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家へ入り、少年に適当に座らせる。
少年は、肩身が狭そうに体を小さくさせていた。
自分が持ってきていたお茶を少年に出す。
すると少年は小さく頭を下げてお茶を飲んだ。
「名前なんて言うの?何歳?」
『京本大我。14歳。』
「俺、高地優吾。年齢は、言わなくても良いよね、」
『なんでよ。言って。』
「やだよ、てか暑くない?今めっちゃ夏だけど」
『長袖しかない。てか、この服しか持ってない。家も無いし、親もいない。』
色々な会話をしていると、強い違和感が何度か俺を襲った。
この服しか持ってない…?
14歳なのに、家も親もいないなんて…
詳しく聞きたくなってしまったが、深く聞くと少年はまた海の中に入っていってしまう。
そう思った。
「俺も親いないんだ。仲間だね。」
そう書いても少年に反応はない。
感情も、消えてしまったのではないか、
『そうなんだ。僕と一緒』
そう、少年は書いた。
「まあ仲良くしようよ。大我、って呼ぶね。」
『大我って呼んでくれるんだ。ありがとう』
「ありがとうって、呼んでもらったことあるだろ?」
『ないよ。名前呼んでもらった事ない。あだ名でも。だから 初めて。嬉しいよ』
親にも、呼んでもらった事がないなんて…
とんでもない親。そう一瞬思ってしまった。
でも…俺も…
『俺は優吾って呼ぶよ。』
そう大我は書いた。
俺は思わず微笑んだ。
同級生や今まで知り合ってきた人にはずっと、“高地”と呼ばれていた。
優吾。そう呼ばれるのは、なんだかこそばゆかった。
「とりあえずこの家掃除するか。」
ささっとそう書き、動き出す。
大我も渋々立ち上がった。
『てか俺、一応話せるんだよ。』
え…
今確かに、あの少年の声が聞こえた。
「まじで?」
俺は目を大きく開きながらそう聞いた。
『耳が…聞こえにくいだけで。一応』
「そうなんだ」
『自分の声はあんま聞こえないからすごい気持ち悪くなるんだけどね。』
大我は少しずつ口数は増えていったが、顔が緩んだり、険しくなったりなどの変化は一向に訪れなかった。