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文化祭の夜。
結局そのまま帰るには遅くなってしまって、
勇斗の提案で、どちらかの家に泊まる流れになった。
「……ほんとに泊まるの?」
柔太朗は玄関で靴を脱ぎながら、まだ少し疑っている。
「今さら?」
勇斗は当たり前みたいな顔で、荷物を置いた。
「だって、普通こういうの——」
「普通ってなに」
「……いや」
言い返せない。
こういうときの勇斗は、変に迷いがない。
リビングに入ると、妙に静かだった。
文化祭の喧騒が嘘みたいに遠い。
「疲れた?」
「まあ……」
ソファに座ると、すぐ隣に勇斗も来る。
わざとじゃない距離の近さ。
「今日さ」
「うん」
「ずっと見てた」
「……なにを」
「柔太朗」
即答。
「教室でも、廊下でも、裏でも」
「ストーカー?」
「彼氏」
「都合いいな」
小さく笑いながら、柔太朗は視線を逸らす。
でも、離れない。
むしろ少しだけ、肩が触れている。
「……ねえ」
「ん?」
「もうちょい離れろ」
「やだ」
即答。
「狭い」
「広い」
「意味わかんない」
言い合いながらも、動かない。
沈黙が落ちる。
テレビもついていない部屋で、二人の呼吸だけが近い。
「……柔太朗」
「なに」
名前を呼ばれただけで、少し緊張する。
勇斗は一瞬だけ黙って、それから静かに言った。
「今日、ほんとに可愛かった」
「……それ何回言うの」
「何回でも言う」
少しだけ距離が縮まる。
「他のやつに見られるの、やだった」
またそれ。
昼も夜も同じ言葉。
「でもさ」
柔太朗は少しだけ勇斗を見る。
「もう見てるじゃん、俺のこと」
その言葉に、勇斗が止まる。
「……うん」
「じゃあそれでいいでしょ」
「全然よくない」
即答。
「俺はもっと」
そこで言葉を切る。
代わりに、指先が柔太朗の手に触れる。
「全部ほしい」
静かな声。
重いのに、怖くない。
柔太朗は少しだけ黙って、それから小さく息を吐いた。
「……欲張り」
「知ってる」
そのまま、手を握られる。
昼よりも夜の方が、やけに正直になる距離。
「……寝る場所どうするの」
「一緒でしょ」
「当然みたいに言うな」
「嫌?」
少しだけ間。
柔太朗は視線を逸らして、ぽつりと言う。
「……別に、嫌じゃない」
その一言で、勇斗の目が少しだけやわらぐ。
「じゃあ決まり」
「勝手に決めるな」
「もう遅い」
そう言って、軽く頭を撫でる。
「……やめろって」
「柔太朗、こういうの弱いよね」
「うるさい」
でも振り払わない。
そのままソファに沈み込むようにして、二人で並ぶ。
少しだけ静かになった部屋。
「ねえ」
「ん」
「今日さ」
「うん」
「ずっと一緒だったじゃん」
「……うん」
「でもまだ足りない」
「…言うと思った」
柔太朗は小さく笑う。
勇斗はその横顔を見て、少しだけ満足そうに息を吐いた。
「じゃあ明日も一緒」
「……当たり前みたいに言うな」
「当たり前にする」
「ほんと強引」
「今さら?」
少し沈黙。
それから柔太朗は、ほんの少しだけ寄りかかる。
「……まあ、いいけど」
その一言に、勇斗は何も言わない。
ただ、手をぎゅっと握り直した。
夜は静かで、
距離だけが、やけに近かった。
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コメント
5件

2人の関係がめっちゃ好みです✨ いつも投稿ありがとうございます!
またまた素敵な作品😭😭 これからも頑張ってください♪