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何はともあれだ、あの後俺は学校中でΩなんじゃないかと散々噂されネタにされたが、結果的に自分に残ったαの残骸が俺のポテンシャルと成績もろとも保たせた。
どんだけΩに成り下がったとしても、元はαだ、気質は少しだけ残ってしたようでそれはそれで、面倒なことにならず助かったと言えば助かったのかもしれない。
あれ以来、俺はしっかりと抑制剤を服用し、ヒートがいつ来るかしっかりと手帳にメモをつけるようになった。自意識過剰上等、これは自衛のためだ。俺はあの日学んだ。世間、社会は俺の勝手な想像を容易に踏みにじると。二度とあんな思いをしないため、絶対にαと関わりを持たないと決めた。
「はぁ、でも疲れるな」
それでいうと、俺は今グループに所属していてそれなりに和気あいあいと高め合いながら順調に進んでいる。
もちろん、俺は己がΩであることを秘密にしている。
メンバーもとやかく自分自身ののバースについて触れないから、まだそういったことについては話したことは無いが…。
「αだろうな」
そう…話として触れては無いのだが、これはなんて言っていいのか分からないが。そうだな、強いて言えばΩの勘だろうか。俺は、彼奴…かなめはαだと思っている。どう表現していいのか分からねぇが、何となくそう感じる。
αの時も同類であるαの雰囲気はよく感じ取れた、それと同じ類なのだろうか。
学生の頃、ひと通りバース姓について学校で教わったが、詳しいことは病院の先生に教わった。
俺のようにαからΩになるなんて 、希少ケースすぎるからだ。
「えっと、今日はヒート1日前か…」
そう言って手帳を確認し、一応薬を服用する。ヒート前恒例の、朝のルーティーンだ。
それと一緒に今日の自分のスケジュールも確認する。
「えーっと…会議か」
まだ結成して間もないグループってのもんで、一度も自分のヒートと間接的ではあるが、彼らと接触するタイミングが今まで一度も被ったことがなかったのは、もはや奇跡レベルの話かもしれない。
でもヒートも1日前だし、比較的俺は安定した周期で来るから大丈夫だろう。それに、会議と言ってもネット上でだ。 そう思い、残りの編集や録音をする準備に取り掛かる。
ついでに企画とか少し考えておくか、少しでもこのグループに貢献したい。
「ふふっ」
グループのことについて考え、意見を共有し、更なる高みを目指す、俺はこれが大好きだ。まぁ、絶対にメンバーには言わないがな。
よし、集中。午前中には片付けて午後はゆっくり過ごそう。
「こんなもんだな。」
一息ついて、時計を見るともう13時を回っていた。 本当は午前中には片付けたかったが…少し編集を凝りすぎたかもしれない。
会議は14時からだからまだあと1時間は余裕がある。昼飯食って、少し寝よう。
薬も飯と一緒に忘れず飲まないとだな。
早々に飯を済ませて、寝る体勢に入るが中々眠れない。…抑制剤の副作用か。
眠れないのはしょうがない…が、暇になってしまった。少し時間は早いがdiscordに早めに入っておこうと思い、ソファーを後にする。
「お、もう入ってるやつもいるんだな」
そこには見慣れたメンバーの一人のアイコンが映し出されていた。
「お!アルケーやん!おつおつ~!」
我らが黒組のラップ担当、うるみやだ。やはりいつでも元気だな、こいつは。少し遅れて挨拶をする。
「あぁ、お疲れ」
何気なくそう返したつもりだったが
「おっ?魔王様今日はテンション低めなんかー?」
煽るような、それでありながら少しの心配を含んだ声色で聞かれる。
そんなに暗かったか?テンションが下がるようなことは今日特になかったが。
強いていうなれば、ヒートか?
自分では気づかない微小な変化でヒートの前兆が出ているのか?分からないが、悟られてはまずいと思い、否定し話を逸らす。
「そんなことは無いが、というかお前、何故このような時間からいる?」
入った時、誰もいないと思って垂れ流し程度に入っておこうと思ったのだ。なぜいるのだろう。
「そら暇やったからや!!入ってたら誰か来ーへんかなぁって思うてたらアルケーが来たんやで!」
まさかの俺と同じ理由。
「てゆうか、アルケーこそ人のこと言えんで!」
「俺は根源だからな。先に入って、今回の会議の雰囲気をダークマターに染めてやろうと思ってな。」
「あははは!なんやねんダークマターに染めるて!魔王様はほんま何言うとるんか よう分からへんわ!」
ツボに入ったのからそのあとの会話でも思い出しては笑ってを繰り返しているそいつの、 思わずつられるその笑い声に少し元気を貰えたような気がする。
「お!しゃるー!おつ!」
見れば、青みがかったアイコンが赤とオレンジの他にひとつ増えている。
「おー!お疲れ様!うるとー?お、あるけーもいるんだな!おつおつ~」
「あぁ、お疲れ」
時計を見るとそろそろ14時になりそうな時間帯であり、メンバーがそろそろ出揃い始める頃だ。
「なんかみんな早くなぁい?お疲れ様ぁ」
案の定、メンバーの誰よりも可愛らしい声を持ったやつが入ってきた。
「あ、れむちー!お疲れさ…」
「んん、あ、あー」
「ちょっとしの!まだれむちに挨拶してる最中だったんだけど!」
「え?あ!ごめんね?」
なんてくだらない会話なんだ。まあそういう会話も悪くないがな。
「なんだか騒がしいね~」
ドクリ、と全身に血がいきわたるのを感じる。
「!」
なんだ?
「かっなめー!おつかれ~」
こいつ、かなめの声がしたとき胸の奥がずんと音を鳴らした。
「あれ?魔王様は挨拶無しかい?」
「…あぁ、お疲れ。」
「全員揃ってるみたいだし、少し早めに会議始めちゃおうか」
「賛成!」
「ええな!」
メンバーの声を他所に、俺は少しばかり残る胸のざわめきを感じながら会議に取り組んだ。
会議の内容としては、今後の企画についてである。
先ほど自分が考えて、思いついていた案を出したり、メンバーからの意見を拾って深堀して、より制度の高い、面白いものにしていく。
「あ、ねね!れむグッズの紹介動画とかやりたい!」
ということは実写か、いい案だ
「いいなそれ!」
「俺もやってみたかったんだよな~!」
そろそろ動画としてはそういったものも出していくべきだと考えていた。
「いい案だ、れむ」
「えっへへ~ありがとうアルケー!」
「じゃあその企画を軸に大まかな構成練っていこうか」
「おー!」
「じゃあ今日の会議は終わり!」
「よーっし!お疲れーい!」
「今日が土曜だから、来週の火曜辺りに収録な」
「了解かなちゃん!」
その後少し予断をしたのちに、メンバーが続々とdiscordから抜けていく。
それに続いて俺も抜けていった。
「はぁ…」
それにしてもなんだったんだ、あの胸の衝撃は。
軽くヒートを起こしたのか?明日から本格的にヒートに入るが、こんなのは初めてだ。 まぁ、俺にとってのヒートは元々軽いんだがな。
その日俺は、少しの心残りとざわめきを無視して火曜日の収録の準備にとりかかった。