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ファッションショーの準備を終えた彼は、揺れるハイヒールの感触に気を付けながら部屋を出た。廊下を抜け、ロビーへと向かう。心臓が激しく鼓動し、緊張が彼を襲っていた。自分の姿が他の人と比べてどう映るのか、考えるだけで足がすくむ。
ロビーに到着すると、思ったよりも人が少ないことに気づいた。部屋には確かに多くの女性たちがいたはずなのに、今ここにいるのはその半数にも満たない。周囲を見渡すと、そこにはさまざまな姿があった。
一部の人たちは、見事な変身を遂げていた。髪を綺麗にセットし、ドレスをまとい、完璧なメイクを施している。その姿はもはや、元男性とは思えないほど女性らしさに溢れていた。彼女たちはお互いに笑顔を交わしながら、小声で会話をしている。その自信に満ちた様子が、彼の不安を一層強くした。
一方で、男性らしさが残ってしまっている人々もいた。髪は無造作で、メイクもほとんどしていない。ドレスやスカートを着てはいるものの、その動きはぎこちなく、立ち振る舞いにも男性的な要素が見え隠れしている。彼らの表情には不安と戸惑いがありありと見て取れた。中には、自分の格好を恥ずかしそうに隠しながら立っている人もいる。
「きっと、部屋にこもったまま出てこない人もいるんだろうな…」
彼はそう思いながら、自分の姿がどう映るのか気にしながら鏡のある壁の前に立った。鏡に映る自分の姿は、間違いなく女性の体だった。ドレスは彼の体にフィットし、メイクもそれなりに決まっている。だが、その目にはまだ自分自身の迷いと不安が残っていた。
「これでいいのか…」
彼は小声で呟いた。完璧に女性になりきることが、本当に元の体に戻るために必要なのか。それとも、もっと別の何かが求められているのか。考えれば考えるほど答えは見つからない。
ロビーの中央には、ステージが設置されていた。ファッションショーの準備が着々と進められている様子が見て取れる。照明が明るく灯され、音響設備も整っている。これから自分がここで何を求められるのか、彼はますます緊張してきた。
他の参加者たちも、同じようにステージを見つめている。完璧に女性らしく振る舞っている人たちも、ぎこちなく立っている人たちも、皆、これからの試練に不安と期待を抱いているようだった。誰もがこの状況に対する答えを探していた。
「さて、どうなるか…」
彼はもう一度深呼吸し、気持ちを落ち着かせようと努めた。今はただ、この瞬間に集中するしかない。元の体に戻るためには、これを乗り越えるしか道はないのだ。彼は決意を新たにし、ステージの前に立った。他の参加者たちと同じように、これからの挑戦に向けて心の準備を整え始めた。