「嗚呼、この世のなんたる理不尽なことよ…
天にまします神様…よ……どうか我らの命を貴方様に預けさせて…頂きたい。もしよろし…いのでしたら……今すぐに、我らを天へお運びください…!」
寒い寒い雪山で彼女はこう叫んだ。手元には赤子が抱えられている。遭難にしては不自然だ、想像するならば赤子が原因か、それとも母親が原因か、どちらかに何か欠点があり棄てられたのであろう。
「なんと哀れな。」
「あ、か、ご、そ、だ、て、る、?」
「そんなこと、我々には難しいことだろう」
こそこそと天から話し声がしている。
神様だ。
本物だ。この世界では神は見えるのであった。
彼女は願いが叶いそうだ。
神様の1人が指を指す。
「おや、アヅミ。よく気づいたね。あの子は普通の子じゃないね。角があるね。きっと我らと同じだろうね。」
ノトコが赤子を見つめている。
「そ、ん、な、こ、と、は、な、い、だ、ろ、う。」
「!!……(首を横に振る)」
アヅミがクエビの発言を否定した。
神様の勘なのかは知らないが、アヅミは赤子を我々と同じ”神の1人”だと思っているのだろう。
「まぁ、一旦見てみようか。」
ノトコが赤子の方へ手を伸ばす。赤子はノトコの指先程の大きさしかない。神々はとても大きい。
カプリ
「おや、活きの良いこと。」
ちうちうと赤子はノトコの指を吸っている。
「育ててみる価値はありそうだよ、クエビ。アヅミはなんだかノリノリだし。もし本当に神の子であればいつか神格化するであろう。ならば、こんな雪山で死ぬるよりかはマシでしょう。」
「わ、か、っ、た。」
「!!」
アヅミが赤子をつまんで手のひらに乗せた。とても小さく、アヅミの手の上でころころと笑っている。
「この子はどんな子に育つのでしょうか。楽しみですね。」
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