俺は昔、一時期日記を書いてあった。
何かあっても、自らが存在していたことを証明するために。今になったら、無意味だと思う。死んだら俺がいた痕跡は全て燃やされるのだから。
でもそんな日記もどこへ置いて行っただろうか。凪ちゃんに誘われて、裏から抜け出した時、俺はどっかの路地裏に捨てた気がする。
とある任務の日。路地裏を歩いていると、とある一つの冊子があった。
とても古臭く、ところどころ汚れていたが俺はそんな冊子にとても興味が湧き、開いてみた。
記入者「 」 日時「 」
今日も仕事だった。今日は初めてバディと仕事を行った。
バディの顔も知らないがとても話しかけてくるうざい諜報員だった。俺と年が一つしか違わないらしい。
でも仕事の腕は確かだった。
あいつがいたから特別うまく行ったわけではないが、いつもよりかは高難易度の仕事だったため、不安な気持ちもないとは言えない状態だったが、あいつがいたからか、俺が上達したからか。仕事は問題なく終えられた。
しかし問題はそこからだった。
仕事が終わっても話しかけてくるのだ。
あいつとは仕事だけの関係。仕事さえ終われば会話はもちろん声すらも聞きたくないのだ。
うざい。うるさい。
それ以上に気に食わないのが、裏の人間か?と疑うほどに明るかった。
感情表現がとても豊かだった。
うざい。と思うと同時に羨ましい。と思わなかったのか。と問われればいいえ。と答えたら嘘にはなる。
しかし、この社会に感情表現などいらない。
感情はあっても良いだろう。しかしそれを表に出すとならば別だろう。
だからいつの間にか表に感情を出さなくなった俺は感情が崩壊しているのだと思われる。
そう綴られた文章には見覚えがあった。
見たくない。という本坊とは裏腹に俺の手はページをめくっていた。
先ほど見た日記以外に長文で綴られているものは一つもなく、ただただ「天気が良かった」などといったことが書かれてあった。
数十ページめくっていたら長文の日記がまたあった。
気になって俺は見てみることにした。
記入者「 」日時「 」
今日は仕事で寄宿学校へと入学する。
この仕事は長期のため一時的な入学ではなく、継続的な入学となった。
その入学には俺のバディ「四季凪アキラ」という男も同様であった。
四季凪アキラ
四季凪家の諜報員。
幼い頃からバディを組んでいたのも相まってこの仕事は決められた。
仕事の腕はとてもよく、仕事の出来は俺でも評価している。
しかし、仕事に関係のない会話をしてきたりなどうざいところもあり、単純に評価を決めるのは難しい男だ。
今後の仕事について考えたらこいつともある程度の信頼関係を築いておかねばならない。どうしようか。
できれば誰とも関わらずに仕事を終わらせたいが、それが難しい仕事であるが故バディとの協力は避けては通れぬ道。
仕方がない。仕事を完璧に終わらすためだ。と自分に言い聞かせ、今日までも何度も何度も情報の共有を行い、なるべく信頼関係を築けるように動いてきた。
そして、厄介なのがもう一つ。その学校に大物がいるのだ。
風楽奏斗
マフィアの嫡男である男。
渡会雲雀
怪盗一家の跡取りである男。
どちらとも裏に関係する男であり、どちらとも権力がある男。仕事に関係しているのかもしれない。
こいつら二人は要注意だ。適度な関係性を保つのが最善策だと思われる。
懐かしいあの頃。
そのことが鮮明に思い出せる。
それからは日記の内容はほぼないに等しかった。
しかし最後のページだけ書いてることが少し違ったのだ。
記入者「美園聡」日時「 」
今日はVTAに入学?する。
入学というか初顔合わせ。
俺がこの日を迎えられたのはあいつらのおかげ。
流石に裏から抜け出してまもないから一応偽名使っておく。
楽しみだな。初めてだけどたくさん話せたらいいな。
みんなとたくさんの人に笑顔を与えたい。俺があいつらに与えられたように。
顔合わせ終了。
何となく思ったこと書き上げとこうかな。
天ヶ瀬むゆ
何だろう。雰囲気がある人、、、だった。
海妹四葉
明るい人でした。はい。
先斗寧
初っ端遅刻ってやばいな、、。遅れてきた人。
鏑木ろこ
なんか色々と語れる人。だった。
これくらいかな。俺印象描くの苦手。
これからたくさん会話するんだろうな。楽しみでしかない。
最後はこの文章で終わっていた。
俺の人生の節目にはやっぱり長文が綴られてあった。
この日記を持って帰るか悩んだが、置いて帰ることにした。
今の俺には痕跡なんて困るほどあるんだから。
死んだって、あいつらが繋いでくれるから。
痕跡なんて持って帰る必要性がないから。
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