コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
俺単体で番組の企画で行った保護犬施設
こういうのって大体若井やりょうちゃんなのに
なんで俺一人だけが選ばれたんだろう?
そこは東京から車で一時間程の施設だった
広い室内に数人の番組関係者と共に案内されると直ぐに犬の声でいっぱいになった
そこには沢山の小さなゲージの中に可愛い小型犬が居て並べられていたのだが俺は1匹の大型犬に目がいった
それは毛並みの綺麗なゴールデンレトリバー
周りの犬達は知らない人間達に興味深々で吠えるわ走り回るわ…と大騒ぎだと言うのに
ひときわ大きなゲージに入り周りに目を伏せて小さくじっとしている犬に俺は気になった
なんだか寂しげで全てに興味がなさそうな犬
…なんかあったのかな
俺は自然とそこへ足が向き目の前に行くと座り込み覗いてみる
犬は俺に気付くとびっくりして顔を上げた
「あ…びっくりさせちゃった、ごめんな」
犬は目を丸くしじっと俺を見つめている
すると大きな体を起こし直ぐにくうん、と甘える様鳴いた
「え、珍しい…」
と職員の人が俺に近づき言った
「この子…全然人間に興味がなくて…なのに大森さんには凄く反応してますね」
へえ…そうなんだ
何があったのか知らないけど嬉しいな
犬は俺をずっと見つめ小さく鳴いている
よく見ると尻尾まで振っていた
もしかして俺に甘えたいのかな
「あの…この子出してもらうことって出来ますか?」
そう無理言って鍵を開けてもらうと犬はすっと俺の目の前まで来てちょこんと座り俺を見つめている
まるで撫でてくれと言わんばかりに俺を見て離さない
俺は両手を伸ばして顔周りをわしゃわしゃとかいてあげると犬は気持ち良さそうに目をほそめた
なんだ、可愛いじゃん
俺は手を止めると犬は俺の横に来てもたれ座り込んだ
毛のもふもふがくすぐったくもあり気持ちがいい
さすが大型犬…重量が…くるな
「あ、もう…こら」
その状況を見て職員の人は慌てふためいていたが俺は
「いや、大丈夫です」
って言っておいた
*
「ねえ…なんで俺に懐いてんの?」
俺はもたれている犬に問いかけてみるけど答えはない
「…俺たち会ったことあんのかな?」
そこで犬は小さく鳴いた
やっぱ犬って賢いな
聞いたらちゃんと答えてくれる
そっかぁ会った事あんのかぁ…
でも俺…全然覚えてないんだよな
「ごめんな…俺は覚えてないんだ」
俺は申し訳なく言う
よく聞くやつだけどもしかしたら俺達は前世か異世界か何かで愛を誓いあったのかもしれない
なんかそうだとしたら世の中って狭いよな
だってこんなに近くでもう出会えている
もしかして俺はここに導かれたのかな
これも運命だったりするのかも
「…俺は覚えてなかったけどさ」
前世か異世界か何か俺達はどうなってたかは知らないけど
「また会えたじゃん」
って言って俺も犬に負けじと全体重をかけもたれた
*
あれから俺は時間があればあの犬に会いに行くようになった
一緒に住むことは出来ないからせめて会って触れ合うぐらいはしたい
何故だか一緒にいてて安心する
俺達はずっとずっと前から一緒にいて心を通わせ本当に愛し合っていたのかもしれない
惹かれ合うってこういう事なのかな
今日は職員さんに無理を言ってリードを付け一緒に近くの河川敷を散歩させてもらった
外はまだ寒い
だけどひんやりするこの感じの風がなんとも気持ちいい
「うわー、気持ちいいー」
思わず声をあげる
犬も俺と一緒でそれを楽しんでいるかのように目を細め嬉しそうにゆっくり歩く
思わず鼻歌を歌ってると犬はふい、と俺を見上げた
「一曲歌っていい?」
って俺は聞いたものの犬の返事をもらう前に気持ち良く一曲歌わせてもらった
✳︎
広場に着くと腰を下ろし並んで座る
大分歩いたな
いい運動になった
俺はちょっと気になってた事を聞いてみた
「なあ、俺達って…愛し合ってた?」
返答は無い
へえ、愛し合ってた訳じゃないのか…
意外だな
じゃあ、なんだろう
だが犬は何かずっと言いたげな表情をしている
でも犬のはずなのになんだか人間っぽく感じるんだよな
言うならば犬を被った人間…みたいな
「お前さ、人間だったらどんな感じだったんだろうな」
そう言うと犬はぴくり、と反応したかと思うと急に勢いをつけて俺に覆いかぶさって来た
「え…ちょっと!」
俺は背中から倒れ押し倒されると頬を舐めまくる
頬から耳…首筋へと舐められていく
コレは普通にじゃれ合ってることになるんだろうが俺としては襲われているって思った
「ん…っ」
俺は首筋が特に弱く感じてしまった
びく、と反応すると犬が俺を前脚で抑えつけ一旦行為を止め見下ろした
『感じてくれて…嬉しいよ』
そう…言っている気がした
20250216