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sm視点
kr 「〜〜で、そこにあるのは自由に使って良いから。風呂の使い方は…、まぁ一緒だし分かるよな?」
脱衣所に案内されひと通りの説明をしてくれているが、ドクドクとやけに大きく感じる心音に先輩の声が掻き消されていく。
頭に響くそれは上手く思考を回せなくさせる。
kr 「…スマイル?聞いてる?」
sm 「…ぁ、すいません、。」
kr 「w使い方、分かる?教えてやろうか?」
sm 「いや、一緒なんで大丈夫です。」
同じマンションで隣の家なのだから、大した違いなんてありはしない。
先輩から、こいつ…!なんて言葉が小声で聞こえた気がするが、説明の手間を省けるように丁重に断る事にする。
kr 「…まぁ、こんなもんか。着替えとかは後で持ってきとくから、ゆっくり入っておいで。」
sm 「…はい。ありがとう、ございます。」
kr 「ん。」
そう言って軽く俺の頭をぽんと撫でると、脱衣所を出て行った。
先輩に触れられた頭にはまだ、感覚が残っていて。
無意識に自分の手が、先輩の温もりをなぞるように動く。
あの人はよく俺の頭を撫でる、気がする。
この歳になって頭を撫でられる事なんて無いから。
そんなことを考えていれば、ふと鏡で見えた自分の顔が見たこともないくらい赤くなっていた。
それにハッとして急いで服を脱ぎ、風呂に入る。
頭や体を洗い、先輩が疲れただろうからと張ってくれた湯船に浸かる。
確かに、色々あった今日。
ゆっくりお湯に浸からせてもらえるのは有り難い。温かいお湯が、するりと疲れを落としてくれてるような感覚に思わず大きく息を吐く。
sm 「はぁ……、」
だが正直言って、俺の頭はそれどころではなかった。
ーーなんてことを言ってしまったんだ、、、!
『 忘れさせて欲しい 』
確かに自らの口から飛び出した言葉。
先輩が、優しく抱きしめてくれるから。
優しい言葉を、かけてくれるから。
湯船の中、小さく膝を抱え俯く。
ぎゅっと目を閉じると先輩がしてくれた事を思い出してしまう。
それだけで顔が熱く火照る感覚がする。
それでも、自分も不思議に思うくらい後悔はしていなかった。
先輩に俺で良いのかと聞かれた時、この人がいいと直感的に感じてしまったから。
むしろそのセリフは、俺がするべきものなのではとも思えてくる。
ぐるぐる考えていても仕方ない。
暫く同じ体勢で思考を巡らせていたが、そろそろふわふわして気がする。これ以上浸かればのぼせてしまう。それに、ゆっくりしてきてと言われたからってそれに甘えて、本当に長風呂しすぎるのは気が引ける。
さっさと上がってしまおう、そう思いお風呂場を後にする。
sm 「…ぁの、上がりました。」
風呂から上がり先輩が居るであろうリビングへ向かった。部屋に入るとさっきまで座っていたソファーで、ゆったりと座りながらスマホを触っている先輩がこちらに気づく。スマホから目を離すと優しく微笑みながら話しかけてくれる。
kr 「ぉ。おかえり、温まってきた?」
sm 「あ、はい。お先ありがとうございます。」
kr 「いいよいいよ。…んー、やっぱ俺の服大きかったか。ちょい着心地悪いかもだけど、ごめんな?」
じっと俺を見てそう言った先輩。
確かにかなりオーバーサイズのスウェット達。首元は大きく開き、ズボンなんかは手で押さえないと今にもずり落ちてしまいそうだった。
悪気はないと分かっていても、体が小さいと言われてるようで少しムッとしてしまう。
大丈夫ですと伝えれば、拗ねるなよと笑われる。
sm 「…別に拗ねてないです、」
kr 「はいはいwそれじゃ、俺も入ってこようかな。…すぐ上がるから、待ってて。」
sm 「ぁ…、分かり..ました。」
するりと横を通りすぎ、リビングを後にする先輩。
なんて事ない会話で少し緩んだ気持ちが、再び緊張にぎこちなく固まる。
先輩が出て行ってしんと静まり返った部屋で1人。長くも、短くも感じる時間をただ、気持ちを落ち着けるために使う事にする。