さっきまで顔色悪かったはずのじゃぱぱがなんだかちょっとだけ赤くなったような気がする。
「もしかして熱出た?やばい!これまじで死ぬって!!」
「しっかりして!あんたが死んだら困るの!」
えとちゃんがじゃぱぱの服を掴み揺さぶる。
そんな揺さぶったらまじで死ぬって!
「まだ死なないでよ、じゃぱさん!」
うりくんが、声を張り上げる。
「え?いや…大丈夫だって…。げほっ。」
じゃぱぱが赤黒い血を吐いた。
「えぇ!?まじでヤバいって!!」
「あぁ!じゃぱさんが死ぬ!!今までありがとう!!楽しかったよ!!来世でまた会おう!!」
まだ死んでいないのにうりくんが大袈裟に叫ぶ。
「え?まだ死んでない…。」
「うりくんもそんな動いたらまた傷口開くって!」
「……これは、まずいね。」
のあちゃんが、険しい顔で言った。
「傷口は塞がってるのに容体が一向に良くならない。このままだと…。」
「……。」
俺は、焦りで頭が真っ白になりかけた。
――どうしよう。
どうしたら、いい。
「……聖なる泉。」
えとちゃんが、ぽつりと呟いた。
「え?」
「ここから、そんなに遠くない場所に、聖なる泉があるの!」
えとちゃんが、震える足で立ち上がる。
「昔、ミノルとよく行った場所。あそこの水は、傷を癒す力があるって言われてる。」
「本当に……?」
「……賭けだけど、他に手はない!」
えとちゃんの目に、強い意志が宿っていた。
「案内するね!」
「ありがとう!」
俺はじゃぱぱを頑張って担ぐ。
「えぇ!ちょ!たっつん!?///」
じゃぱぱが喚く。
いや重っ!
ちょっと無理かも。
「のあちゃん、うり、立てる?」
「私は立てるけど…。」
「俺も。」
「よし、じゃあついてきて!急いで!」
「俺一人で歩ける!大丈夫だから!///」
じゃぱぱが暴れる。
「大丈夫やないやろ!死ぬって!!」
わぁわぁ言いながら俺たちは泉へ向かった。
***
泉は、思っていたよりずっと美しい場所だった。
澄み渡った水面が、優しい光を反射している。
辺りには、水色のヒスイランが咲き乱れていた。
「……魔力を感じない、魔物が全然居ないね。」
うりくんが、驚いたように辺りを見回す。
「聖なる場所には、下等な魔物は近づけないの。」
えとちゃんが、説明しながら泉のほとりに膝をつく。
「じゃぱぱ、こっち。」
俺たちは、じゃぱぱを運び、泉の水を傷口にかけていく。
じわり、と傷が塞がっていくのが分かった。
「……お、なんか、楽になってきた……。」
じゃぱぱの声に、少しだけ力が戻る。
「よかった……。」
俺は、心から安堵した。
「うりくんも、のあちゃんも、こっちおいで。」
えとちゃんが、みんなを手招きする。
順番に水をかけていくと、それぞれの傷が、少しずつ癒えていった。
「――あれ?…魔族と…ニンゲン…!?」
声がした。
俺たちは、一斉に振り返る。
泉の反対側から、水色の髪の毛の女の子が、こちらをじっと見ていた。
腰に水色で雫のようなマークがある。
「……誰だビ?」
デビが俺とえとちゃんの前に出る。
「ウンディーネ……?」
のあちゃんも、警戒するように前に出る。
「わ、私?私はここに住んでるだけですよ!」
女の子が、慌てて両手を振る。
「それより、みんな……その怪我、大丈夫なんですか?」
女の子が、俺たちの様子を見て、目を丸くした。
「ひどい怪我です!魔力も全然なさそうだし…ちょっと待ってて!」
女の子は、慌てて水辺に駆け寄ると、何かを探し始めた。
「あった!」
彼女が取り出したのは、小さな、紫色の粒々の変な実だった。
「これ、ゾーマの実!魔力回復に効くんです!」
「ゾーマの実!?すご!」
ゾーマの実…?
