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「師匠、またぁ例のブツブツですか?」

「ブツブツいうな…せめて独り言といってくれ」

「変わらないでしょ?」

「ああ…わかったよ」

にひひーと嫌味な笑みを浮かべ、ヨミカは墜落しかけのヘリのような動きでクルクルした。いまどき、これほど活発な女児も珍しい。絶滅危惧種だな。

「あんまし暴れんなよ?お客か、陰陽師の幽城(ユウキ)って“後輩”がくるかも知れないんだからな・・まったく」

まぁ、いっても無駄か。いつもの事だな。

『坂沼恵利香』(サカヌマ.エリカ)って本名をバカにしなくなっただけでも、よしとするか。あんなことを“後輩”のまえでいわれた日には、堪ったもんじゃないからな。ヨミカはマシになった。そう思っておく方がいい。平和だ。

「煮詰まってるんですかぁ?ね、そうでしょ」

「だったらなんだ」

「街へ出て、お姉さんとイチャイチャしに行ったらどぅですぅ?」

「変な言い方すんな」

ヨミカの暴れ風船のような動きを目で追いながら、坂沼はため息をついた。

ヨミカのいう『お姉さん』とは、おそらく。犬の首輪鑑定とかいう、坂沼のキャリアに延々と残り続けるであろう。“最高にくだらない“依頼を持ち込んだ張本人のことだろう。だけど、ヨミカが依頼内容を知らないことへの安堵も含まれたため息だとは認めたくない…ヨミカは弟子とはいえ、たまに遊びに来る東京の親戚の養子だ。ややこしいけどこれが事実。だから、鑑定の『か』の字も分からないガキ…小娘の評価なんて気にするようじゃダメなんだ。俺は『プロ』なんだから……完璧じゃなきゃならない。

「師匠って、わからない人ですよね?陰陽師だか、鑑定士だか。何がしたいのか??」

僕もわからない。なんて、いえるわけもない。この家を引き継ぐ時も。鑑定士の仕事を学ぶ時も、何もかもそうだった。物事の方からやってきて、僕はそれに対応しなければならない。世間は『あの鑑定士、坂沼恵利香(サカヌマ.エリカ)』が『活躍』『躍進』しているとはやしたてるけれど、全くそんなこともなく、単に家族が赤の他人のように接していたので全く助けてくれるはずもなく、ほとんどのことを1人で熟さなければならなかっただけのことだ。なんのことはない、家族の中が悪かったがために起きたわだかまりが発展したせいでおきた家族げんかで起きた副産物がカルト的な信者によってあたかも快挙の如く解釈されただけの話だ。…本当に、なにもない。

「なんでそんなこと訊くんだ?」

「だって、最近仕事がないって愚痴ってたから」

「そうか」

…だから?という空気が否が応でも流れることを感じつつ、次の言葉が見つからない。イヤな間だけが、ヨミカと坂沼の間に流れた。

「・・はやく、来てくんねーかな。お客か幽城(ユウキ)」

幽霊探偵なんてやってられるか

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