テラーノベル
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「魂が抜けた」と言いつつも、いつまでも床に転がっているわけにはいかない。
王耀はふっと小さく息をつくと、時雨の腰に回していた腕をほどき、スッと軽やかに立ち上がった。身長百六十三センチの細身の体は、朝の光の中でまだどこか気だるげに畳の上に丸まっている。
「いつまでもそこに転がってちゃ、畳にカビが生えるアルよ。それとも、このままお姫様抱っこで台所まで運んでほしいアルか?」
「ひっ……! ぎ、ぎゃ、逆にお願いしません……! す、すぐ起きます、起きますから……!」
その言葉に驚いたように、時雨はエビ反りになっていた体を弾みをつけて起こした。顔は相変わらずトマトのように真っ赤だが、これ以上恥ずかしい姿をさらすまいと、必死に乱れた銀髪を両手で押さえながら慌てて正座の姿勢をとる。
腰まであるストレートの銀髪は、寝癖と昨夜の乱れで少しあちこちを向いている。シャツの襟元もわずかに開き、そこから覗く華奢な鎖骨が朝の光にさらされていた。そのあまりにも無防備で可愛らしい姿に、王耀は目を細め、自分の着ていたカーディガンをひょいと手に取ると、彼女の肩口にふわりと掛けた。
「風邪を引くから、まずはそれを羽織るアル。……ほら、顔を洗ってくるがいい。目が覚めたら、温かいスープでも作って待ってるから」
カーディガンをそっと引っかけられ、王耀の残り香と温もりに包まれた時雨は、ぼんやりと瞬きをした。青い瞳がわずかに潤み、気恥ずかしさと胸を打たれたような愛しさが入り混じった表情で、王耀の顔を見上げる。
「……あの、耀さん」
「ん?」
「昨日のこと……その、恥ずかしくて今でも消えてしまいたいですけど……」
時雨は小刻みに震えながらも、意を決したように俯きがちだった顔をほんの少しだけ上げ、震える声で紡いだ。
「――嬉しかったです。……その、大好きです」
消え入りそうな、けれど紛れもなく彼女自身のまっすぐな想いを込めた呟き。
言い終えた瞬間、時雨は自分の発言の破壊力に耐えきれなくなったのか、両手で顔をパッと覆い、真っ赤なまま畳に突っ伏してしまった。
王耀は一瞬目を丸くしたが、すぐにその胸の奥底から、どうしようもないほどの愛おしさがこみ上げてくるのを感じた。千年以上を生き、数え切れない言葉を聞いてきた彼であっても、この不器用で、一歩ずつ自分の殻を破ろうとする恋人の言葉には、いつだって心を完全に持っていかれてしまう。
「……まったく、反則アルよ、それは」
王耀は苦笑しながらも、時雨の頭を優しくポンと撫でた。
「知ってるアルよ。……こっちこそ、大好きアル、時雨」
その低く甘い声が聞こえた瞬間、畳に突っ伏していた時雨の背中がビクッと盛大に跳ねた。もうこれ以上耐えられないとばかりに、彼女は「うわぁぁぁ!」と muffled な叫び声を上げながら、両手で耳を塞いで丸まった。
朝の冷たい空気を完全に溶かしてしまうような、温かく甘やかな時間が、二人を包み込んだままゆっくりと動き出していく。
新しい一日の始まりは、昨日までよりも少しだけ距離が縮まった、二人だけの特別な日常だった。
めーし
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瑞希 流星♟也中
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コメント
1件
うわあ、もう朝から甘々で最高でした……! 時雨が「大好きです」って震えながら告白するシーン、恥ずかしさで耐えきれずに畳に突っ伏しちゃう感じがめちゃくちゃ可愛い。そして王耀の「反則アルよ」からの「こっちこそ大好きアル」の返しがズルいです、読んでるこっちまで照れました。カーディガンを掛ける細やかな優しさも、二人の距離が確実に縮まってる感じがして、次の日常がすごく楽しみです!