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……何か柔らかいような感触があって、「あれ?」と、目を開けた。
何が柔らかくてと、寝ぼけまなこでキョロキョロと見回した私は、ようやく気づいた驚愕の事実に、「ひゃあー!」と思わず声を上げた。
私ときたら酔った挙句に、こともあろうに矢代チーフの膝まくらで寝ていたのだ──。
「うわぁーごめんなさいー」
とっさに弾かれたように起き上がると、
「起きたのか? 別に気にしなくてもいいから」
ローソファーで、まだお酒を飲んでいた彼から笑い顔が向けられた。
「どれくらい寝ていて、私……」
今日こそはやらかさないようにと万全を期したはずなのにと、呆然と呟く。
「たいした時間じゃないから。ワインはアルコール度数も高いからな。酔いの方は覚めたか?」
「はい、膝まくらで寝ていたなんていうのを知って、一瞬で覚めました……」
彼氏と言えど仮にも上司の膝で寝落ちするなんてと、自己嫌悪を感じてすっかりしょげ返る。
「気にしないでいいと言っただろう。僕も嬉しかったしな」
「……嬉しかったんですか? ……嫌いになるとかではなくて」
落ち込み気味でちょっと信じられないような思いで、そう恐る恐る問い返すと、
「どうして嫌いになるんだ」と、告げられた。
「好きな人に甘えられたら、嬉しいだろ」
「……甘えてましたか、私ってば」
さらなる衝撃に、目を丸く見開く。それは、もはやさっきまで酔っていたことさえ、きれいさっぱりと忘れてしまう程だった──。