テラーノベル
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一泊旅行を控える中、二人の関係はこれまでとは目に見えて変わっていた。
家族のような光景を見た乙哉は勿論、察しの良い皐月も二人の関係が変わったことに気付いてはいたが、同居する他の組員たちですら二人の関係性が変わったことに気付いていた。
それというのも隠しきれない羽衣子への昴の愛が原因だった。
ことある毎に羽衣子を心配するのはまだ良いとして、自宅に居る羽衣子に定期的に連絡を取ったり、帰宅する前は必ずこれから帰る旨を伝えたり、自分以外の人間(希海以外)が不用意に羽衣子に近付けば何の用があるのかを問いただされる。
初めは皆戸惑っていたものの、数日経てば慣れたようでそれが日常だと気にしなくなった。
身内の間では仲睦まじい恋人同士として微笑ましく見守られているだけだが、極道の世界ではその甘さが命取りになる。
昴自身、そのことは誰より理解していたからこそ、任務中には私情を持ち込まぬよう以前にも増して気を引き締めながら日々を過ごしていたのだけど、水面下では確実に不穏な影が動き始めていた。
「羽衣子、ちょっといいか?」
ある夜、昴は希海の寝かし付けを終えて自室に戻ろうとしていた羽衣子に声を掛ける。
「はい?」
「週末の旅行の話だが、ここを予約しておいた」
そう言って手渡したのは宿泊先の詳細が書いてある用紙だった。
「希海は乙哉たちと組長のところへ泊まりに行かせることで話がついてたから安心してくれ」
「そうなんですね、良かったです。でも、希海くんを置いて旅行に行くのは……少し気が引けちゃいますね……」
「……そうだな。けど、希海が居たら何も出来ねぇからな、仕方ないさ」
「……っ! そ、そう、ですよね……」
そう答えながら受け取った用紙に目をやった羽衣子は驚いた。
「え、宿泊先って、ここ、ですか?」
「ああ、色々調べて良さそうなところを選んだが、気に入らなかったか?」
「違います、寧ろ、その逆です……ここってテレビや雑誌でもたびたび特集されてる人気の温泉宿ですよね? 料金は結構お高めだけど、景色や料理も一級品で芸能人がお忍びで利用しているって……」
「そうなのか? 俺はそういうことには疎くてな……。組員なんかにも調べさせて、ここが候補に上がったんだ」
「……本当に良いんですか?」
「良いに決まってるだろ? お前が喜んでくれたら俺としては一番嬉しいよ」
「嬉しいです――ッ」
羽衣子が言葉を続けようとしたものの、それは昴によって遮られた。
「――っん、……」
廊下だというのに、我慢出来なかった昴は羽衣子の唇に自身の唇を重ねると、何度か角度を変えながら口付けをする。
「……すばる、さん……」
「……悪い……」
「……その、こんなところでこういうことは……」
「その言い方だと、ここじゃなければ良いってことか?」
「……っ、そ、そういう訳じゃ、ない……ですけど……」
「それとも、嫌なのか?」
「……そういう聞き方、狡いです……。嫌じゃないけど、恥ずかしい……」
「そうか、悪かった。それじゃあ、おやすみ」
恥ずかしがる羽衣子の頭をポンと撫でながら謝った昴は、おやすみの挨拶をすると書斎へ入って行き、羽衣子も頬を赤く染めたまま自室へ戻って行った。
「……お泊まり……もうすぐだ……」
ベッドへ倒れ込むように横になった羽衣子は天井を見上げながらポツリと呟いた。
「……下着とか、どうしよう? 持ってるのって子供っぽいものばかりなんだよね……もう少し大人っぽい方がいいのかな……」
くるりと横を向いた羽衣子はスマートフォンを手に取ると、下着の検索を始めていく。
「……色も、黒の方がいいのかな? 黒色の下着なんて、選んだことない……」
そして、世の中の男性の意見が気になった羽衣子は男性が好む女性の下着について検索をかけていくと、白や淡い色を好む人と黒などのセクシーな色を好む人が大体半々であることを知る。
「…………気合い入れてるって思われる? でも、昴さんを驚かせたいし……思い切って、黒、挑戦してみる?」
普段とは違うギャップを見せたいと思った羽衣子はネットで普段使い出来る淡い色と共にセクシーな下着を数点購入した。
「……買っちゃった……。何か、恥ずかしい……」
下着を購入しただけなのだけど、何だかいけないことをしているみたいな感覚に陥った羽衣子は勢いに任せて買ったことを若干後悔した。
各々一泊旅行を楽しみにしている中、昴の元にある情報が飛び込んで来ることに。
それは、事務所で作業をしている時のことだった。
「若頭!」
一人の組員が慌てた様子で事務所のドアを開けて飛び込んで来る。
「どうした?」
「高遠と吾妻 想汰について新たな情報が得られました」
「言ってみろ」
「高遠が吾妻 想汰に近づいたのは、妹の羽衣子さんがキッカケらしいんです」
「羽衣子が?」
そして、羽衣子の名前が挙がったことで、昴の脳裏に嫌な予感が過ぎっていった。
#年の差
西原衣都
993
コメント
1件
わあ、もう一泊旅行が目前なんですね!昴さんの愛情が周りにもバレバレで、思わず微笑ましくなりました。「希海が居たら何も出来ねぇ」なんて言っちゃうところ、もう完全にデートモードですよね(笑)。羽衣子さんが黒い下着に挑戦しようとしてるシーン、すごく可愛くてドキドキしました。最後に羽衣子さん絡みの情報が出てきて、これからの展開が気になります…!