苦しいほどに晴れ渡った空。酷い姿になった地上を見渡す。
……僕、生き残ったんだ。
途中、もの凄い銃撃戦になってしまったものの、僕はなんとか生き残った。
仲間は悲しい姿になってしまった人も多々見受けられる。
僕も、左腕を銃弾でかすってしまって、左手を動かすことが上手くできない。
でも、それ以外大きな怪我はない。
生き残った仲間もみんな、大怪我はしているけど、命に関わる程ではない。
おんりーと、MENは……。
僕は、近くの戦場の銃撃戦に加勢した形で、もしかしたらそこに2人がいるかもしれない。
………でも、その可能性は低いだろうな…。
──悲しさで胸が締め付けられていた時だった。
僕の背中に、誰かが思いっきり抱きついた。
驚いた僕は、抱きついてきた人の顔を確認した。
………それは、右目を包帯でグルグルに巻かれたおんりーだった。
「おん、りー………?」
本当におんりーか確認するように、彼の名を呼ぶ。幻覚かもしれない。
「ドズルさん、……‼」
僕の名前を呼んでくれたのは、紛れもなくおんりーだ。
おんりーだ。おんりーが目の前にいる。生きてたんだ。
嬉しさが涙に変わり、おんりーの姿が見えなくなってしまう。
「生き…てたんだ、おんりー……。良かったぁ……。」
おんりーは頷いて、僕を抱きしめてくれた。僕も、おんりーを抱きしめ返す。
これ以上、嬉しいことはないんじゃないか。と思ってしまう。
「ドズルさんの姿が見えて、嬉しくって……思いっきり抱きついちゃいました。」
えへへ、と照れるように笑うおんりーは、今まで見たおんりーより幸せそうに見えた。いや、幸せだろう。
「右目は……。」
僕はおんりーの包帯を指差す。右目を隠すように巻かれている。
「飛んできた石の破片が、右目に当たって……、潰れちゃいました。」
世界平和のために、率先して戦ってくれたんだろう。
「別に、目が片方無くたって後悔はしません。左目で”見える”から。」
僕は、おんりーらしいな、と関心する。
そして、少し恐ろしいことをおんりーに問いかけた。
「その……MENは、見た……?」
おんりーは、ニヤッといたずらっ子のように笑った。
多分見たんだな。この反応。隠してるのかな。だとしたら下手すぎだ。
「見ましたよ。こっちです。」
おんりーは、怪我人が手当てしてもらうために行くテントへ行った。
やはり、MENも怪我してるのか。
歩いてくおんりーの後ろについていった。
おんりーが入ったのは、一番奥のテントだった。
「MEN、サプラーイズ‼」
MENの視界に、僕が映った。そして、僕の視界にもMENが写る。
「え……ドズルさんっ……!?」
MENは見た限り、僕とおんりーより大怪我をしていた。
右足の包帯には血が滲んでいて、左手の小指と薬指は無かった。切り落としたのだろうか……。顔の右半分も火傷しているようだった。
MENの姿を見る限り、おんりーがあの笑い方をした意味が分からない。
「え、MEN……大丈夫……?」
「大丈夫に見えますか?」
返しはいつも通りのMENだった。
僕は、おんりーにあの笑い方をした理由を聞こうとした瞬間だった。
「マジでありえないんですよ!」
MENが僕に向かって少し大きい声で言う。
「俺、前線で戦ってたんですけど!後ろのやつの攻撃が俺に当たったんですよ!右足に!俺、そいつ守ったのに!」
くそー!と叫ぶMENは、僕らより大怪我なはずなのに、僕らより元気だった。
多分、この姿を見て笑っていたんだろう。確かに、少し面白い。というか、元気をもらえる。
「でも、生きてて良かった。」
「まぁ、そうだけどな!」
「奇跡みたいだね。」
僕らの出会った町へ帰る。みんな大怪我をしたものの、元気だ。
MENは少し歩きにくそうだけど、大丈夫!と言っていた。
ぼんさんとおらふくんは、見てくれてるかなー……。
「「おかえり。」」
懐かしい声が、僕たち3人の鼓膜を震わせた。心臓がドキッと跳ね上がる。
そんなはずない。だって、だって……。
“2人”は”特攻隊員”だったはずだから……。
声がした方には、別れた日とはほぼ変わらない姿のぼんさんとおらふくんがいた。
「え、どうしよう……。幻覚が見えてるかもしれない……。」
おんりーが左目をゴシゴシとこする。
「やば、俺にも見えてるよ……。夢かも……。あれ、俺生きてる?」
MENも、この状況についていけてないようだ。
「特攻隊員のはずじゃ……。」
もちろん、僕もパニック状態だ。
2人は満面の笑みで僕たち3人に飛びついた。
「言ったでしょ…?……またねって。…やっと会えたぁ…。」
とぼんさんが。
「俺たちの夢、叶ったんだよ。」
とおらふくんが。
これは、夢じゃない。2人の温もりが教えてくれる。
僕たち5人は顔を見合わせて、満面の笑みで幸せを感じた。
「神様が、味方してくれたんだね。」
僕は、4人と嬉しさを噛み締めながら言う。
不幸な世界に生まれてしまった僕たちの味方は、神様だったんだ。
後から聞いたけど、特攻隊員は、敵国への突撃に失敗したらしい。
爆弾を乗せた飛行機は、途中で不時着。
もう一度戦場へ行くことも検討されたが、みんなで歩いて帰ろう。ということになったそうだ。
普通なら、味方軍の手によって失敗を悟られないように証拠隠滅されるそうだが、それに反対してみんなで隠れて逃げたんだそう。
結構な時間をかけて、この地へ戻ってきたそうだ。
でも、その奇跡が今に繋がっている。
無理だと思われてた夢は叶った。
僕らは、”最期”までずっと一緒にいた。一時も離れることはなかった。
あの世でも、離れることはない。唯一の家族だ。
みんなの満面の笑みを思い浮かべながら、僕らは眠りについた。
コメント
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あれ?目から塩水が... ハート連打作業は無事終わったぜ!
よかったねぇ
こんな深夜に泣いたらだめなのに…泣くやんか…