──────ノイズ視点──────
さてさて、なかなかに厄介な鬼がいたものだ。そう思いながらその鬼と距離をとる。しかし、鬼は距離をとることを許さない。勢いよく地を蹴り飛ばし、ギュンッと風の音を鳴らして一瞬で俺の間合いにまでつめる。単純な動きだった。しかし、単純な動きでも一瞬でここまで距離を縮めることが出来るのは鬼ならではの力と、足にエネルギー消費を必要としない能力。素晴らしい。自身の能力を理解し、己の肉体をきちんと把握しての戦略。賞賛に値する。…なんでこんなに俺は褒めているんだ?
そんな賞賛の感情と、それに対して冷えきった反応が脳をめぐる。思考の邪魔だ。と、言っても既に決着は着いているのだが。
一瞬で距離を詰めたぜんさんの腕が、腰が、上半身が。真っ赤な花弁を散らしながらほとり、と重力に従って落ちる。一瞬目を見開き、何が起きたのか状況整理しようとしていたがその一瞬が命取りである。すぐさまそいつの体を上から下にかけて蹴り、そして、首筋に剣を当てる。ギリっと力を込めれば、皮が僅かに切れる。また、赤い花を咲かせて。そしてそのまま、剣を押してやれば骨を砕き、血の繊維を切る。首がコロコロと地面の上を回転し、生首となる。醜く、汚くなった髪を見て、汚いな、という感想しか思い浮かばなかった。
「ん、降伏してくれ、ないですか?」
危うく敬語を外しかけたが、そのハプニングは避けることが出来た。多少言葉がおかしくはなったが許容範囲だろう。
「…ハ、ハッ…まさかァ…まける、とはァ…」
「思ってませんけどねェ!!」
その瞬間、俺の背後から拳を突き出した鬼を見る。今捉えているのと瓜二つの。…その程度で脳が動かなくなると思ったのか。なめやがって。そう思いながら俺は剣を今度は心臓に突き刺してやる。
「脳筋すぎるとは思ってましたけど…まさか、騙されていたなんて。驚きました。」
「能力を勝手に勘違いしたのはァテメェだろうがよォ?そう!お察しのとおりィ?あたしは【分身】する能力だァぜェ?」
そう言いながら歪んだ笑みを顔面に張りつけながら歪な笑い声をあげる。勘違いした?舐めてやがる。お前の策にわざわざの乗ってあげたんだ、俺は。まあ、負けるところまでは乗ってやれないが。
「えぇ、完全に騙されましたよ」
そう、心にも無い言葉を吐いてれば満足そうに目を三日月形に歪める。敵の嘘を簡単に信じるところは鬼らしい。まあ、元々感情が読みにくい表情をしている自覚はあるが。
こいつの本当の能力は【分身】。エネルギーの消費がゼロ、ということは感情によるエネルギーもないため、こんなにも感情豊か、悪く言えば下品にはならないだろう。何故ならば消費の仕方がわからないのだから。
分身ならば無茶な動きをしていたのにも納得できる。
「まァ、能力がバレちまったならばァさっさとやるしかねェなァ!?」
そう言って、一瞬で俺の視界には数十人程度の鬼が現れる。そして、全員が同じ姿形をしている。気持ち悪い。そんなことを思いながら剣を構える。
鬼は決して卑怯をしない。嘘をつかない。正々堂々とした戦いを望んでいる。戦いを楽しむ。武士道精神に溢れている。そして、負けず嫌い。
ならば、この場に本体が居ないことはない。何故ならば自分がいないのに勝ったって面白くない。また、自分が戦えないのはつまらない。そして、必ずトドメは自身が刺したがる。分身が勝ったのではなく、自身が勝ったと誇れるため。そして、この分身たちは過度な攻撃はしない。そんな、多人数で1人をいじめるのは正々堂々とはかけ離れている。いわば、はったりの脅しでしかない。
そう、つまり。今、攻撃を繰り出そうとしている左斜め前のやつが本物なのだ。
ザシュッ
そんな音ともにそいつの首はコトンと落ちる。落ちた瞬間、周りに十数人もいた分身は霧のように消えていく。
「…なんでわかったんですか?自信あったんですけど…」
先程までの鬼はあた方もなくなり、クマ耳の生えたぜんさんが姿を現す。どうやら重い一撃を与えれば本人に戻るらしい。俺は周囲の警戒を怠らない。常に光を辺りに発生させ、影が出来れば分かるようにしている。光は透明なのだから見えるわけもない。
「…鬼は正々堂々とした戦いを望むので。」
ぜんさんの敗因は一言で終わる。鬼の戦略すぎた。そんな簡単に読まれる策にしてしまったのはひとえに、あの鬼の性格が反映されたからだろう。明らかに嘘が嫌い、みたいなオーラを身にまとっていたし。そんなことを思いながら、俺はふと、思ったことを言ってみる。
「ぜんさん長身の女性がタイプなんですね。気の強そうな。」
俺が冗談交じりにそういえばぜんさんは顔を下にして俯く。…おっと?俺はニヤリ、と表情をゆがめてぜんさんの顔を覗き見る。耳まで顔を真っ赤にしたぜんさんがそこにいた。
「もしかして、当たりですか?」
「イヤ、ソンナコトナイデスヨ」
すっごい片言だ。そこまで嘘が下手なのか、はたまたこういう系の質問には弱いのか。…俺は意識せずぜんさんから勝利と弱みをもぎ取ることとなった。
ここで切ります!!ちなみにですが最後の気の強そうな長身の女性が好き、というのは捏造です。勘違いないようにお気をつけください。段々と戦闘シーンをうまくかけたり、また、戦況がコロコロと変わる臨場感が伝われば嬉しいです。最近細部に対する追求が怠っている部分が目立ってきたな、と自分でも思うのでそこは気をつけます。
それと、イラストコーナー?みたいなの作ろうかなーって思ってます。落書きでもなんでも。興味があったら見てみてください。…作るかは不明ですけど。
それでは!おつはる!
コメント
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初コメ失礼します…!!ここまで一気読みさせていただきました…!!やはり仲春さんのお話すごいです。 前の垢でも読ませていただいてたのですが、もう語彙力なくなるくらい凄いです!!そして、質問があるのですが、このお話をベースにしたストーリーを描いてもいいでしょうか?もちろん全て一緒ではないのですが、もしかしたら若干似るかもしれません。不快に思ったら申し訳ないです。
ぜんさん…色々どんまい