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「うん、『膝まくらして……』と、僕にしなだれかかってきて」
「ひゃあー……」と、再び声を上げる。
し、しなだれかかるって……! それ、私がしたんですか!?
信じられない……普段の自分じゃあ、絶対にしそうもないことなのに〜。しかも、『膝まくらして』とか、チーフに甘える……って、誰ですか、それは!?
酔っ払って犯した自らの所業に、真っ赤になったまま、固まって動けないでいると、
「……そんな君が、可愛くて、嬉しくてな」
彼の腕の中へ、ふいにぎゅっと抱き寄せられた。
「君といると、君をますます好きになる。君を好きな気持ちが、止まらなくなる……」
耳元で甘く囁きかけられて、顔の熱っぽさにいっそう拍車がかかる。
「……好きだよ」
火照った頬にチュッと口づけられて、身体が倒されそうになり、ふと(もしかして私、お酒くさくないかな)と、感じた。
既に仕出かしたことは消し去れるわけでもなかったけれど、せめてもお酒の匂いくらいはさせておきたくなくて、「あ、あの、お風呂に……」と、口に出した。
「なら、一緒に入ろうか?」
すると、彼からそう問い返されて、そういえば温泉に行った時に、いつかは一緒に……と話していたことを思い出した。
いよいよその時が……と、身構えて、「は、はい」と神妙な面持ちで答えた私だったが、
戻ってきたのは、「えっ、いいのか?」という、思いの寄らない返事だった。
「あっ、だって前に、温泉旅行で、約束を……」
「ああ、そうだったな」と、彼が口にする。
「そういう約束もしたが、まさか本当にとは思っていなくて、今も断わられるのを前提で、実は言ってみたんだ」
「……そう、だったんですか?」
一瞬、緊張していた分、全身からへなへなと力が脱けそうになったのだけれど、
「なら、あの時の入浴剤もあるから、一緒に入ろうか」
そう彼から誘われて、脱力しかけていた身体に、再び緊張がみなぎった。