色づく部屋

2人の付き合いが始まった。誰にも言わない秘密、渡辺が強く願った。皆んなが受け入れてくれるか分からない。怖いからと言う。

目黒ー大丈夫だと思うよ？

渡辺ーだめ、絶対だめ。

目黒ー康二辺りがヤバいかなぁ。

渡辺ー何それ？

目黒ーしょっぴーだ〜い好きって言ってるじゃない。

渡辺ーあれなぁ、ちょっと距離感がバグってる。

目黒ー抱きついてくるの、やめてもらっていい？

渡辺ー急に、そんな態度取れないし。

目黒ーんもう！俺、ヤキモチ妬いてるの！

渡辺ーお前が康二に？珍しいの見た。ただ、引っ付いてるだけだし。

目黒ーそれが嫌なの。

渡辺は、くすぐったい気持ちになる。目黒がヤキモチ妬くなんて。

自分もいつか、ラウールにヤキモチ妬く日が来るかもしれないなぁと思っている。

頻繁に会うことはないが、時間を作り会いに行く。

渡辺ー晩ご飯は何？

目黒ー生姜焼きと、味噌汁とサラダ。

渡辺ー食べる。

目黒ー次に来るときは焼肉ね。

渡辺ーう〜、ドラマの撮影でなかなか来れない。

目黒ーまた、先生？

渡辺ー数学のな。

目黒ー難しそう。

渡辺ー放送の頃には、撮り終わってると思うけど。

目黒ー楽しみにしとく。

渡辺ーん。

晩ご飯を食べて、ソファでのんびりコーヒーを飲む。渡辺は目黒にもたれている。座面の上に足を乗せて、目黒にもたれ、コーヒーを飲むと、時々、目黒が頬にキスをする。最近では、慣れたのだろう、過剰な反応はしない。

黙っているときもあるが、気詰まりしない。いて当たり前になってきた。

そこへ、電話がかかってきた。表示を見ると「ラウール」、渡辺は帰ると言う。ちょっと待ってと言う。

目黒ーはい。

ラウー出るの遅ーーい！

目黒ー今、友達が来てる。

ラウー俺の知らない人？

目黒ーん、だから・・

ラウーもうマンションの前に来たよ。

目黒ーそこで、ちょっと待って？

渡辺はもう玄関にいる。非常階段を使って1階分下りてエレベーターに乗る。

目黒が電話する前にキスをした。

渡辺が帰って、目黒はラウールに来ていいと連絡してカップを洗い、渡辺の痕跡を消した。

ラウーどんな友達？

目黒ー知らなくていい。

ラウーやだ、知りたい。

目黒ー映画で知り合った人。

ラウーふ〜ん。

目黒の携帯に、渡辺から、LINEがあった。無事に帰ってきたと。

目黒は、渡辺に申し訳なく思った。

逃げるように、こっそりと帰って行った人。ラウールには、もっと早く、連絡してと言う。

その日の夜遅くに渡辺に目黒が電話してきた。

渡辺ーはい。

目黒ーラウのこと、ごめんね。

渡辺ー帰ったのか？

目黒ー今やっと

渡辺ーこれからは、うちに来る？

目黒ー何もないじゃん。

渡辺ー好きに増やしていい。

目黒ー俺の部屋みたいにしていいの？

渡辺ーん、目黒の家は居心地いいから。

目黒ーじゃあ、ちょっとずつ増やしていく。

渡辺ーふふふ、楽しみ。

練習日。

渡辺ーはい。

目黒ー何？

渡辺ー俺の家のスペアキー。 仕事が早く終わったりしたら、買い物して、うちに置いとけばいいかなと思って。

目黒ーいいの？

渡辺ーん。早く仕舞え。

ラウーめめ、しょっぴー時間だよ。

渡辺の何もなかった部屋が色づき始めた。目黒は時間を見つけ買い物に行く。自分の居心地のいい部屋を作っていく。