うりくんが目を輝かせている。
女の子が、その実をえとちゃんに差し出す。
「なにか大きな魔法とか使ってましたよね?それで魔力の消耗してるかなって思って。」
「……なんで、それを……。」
えとちゃんが、驚いたように女の子を見た。
「光。ここからでも見えましたよ!すごい魔力でした!」
女の子が、にこっと笑う。
「私はるなって言います!」
「るな……。私はえとだよ。で、たっつんと、のあちゃんと、うりと、じゃぱぱ」
「へー。えとちゃん…たっつんさん…のあさん…うりさん…じゃぱぱさん…。」
「あ、そうだ!忘れてました!はい、食べてください!」
るなが、実をえとちゃんの手に握らせる。
「……ありがとう。」
えとちゃんが、実を口にする。
しばらくすると、顔色が少しずつ良くなっていくのが分かった。
「……すっご、魔力回復した。」
「すごいビ!!」
「よかった!」
るなが、嬉しそうに笑う。
俺は、その紫色の実を、じっと見つめていた。
「その実、俺が食べたら……どうなるんやろ…。」
疑問を独り言のように呟いた。
「え?」
るなが、きょとんとした顔で俺を見る。
「たっつんさんって……ニンゲン、ですよね?」
「うん。」
「……じゃあ絶対だめです。」
るなの声が、急に真剣になった。
「ゾーマの実は、魔力を強制的に活性化させるもので。魔力を持たないニンゲンが食べたら、身体が耐えられないと思います。」
「……そう、なんや。」
俺は、少しだけ肩を落とした。
でも、心のどこかで――
――食べたら、どうなるんやろう。
その好奇心は、消えなかった。
なぜか、惹かれる。
「たっつん?」
じゃぱぱが、こちらを覗き込む。
「あ、いや、何でもない。」
俺は、慌てて首を振った。
「食べちゃだめビよ?」
「分かってるって。」
「みんな、傷は大丈夫そうですか?」
るなが、心配そうに俺たちを見渡す。
「うん、おかげさまで!」
「全回復した!」
「俺の心の傷がまだ癒されてない!待って!」
「何言ってんの?うり…。」
俺は、頭を下げた。
「ありがとう、るな。」
「ううん、困った時はお互い様です!」
るなが、にこにこと笑う。
「それにしても……。」
るなが、俺たちを改めて見渡す。
「ニンゲンに、デーモンに、アルラウネに、キャットピープルに、ヴァルキリー……。こんなに色んな種族が一緒にいるの、初めて見ました!」
「……珍しい?」
「うん、すっごく!」
るなが、興味深そうに俺を見る。
「ねぇ、少しだけ、ニンゲンのたっつんさんにお話を聞いてもいいですか?」
「話?」
「あ、お話してくれたらるなの知ってること教えます!るな、昔の伝承とか、そういうの結構詳しいんです!」
「伝承……?」
「はい!天才なんで!」
天才…?
るなが、静かに泉の水面を見つめた。
「たっつんさんって、なんでこんなところにいるんです?ニンゲンですよね?」
「それが分からへんくて。俺は興味本位で人間界にある扉のドアノブに手をかけた。そしたらなんか鍵が外れるみたいな音がして、扉が開いた。」
「それは…おかしいですね。そんなことあるはずありません。」
「俺もそう思っとったんやけど…。なんでやろう。」
「そもそも、あの扉ってニンゲンも魔族も開けられないようになってるはずですよね?」
「うん。」
「なんで開いたんでしょう…。」
「それで、あの扉は一方通行らしくて魔界からだと開かなくて。もう片方の、魔界から人間界へ帰る方法を探してる途中なんや。」
「そうなんですね。残念ながらるなは魔界からニンゲン界への行き方は知りません。」
「そっか。そうだよなー。」
「あ、でも役に立つか分かんないですけど!私が知ってること話しますね。」
「ありがとう。」
「昔はね、ニンゲンと魔族って、普通に一緒に暮らしていたんです。でも…。」
その一言に、俺は思わず息を呑んだ。
うりくんのお婆ちゃんから少しだけ聞いた話の、その先。
その、向こう側。
――昔の、話。
「で、でも……?」
左目にかかる眼帯を指先で押さえた。
まだ何も分からないけど。
なぜか、その言葉が、胸の奥に引っかかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
るなちゃんはどんなお話を教えてくれるんでしょう!
次回予告
「ど、どういうこと……?」
「分かった。ありがとう、るな。」
「はい!約束します!」
「……おう。」
はにかんで嬉しそうに頷いた。
次回 第14話 約束! ♡100↑
コメント
1件
るなちゃん、可愛すぎるし優しすぎる…😭💙 泉の景色も綺麗で、ちょっとひと息つける回だったね。じゃぱぱの手が冷たくてたっつんが握った瞬間に起き上がって赤くなる流れ、胸がぎゅってなったよ…。それに、ゾーマの実をじっと見ちゃうたっつんの気持ち、なんか分かる気がする。次回の「昔の話」、すごく気になる!