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生き物に触れたら不治の病にしてしまう、という体質のしろせんせー。
首の縫い目のような痣がその証拠。
外になんて出たことがないし、もちろん友達もいない。
しかしある日、絶対に柵を越えないという条件で庭に出して貰えた。
生まれて始めてみる綺麗な自然を眺めていたら、勝手に1人の青年が柵を越えて入ってきた。
「あ、え、だれ、」
「しーっ!!ごめんけどちょっと匿って!俺今お袋に追いかけ回されてんの!」
「は、はぁ…」
慌てて口の前に指を立てた青年は、綺麗な黒髪にキラキラと輝く折り紙で作られた王冠を被っていた。
(きれいやな…王冠、好きなんかな。)
「……その…なんで追いかけられとるん?」
恐る恐る話しかけてみると、案外簡単に返答をくれた。
「俺、ゲームの制限時間破っちゃって」
「げーむ…」
ゲーム、しろせんせーがやったことの無い未知の遊び…
「げーむって、おもろい?」
「お前ゲームやったことねぇの!?マジでおもろいよ!!最近俺がハマってんのは〜」
しろせんせーと青年は、そのまま日が暮れるまで話した。
「やべっ、俺そろぼち帰んないと…」
「あ…そうか…」
(こいつがずっとそばにいてくれれば、毎日楽しいのに。)
この数時間だけは、自分の身体が呪われていることも、何もかも全て忘れられていた。
「ま、また_」
そこまで言ってしろせんせーはハッとした。
《また、来てくれる?》
そんなこと、絶対に言ってはいけない。
今日はたまたま触れなかったから良かったけれど、会う回数を重ねるうちに、ふと触れてしまう瞬間があるかもしれない。
この青年を、常に危険に晒してしまうことになるのだ。
しろせんせーは恐怖で口を噤んで、精一杯の笑顔を作って手を振った。
すると、青年はキラキラとした笑顔で、大きく手を振った。
「またな!!」
「!」
しろせんせーの瞳が、直射日光を当てられたビー玉のように輝いた。
(また、来てくれるんか…!)
「っ…また、な!!」
精一杯の大きな声で、大きく手を振ってお別れした。
夕食時
しろせんせーは、使用人にこう告げられた。
『もしも庭に誰か入ってきても、絶対に近づいてはダメですよ。もしも触ってしまったら、そのひとは不治の病に犯され、苦しみながら死んで行ってしまうのですから。』
小さな頃から、毎晩毎晩戯言のように聞かされてきた話だったけれど、あの青年と出会ったことで、その話は戯言ではなくなった。
夕食を済ませ、ベッドの中に潜り込んだ。
(あいつが、俺のせいで死んでしまうかもしれん。)
(俺がもしも触れてしまったら、あいつは不治の病に犯されて、苦しみながら死んでいく。)
(あいつの為にも、もう来るなって、言わんと…。)
その晩は、長い長い悪夢を見た。