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それは、ある晴れた午後のことだった。
塔の広場に並ぶ、小さな鬼の子どもたち。
ツノをぴょこんとさせて、目をきらきらさせながら座っている。
シンム「今日はね、人間の世界から“特別なゲスト”が来てくれました〜♪」
鬼の子「えっ! だれだれ!?」
鬼の子「人間の世界って、こわくないの〜?」
シンム「ぜんっぜん♪ それじゃあ……エマ、お願い^^」
エマ「はーいっ!」
エマはゆっくりと、鬼たちの前にしゃがみ込んだ。
エマ「……ねえ、みんなは“おひさま”って知ってる?」
鬼の子「しってる! 空にある、あったかいやつ!」
鬼の子「せんせいが“たいよう”ってよんでた!」
エマ「そう、それ! でもね、人間の世界では“太陽の下で遊ぶ”ってすっごくしあわせなことなんだ」
鬼の子「え、なんで? そんなのいつもあるじゃん」
エマ「うん、そう思うよね? でもね、わたし、昔は外に出ることもできなかったんだよ」
鬼たちは、小さく「……え?」とざわつく。
エマ「ずっと壁の中で、“食べられるため”に育てられてたから」
鬼の子どもたちはぽかんとしながら、シンムの方を見た。
シンムは、優しく微笑んでうなずく。
エマ「でもね、ある日、私は“自由”を手に入れたの」
「高い塀を越えて、森をぬけて、走って――」
「そして見つけたの。“空”と“草原”と“風”!」
鬼の子たち「うわぁぁ……!」
エマ「“風”がね、ふわって、背中を押してくれるの。
“もう大丈夫だよ”って……」
鬼の子たちは、静かに聞き入っていた。
そのなかの一人が、ぽつりと聞く。
鬼の子「ねぇ、“自由”って、なぁに?」
そしてエマは、少し考えて――言葉を選んで話した。
エマ「“自由”ってね、自分で“選んでいい”ってこと。
どこに行くか、なにをするか、だれを好きになるか――」
エマ「ぜんぶ、自分の“心”で決めていいってことなんだよ」
鬼の子「ぼくも、“シンムせんせい”がすき!」
鬼の子「わたしもーっ!!」
エマ「うんうん、そうやってね、いっぱい好きなものを見つけていくのが“生きる”ってことなんだよ^^」
そのあと、エマは“人間の学校”のこと、
“おいしい食べ物”のこと、“四季”や“雪”の話もたくさんした。
みんな笑って、目をきらきら輝かせて、
最後にひとりの小さな鬼が手を挙げた。
鬼の子「ねぇ、“人間の世界”って……すごく、あったかいんだね」
エマは、その言葉に、ふっと涙をこぼしそうになる。
エマ「――うん、すっごく、あったかいよ」
その様子を、塔の上から見ていたシンム。
彼はそっとつぶやいた。
シンム「……ね、見たでしょ。
もう、鬼の子どもたちは、**“何かを奪わなくても生きていける”**んだよ^^」
ノーマン「うん……シンム兄さんの作ったこの世界は、本物だ」
レイ「……やるじゃん、“先生”」
シンム「ふふっ、当然でしょ?」