テラーノベル
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ホテルの非常口の脇に、薄い鉄の扉があった。
鍵はかかっていない。
ギィィィ……
扉の先には、錆びついた鉄階段。
二人はスマホのライトを手に、そっと階段を降りていく。
降りた先に広がっていたのは──音響室と、フィルム編集室。
まるでこのホテル、映画を撮るために設計された“舞台”だったかのように。
「これ……普通のホテルじゃないよ。
多分、昔ここで何かを“記録”してた。
でも、途中で──全部、止まった」
編集室の壁には、こう書かれていた。
“記録者は、観測者に呑まれる”
「……これ、撮ってる“こっち側”の人間が、最後には“映る側”になるってこと……?」
「ハルカ、後ろ──!」
ミナミが叫んだ瞬間、編集室のガラスに映る影。
それは、“もう一台のカメラ”を構えた、自分たちソックリの誰かだった。
しかも、映像の中の“はるみな”は──笑っていない。
淡々と無表情でカメラを回し、画面に向かって、こうつぶやいていた。
「次は、あなたの番だよ」
コメント
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...え?