途中から私、観察者がヘロン目線で経験と観察をしていたので、割と短く感じられたのでは無かろうか?
んだが、実際はオドオドしっ放しのヘロンがモゴモゴ話していたせいで、聞いていた魚もカエルもトンボ達も、退屈が齎(もたら)す、極大の欠伸(あくび)を何度もせざる得ない羽目に陥っていたのである。
どれほど拙(つたな)かったのか、それは今、『美しヶ池』の周囲がトップリと暮れ捲り、ホボホボ真っ暗、暗闇である事をお伝えすれば判って頂けるのでは無いだろうか?
兎も角、ヘロンは飽き捲っている面々を前に、必死に搾り出すかの様な言葉を発するのであった。
「そうして私と二羽の友はこの池を追われ、それ以降戻る許可は頂けなかったのであります…… グスゥッ! グスグスッ!」
彼の左右に寄り添った、ダイサギ(大き目)とアマサギ(大き目)がグスグス、グスグスッと時に咳き込みながらも必死に鼻を啜(すす)っている。
そう言えばこの二羽は、トンボ達が来襲した際に先頭に立って文句を言っていた二羽だったかも知れない…… そうか、苦難を共に乗り越えた戦友だったのかな?
誰一人言葉を発しない、まあそれもそうだろうな…… だって重いもん…… 救いが無いじゃんっ! って話であった……
特段無神経なキャラ設定でも無いのにナッキが言葉を発する。
「それで? その後どうなったの? ダイサギ君とアマサギ君は治ったのぉ? ペジオさんの苦悩は? 死んじゃった皆のお葬式はやったんだよね? 早く早くぅ~! 早く教えておくれよっ、ヘロンっ!」
「えっ?」
すっ呆けた声を上げたヘロンの左右からダイサギ(やけに大きい)とアマサギ(やけに大きい)副官達が答えた。
「はい、私とアマサギ、この通り、助かった、無事、魔獣へ、進化した、でも、我等が王、ヘロン様、まだ、あの時、囚われたまま…… です」
「ダイサギ、言う事、正しい、のです、ペジオ様と仲間達、私たちの、友達たち、えっと、て、手厚く葬った、くれました…… その後、わ、我等の子供たち、凄く増えた、のです…… 美しく立派な、あ、あーと、『メダカの王様』、な、ナッキ様…… 我等の王、へ、ヘロン、様に、ど、ど、どうか、新たな、ご、ご命令をっ! お、お、お願いしますぅ、う、うっ! ナッキ王様ぁぁぁっ!」
なるほど…… 微妙に拙い言葉を聞けば、彼(か)の日を乗り越えた二羽も未だ魔獣への途中、そう言った感じの生物だと感じられる。
ある程度の関係性は理解出来た、そう感じたナッキはメソメソしているヘロンの大きな体を見つめてやや厳し目の声を発した。
「ねえ、ヘロン! 君たちの過去に何が有ったかは良く判ったつもりだけどさぁ、それでも君が何で僕に従う事を決意したのか? それで何を欲しているのかってのがね、イマイチはっきりしないんだけどぉ? 何でさ? 何で『メダカの王国』に入ろうと思ったのさっっ? まずそれを教えておくれよぉっ!」
「あっ、ええとぉ、それはですね、私は元々の池の主ペジオ様から追放されたわけなんですよね、ここまでは分かって頂けますよね? で、今のこの池は全く別物の『メダカの王国』でしょう? そこに君臨されているのがナッキ様、『メダカの王様』ナッキ王なんですよね? そう言う事ですよっ! 為政者(いせいしゃ)が変わればそれはもう、全く違う世界なわけでしょう? そう言う訳で戻れたら良いかな? そんな感じで忠誠をお誓いした、そう言う訳でしてね、げへへ」
ナッキは心底げんなりした表情を浮かべてヘロンに言う。
「ああ、そういう感じなんだねヘロン…… 今はっきり判ったよ…… ペジオさんが落胆した意味がね……」
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