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レミリアは、フォークに乗せた黄金の一片を、ゆっくりと口に運んだ。 その瞬間、食堂に流れていた不穏な空気は一変した。
「…………っ!」
彼女の瞳が大きく見開かれ、紅いグラスを握る手がわずかに震える。 噛みしめるたびに、溢れ出すのは暴力的なまでの旨味。卵の優しい甘さと、白だしの深く、鋭い塩気が、五百年を生きてきた彼女の味覚を真っ向から破壊した。
「(……なに、これ。お肉じゃないのに、血液よりも力強く、太陽よりも温かい味がする……)」
レミリアは無言で、最後の一切れまでを飲み込んだ。 そして、フォークをゆっくりと皿に置くと、紅い瞳でじっと俺を射抜いた。
「……アンタ。この料理、今夜私に教えなさい」
「えっ……今夜?」 俺は思わず聞き返した。 隣でだし巻きを横取りしようとしていた魔理沙も、「おいおい、レミリアが人間に料理を教わるなんて前代未聞だぜ」と目を丸くしている。
「そうよ。この『だし』の秘密も、その鍋の振り方も。全部、私の体に刻み込みなさい」
レミリアは立ち上がり、俺の目の前まで歩み寄ると、冷たい指先で俺の胸元を指した。
「霊夢たちは適当な部屋で寝かせればいいわ。アンタは、私が満足するまで厨房から出さないから。……いいわね?」
「ちょっと待ちなさいよレミリア! こいつは私の神社の……一応、居候なんだからね!」 霊夢が慌てて割って入るが、レミリアは余裕の笑みでそれを一蹴した。
「あら、異変を解決してほしいんでしょ? 私の気が済めば、この赤い霧を晴らしてあげてもいいわよ。……この男の『授業料』次第でね」
「……うっ。……分かったわよ。アンタ、死なない程度に付き合ってあげなさい」 霊夢が呆れたようにため息をつき、俺の背中をポンと叩いた。
こうして、俺の「紅魔郷・完結編」は、弾幕ごっこではなく、吸血鬼の主との深夜のマンツーマン料理修行という予想外の展開へと突入した。