テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
M/えむ。♫🦎
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
甲斐田晴side
継ぎ足してくれた
オレンジジュースを1口飲んで、
ふうと自分を落ち着かせて自己紹介。
「⋯甲斐田晴です。15歳です」
年齢を言えば、持っていたコップを
落とすんじゃないかってくらい
びっくりしていて。
そりゃ、8個も下だったら驚くよね。
⋯出てけとか言われるかなあ。
それとも、家に帰れ?とか?
なんて考えを巡らせていると
「なんでこんな時間に公園に居たの?」
なんて聞かれる。
手に持っていたコップは机に置かれていて、
体が僕の方にしっかり向いていた。
「⋯家出⋯です」
家出。
なんて言えば帰されることなんて
分かりきってるのに。
それしか言う方法が無くて。
すぐにでも帰りなよ。
そう言われるって思ってたのに続けて
「なんで家出?」
そう聞いてくる。
だけど「言いたくなかったらいいよ」
なんて優しくて。
気づいたら僕は、
事の経緯を全て不破さんに話していた。
顔色ひとつ変えないから、
呆れられたのかななんて思っていたけど
「⋯ここ、居る?」
一通り聞いた不破さんの口から出たのは、
意外な言葉だった。
「出て行きたいって思ったら
家に帰ってもらっていいし⋯」
「いい⋯⋯んです⋯か?」
「うん、甲斐田がいいなら
俺は居てもらっていいよ」
そう言う不破さんは、優しく笑った。
そうして、不破さんの提案に
甘えさせてもらう事に決定。
⋯だけど
「一応、親御さんには話しておきたい」
なんて言われて固まる僕。
⋯正直帰りたくない。
だからここに居たいけど、
そう言われると迷う。
そのまま家に帰らされたら嫌だし。
「あ、帰さないよ。甲斐田のことは。
そんな蔑ろにしてる両親のところに
帰すなんてことしないから安心して。
でも、一応ね?
許可的なもの取らないとね」
⋯やっぱり不破さんって
僕の考えてることすごい分かってくれる。
帰さない。そう言ってくれて嬉しくて。
「ありがとう⋯ございます」
お礼をすれば
「お腹、空いてない?」
なんて立ち上がる。
この家に来て1時間は経った。
だから今は⋯夜中の1時。
僕はもちろん何も食べてないけど、
不破さんは仕事帰りなのに
何も食べてない⋯。
僕のせいじゃん。
「ごめんなさい」
キッチンに立ってる不破さんにそういえば
「ん?いいよ、ちょっと待ってて?」
そう笑ってくれる。
不破さんって、
優しさの塊⋯って人だよね。
名前も知らない僕に声を掛けてくれて、
そんな事しないけど
僕が盗みとか働く可能性だってあるのに。
家にまで上げてくれて、ジュースをくれて。
⋯挙句の果てには家まで提供してもらって。
ここまで話しておいてなんだけど…
不破さんの声ってどんななのかな⋯
手際よく料理をしていく姿を眺める。
聞こえないけど、
トントンという音が聞こえてきそう。
「なに?」
不破さんをずっと眺めていたら、
ふと目が合って微笑む。
フルフルと首を横に振ると
目線をまた下に戻す。
しばらくしてふたつのお皿を
ダイニングテーブルに置いた不破さん。
「おいで?」
それをソファーで眺めていれば、
不破さんの前を指さして呼んでくれる。
立ち上がればいい匂いが
一気にぶわっとしてきて思わず頬が緩む。
言われた席に着けば、
目の前にはオムライス。
しかもトロトロの。
「口に合わなかったらごめんね?
それと、トロトロにしちゃったんだけど
良かった?」
目の前に座る不破さんが
心配そうにしてくるから
首を横に沢山振って否定。
「⋯好きです、トロトロのオムライス」
そういえば「良かった」なんて笑って、
2人で手を合わせて食べ始める。
不破さんの作るオムライスは
今までで1番美味しくて。
久しぶりに食べた温かいご飯。
手が止まらなくて、ちょっとだけむせる。
「・・美味しいです」
そう不破さんに言うと、
不破さんは驚いた表情をして僕に近づいた。
⋯かと思えば、そっと指で僕の頬を撫でる。
⋯何してんだろうなんて思っていれば
「泣いてるけど、大丈夫?」
泣いてる。
そう言われて自分で確認すれば
本当に泣いていて。
人間、気づかないことって本当にあるんだ。
なんて思う。
「久しぶり⋯だったから温かいご飯が」
こんなに美味しいご飯も久しぶり。
そう思ったら僕の中の何かが緩んだのかな。
「これからは毎日、作ってあげるよ」
なんて笑う不破さん。
僕は少しも残したくなくて、
お皿に着いたソースも綺麗に食べきった。