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M/えむ。♫🦎
甲斐田晴side
弟には本当に悪い事をしたな⋯なんて思う。
僕に行っていた矛先が、
弟に向かってしまったから。
昔から、弟は僕が大好きで。
常に僕のそばに居るくらいで。
「晴兄!!」
なんでニコニコしながら近づいてくれる
弟が大好きだった。
親に追い詰められて、
寝れない日が続いてた時もたまに夜な夜な
「晴兄⋯?大丈夫?」
なんて部屋を覗いてくれるくらい優しくて。
僕の耳が聞こえなくなって、
2人に突き放されて矛先が弟に行った時も
「晴兄⋯無理しすぎだよ。ゆっくり休んで?」
そう言ってくれるような弟で。
ご飯だって持ってきてくれようとしてたけど、
親にとめられて。
「⋯⋯ごめんね」
そう謝ってくる弟に罪悪感しかなくて。
僕がいると、弟は僕の事を心配して
親に怒られるだろうから。
だから、出ていく。
⋯ごめん、こんな兄ちゃんで。
そんな思いを持って。
家を出て、しばらく暗い道を歩く。
こんな夜に歩くのは初めてだから、
音がないって結構怖い⋯⋯かも。
街頭もあんまりなくて。
ただひたすらに、歩けば
少しだけ広い公園に着いて。
とりあえず、自動販売機で水を買って、
ベンチに座って一息。
「⋯これからどうしようか」
どこに行ったらいいんだろう。
相談なんかしたら、家に帰されるだろうし。
それだけは避けたい。
なんて思っていれば突然の人影。
ビクッと反応する体。
とにかく顔を上げなければいいや⋯
なんて思っていればトントンと叩かれる肩。
だけど怖くて顔をあげないでいれば、
今度はしゃがんで僕と目を合わせてくる。
「⋯何してるの?」
そう言ってくるのはスーツを着た男の人。
こんな時間に話しかけられるなんて
怖くて黙っていれば
「話したくない?」
なんて言われて、それに少しだけ頷けば
「⋯⋯俺の家来る?」
なんて控えめに言ってくれる。
でも、知らない人だし
てか着いて行ったらやばい人だった⋯
とかないよね。
固まって何も言わない僕に
「あ、ごめん。変な人とか
ヤバい人とかじゃないからね」
そう言ってくる。
声⋯出てた?なんて思うくらい
僕の思ってることで驚く。
しゃがんで僕と目を合わせてくれて、
話してくれるこの人の事を
少しだけ信用してみたくて。
「…いいですか?」
そう言ってみる。
そうすれば僕の荷物を持ってくれて、
僕を立ち上がらせてくれて
僕に合わせて歩いてくれる。
数分歩いて、
着いたのは少し大きめのマンション。
玄関前に着いて急に怖気付いて立ち止まれば
「入りな?」
なんて優しく手を引いてくれて、
家の中に入る。
そのまま着いていけば、
リビングのソファーに座らされて。
紙を差し出してくる。
そこには
【もしかしてなんだけど、耳、聞こえない?】
そう書かれていて。
続けて
【ごめんね。声を掛けた時もなんだけど、
どれだけ話しかけても
振り向いてくれなかったから】
なんて書かれていて。
声に出して受け答えは出来る。
ボリュームとかそういう調節は出来ないけど。
控えてるつもり。
だけどせっかく紙に書いてくれたから、
僕も紙に書く。
【聞こえてないです。ごめんなさい】
そう書いて渡せば、ふるふると横に首を振って
【謝らなくていいよ。
でも会話出来てるよね?】
そう見せてくるから
【聞こえなくなったのが1年前なので、
口の動きで何を言ってるのか分かるんです。
話とかも、ボリュームとか
分かんないんですけど話せはします】
なんて書いて渡せば
「じゃあ、今から会話にしよう。何か飲む?」
そう言ってくれるから頷く。
それを確認してキッチンに消えて、数分。
2つのコップを手に戻ってきて、
僕の隣に座った。
ローテーブルの上に置かれた
オレンジジュース。
「これしかなくて、大丈夫?」
「⋯あ、はい」
用意してもらったオレンジジュース。
久しぶりのジュースになんか感動。
一瞬で飲み終わっちゃって
コップをテーブルに戻すと
肩をトントンと叩かれる。
「自己紹介、していい?
今のままだと誰か分からなくて怖いでしょ?」
怖い⋯はもう無くなってたけど、
誰かは気になるから頷けば
「不破湊って言います。23歳。
駅前のレストランで働いてます」
なんて自己紹介をしてくれる。
不破⋯ってすごい珍しい苗字だし、
レストランで働いてるんだ⋯。
しかも23歳って、僕の8個上⋯?
「⋯あ、えっと⋯」
僕も自己紹介⋯なんて思うけど
上手く言葉が出てこなくてあたふたしていると
「ゆっくりでいいよ」
なんて微笑んでくれて。
なんかすごい⋯安心する⋯かも
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