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神獣白澤爆乳美女化事件
桃源郷に佇む薬局「うさぎ漢方極楽満月」の空気は、かつてないほどのピンク色の邪気……ではなく、健全ではない熱気に包まれていた。
「……ねぇ、桃太郎くん。私の気のせいかな。なんか急に、重心が前に引っ張られて腰が痛いんだけど。あと、視界の下の方が自分の体で遮られて見えない」
いつもの、のんべんだらりとした中国神獣の声。しかし、その声はどこか鈴を転がしたような、妖艶で甘いソプラノへと変貌していた。
漢方の調合をしていた桃太郎が振り返った瞬間、持っていたすりこぎ棒を床に落として絶叫した。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!????」」」
そこに立っていたのは、桃源郷の主であり神獣である白澤……ではなく、三千世界の男を全員狂わせるレベルの超絶爆乳美女だった。
白い漢方服の胸元は、はち切れんばかりの圧倒的な質量によってV字にパッツパツに押し広げられ、奇跡のGカップが「たゆん……」と神獣の威厳をすべて置き去りにした揺れ方をしている。黒髪のサイドはゆるく編み込まれ、切れ長の瞳には知性と、それ以上の色気が宿っていた。
「白澤さまぁぁぁ!! あなた何やってるんですか!!」
桃太郎が顔を真っ赤にして叫び、慌てて店ののれんを引っぺがして白澤の胸元に巻き付けた。
「え〜? 何って、女の子にモテる『完全無欠の美少女化漢方』を作ろうとしたら、配合を間違えて自分が爆乳になっちゃった。てへっ」
「『てへっ』じゃないですよ!! 自分で揉むな!! 目のやり場に困るでしょうが! 誰か、誰か服をーーーっ!」
その時、極楽満月の引き戸がガラガラと容赦なく開いた。
「おい、白豚。頼んでいた劇薬の納品が遅れて……」
入ってきたのは、閻魔大王の第一補佐官であり、白澤の天敵である鬼灯だった。
いつもの無表情で入室した鬼灯だったが、のれんを胸に巻き付けた爆乳美女(白澤)を見た瞬間、ピタリと動きを止めた。
「「…………」」
沈黙が満月を支配する。白澤は、鬼灯の登場にいつものように顔をしかめ、のれんの隙間からたわわな果実を覗かせながら、ふんっと鼻を鳴らした。
「なんだよ悪鬼。人が大変な時に……。って、ちょっと何ジロジロ見てんのさ。減るもんじゃなし、そんなに私の胸が珍しいわけ?」
ふにゃり、と上目遣いで鬼灯を睨みつける白澤。しかし、女体化したせいでその仕草はただの「誘惑」にしか見えない。
鬼灯は無言のまま、懐からいつも愛用している金棒を静かに取り出した。
「……なるほど。新手の嫌がらせですか。桃源郷の長ともあろう者が、ついに頭のネジが外れて地獄の風紀を乱しに来たわけですね。即座に衆合地獄へ叩き落として、すり潰して肉団子にして差し上げます」
「なんでだよ!!! 暴力反対!!! っていうか、悪鬼のくせにちょっと耳赤くなってんじゃないの!?」
「それは怒りの血管が拡張しているだけです。死ね、この白面のメス豚が」
容赦なく振り下ろされる金棒を、白澤は身軽に(しかし胸を盛大にたゆんたゆんと揺らしながら)かわした。
「痛いな! 漢方の効果が切れるまであと30分くらいなんだから、ちょっとはレディに優しくしなよ!」
「レディ? どこにレディがいますか。私に見えるのは、ただの『無駄に肉の詰まった歩くハレンチ神獣』だけです。大体、その胸の質量は仕事の邪魔でしょう。今すぐその余分な脂肪を金棒で平らに整形してあげます」
「絶対に嫌だ!!! 桃太郎くん助けて!! この鬼、女の子になっても手加減してくれない!!」
「二人ともお店の中で暴れないでください!!!」
桃太郎の悲痛な叫びが響き渡る中、鬼灯の冷徹な追撃と、白澤(爆乳)の必死の逃亡劇が桃源郷を駆け巡った。すれ違う桃源郷の住人(特に殿方)が、白澤の揺れる胸元を見るたびに鼻血を噴き出して倒れていく。
そして、ちょうど30分が経過したその時。
ポフンッ、という妙に軽い効果音と共に、一瞬で白い煙が立ち込めた。
煙が晴れると、そこにはーー
のれんを胸元に巻き付けたまま、いつもの「男・白澤」に戻った神獣が、マヌケな顔で突っ立っていた。胸元はすっきりと平ら(通常運転)に戻っている。
「……あ、戻った」
白澤が自分の胸をペタペタと触る。
鬼灯はピタリと金棒を止め、あからさまに「チッ」と大きな舌打ちをした。
「戻りましたか。つまらないですね。せめて衆合地獄の亡者どもの見世物にしてから潰そうと思ったのですが」
「お前マジで容赦ねぇな! っていうか、今あからさまにガッカリしただろ悪鬼!!」
「気のせいです。では、納品書を置いていきますので、明日までに必ず薬を阎魔庁に届けるように」
鬼灯はいつも通りの冷淡な表情のまま、踵を返して店を出て行った。
しかし、去り際の鬼灯の足取りが、ほんの少しだけいつもより早かったのを、桃太郎は見逃さなかった。
「はぁ……死ぬかと思った。もうあの漢方を作るのはやめよう……」
いつもの姿に戻り、ソファにごろりと横たわる白澤。
「本当ですよ、もう二度とやめてくださいね」と呆れる桃太郎だったが、その日の夜、地獄の閻魔庁の補佐官室で、鬼灯が書類をめくりながら「(……いや、あの質量を金棒で叩いた時の手応えは、一度試しておくべきでしたね……)」と、珍しく仕事以外のことで一瞬だけ遠い目をしていたのは、地獄の誰も知らない秘密である。
コメント
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あら〜第10話、読み終えました!😂 もう最初から最後までツッコミどころ満載で笑いっぱなしでした。桃太郎くんの絶叫といい、鬼灯さんの金棒構える即決っぷりといい…でも一番じわったのは、去り際の足取りが早かった件です。「つまらないですね」って言いながらガッカリしてるのバレバレでしたよ、鬼灯さん🤭 白澤さまの「てへっ」で全てを持っていかれました。漢方の失敗エピソード、もっと読みたいです!