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「んでね?今度ファンタジア フィナーレ、大台の20が出るんよ」
ワクデイジーの席に座り、正面には鹿島がいてゲームについて熱弁している。
「おぉ」
「表記めっちゃカッコいいんよ。20ってXXだからね。
ファンタジア フィナーレXXドドーンですよ」
「たしかに。XXっていいな」
「いやぁ〜ストーリーがどうなるかですよ。大台の20だからね。
もしかしたら1とか10について触れる場面が多くあるかもって
ファンの間では話題になってるらしい」
「鹿島はシリーズは全部やってないんだっけ」
「そうそう。やりたいんだけどね」
「実況撮りゃええやん」
「まぁそれも考えたよ?やりたいゲームで実況撮れば一石二鳥だからね?
でもシリーズちょっとかじっちゃってるから」
「でもストーリー繋がってないんでしょ?」
「まぁね?でも視聴者目線からしたら、たとえば1やったら2見たいもんじゃん?」
「まぁたしかに」
「たとえば10やって、オレが11やってるからって11飛ばして12やるのもあれじゃん」
「たしかになぁ〜」
「だから実況外でやりたいんだけど、ちょっとねぇ〜時間が足りない」
「めっちゃ長いんだっけ?」
「シリーズによるな。…あ、今からやりに行くか」
「どこに」
「どこにって家よ」
「鹿島ん家?」
「それ以外なにがあんのよ」
「いやまあな?いやぁ〜鹿島ん家行くのひさびさだなぁ〜」
鹿島が立ち上がり、僕も立ち上がる。鹿島がトイレに向かう。僕もその後をついていく。
鹿島がトイレの扉を開ける。
「どうぞ」
鹿島がトイレの中に手を向ける。
「どうも?」
疑問を抱きながらもなぜか暗いトイレに入る。鹿島も中に入り扉を閉める。
パチンッっと恐らくスイッチを押す音が背後から聞こえ振り返る。
電気がつき明るくなった。もう一度振り返る。するとそこは見覚えのある鹿島の部屋だった。
「森もっさんどこまでいったー?」
鹿島が変なことを言う。振り返り背後の鹿島に
「何言ってんの?」
と問う。
「なにって、今森もっさんがファンタジア フィナーレXXやってるから」
「は?」
ともう一度振り返る。するとさっきまでいなかったはずの森本さんが
鹿島の部屋の床に座りながら、パスタイム スポット 4のコントローラーを持ち
カチカチとボタンを押したり、スティックを傾けたりしていた。
「あぁ〜今ね、飛空挺降りたとこ」
「ほお?やっぱ10の要素あるんだね」
「ね」
「そんな仲良くなったの?」
「そりゃもうね」
「「ねぇ?」」
鹿島と森本さんが顔を見合わせそう言う。
「そらよろしおすなぁ〜」
「暑ノ井くんもサキちゃんと付き合ってんでしょ?」
森本さんの予想だにしない言葉に面食らう。
「は?いや、付き合ってない…ですけど」
「でも好きなんでしょ?」
「好きなんでしょ?」
森本さんの言ったことを鹿島が繰り返す。
「それは…」
先を言おうか言わまいか迷っていると風が吹いていることに気づいた。
ふと周りを見渡す。白い雲が美しい空。鹿島の部屋が空に飛んでいた。
「いくぜバンジー!」
「は?」
足元を見ると片足にロープが結ばれていた。
「いや、ファンタジア フィナーレXと言ったら、あの飛空挺でしょ。そこからピョーンっと」
「は?は?は?」
「んじゃ行くよー?」
「オッケー」
「いやオッケーじゃない。なに?」
鹿島と森本さんがカウントダウンを始める。
「「3!2!」」
「待って!待って!待って!」
「「1!」」
「待って!!」
体が前に傾き、雲の下に地上が見える。右側に鹿島、左側に森本さん。
3人で手を繋ぎながら体がどんどん傾いていく。ふっっと体が浮く感覚。
ドドッ。背中に鈍い衝撃が走る。はっっと目を開く。
なにが起きたか把握できなかった。心拍数が早い。
「ん?」
鼻から深呼吸をしながら、落ち着きを取り戻しつつ、辺りを見回す。
見慣れた景色。自分の部屋。夢か。と安心し、床で脱力する。
ベッドを見上げ、ベッドから落ちたのか。と思う。
立ち上がり、ベッドに座る。冷や汗をかいたのか、背中が少し冷たい。
「ふぅ〜」
息吐く。めちゃくちゃ変な夢を見た。しかし詳細を思い出せなかった。
夢を思い出しているとノックもなく扉が開く。
「わ、珍しく起きてる」
「ついさっき起きた」
「ご飯だよー」
「はいよ」
妹が部屋を出ていく。枕元で充電されているスマホのホームボタンを押す。
7時3分。朝早い。時間を確認してからなぜか
「あぁ〜…あ」
あくびが出る。通知はなく、スマホを置いて部屋を出る。
そこからはいつも通り。歯を磨き、顔を洗い家族で朝ご飯を食べた。
妹が学校に行くのを見送り、父が会社に行くのも見送った。
いつも通り1限をサボり、母と2人でお昼ご飯を食べた。
前日に妃馬さんと約束したため午後から大学に行く。
3限は妃馬さんと同じ講義ではないが、せっかくなので出席日数を稼ぐために出向いた。
3限の講義が行われる講義室に入る。すぐに目についた。綺麗な白く長い髪。
知り合いがいるというだけで少し安心する。口元が綻ぶ。
後ろの席に座りサティスフィーをする匠に近づく。
「よっ」
匠はイヤホンをしながらゲームをしていたため、声と共に肩に手を置く。
匠が見上げる。片耳のイヤホンを外す。
「おぉ」
僕もイヤホンを外しながら1席空けて匠の隣のイスに座る。
「なにしてんの?」
バッグを置き、バッグの中からサティスフィーを取り出しながら
匠のほうを見ずに匠に尋ねる。
「あつまれせいぶつの森〜」
「あれ?アリオギャラクシーは?」
「クリア〜…したよ?」
「完クリではないな?」
僕もサティスフィーの電源を入れ、あつまれせいぶつの森を起動する。
「そうなんよ…。どうしてもクリアできない面があって
何回も挑戦してもダメだったから諦めた」
「アリオギャラクシーって割と鬼畜よな」
「そうそう。アリオギャラクシーって全年齢対象なのに難易度は大人向けよな」
「まぁあの…なに?AとかZってあれだから」
「グロくないかとかでしょ?」
「そうそう。エロい要素があるかないか〜とか残酷な描写はあるかないか〜とかだから」
「でもアリオギャラクシー小学生がやったら、たぶんサティスフィー放り投げるよ」
「わかるわかる」
そんな話をしていると講師の方が入ってきて講義が始まった。そこからは小声で話をする。
「怜夢んとこの株価どうなってる?」
「あぁ最近確認してないわ。ちょ待って」
商店に入り株価を確認する。
「113」
「あぁ〜少ししか上ってないなぁ〜…」
「いくらで買ったの?」
「94」
「あぁ〜びみょーだな」
「そうなんよ。500とかなるときあるやん」
「あるね」
「あんとき売るのが理想だよなぁ〜」
「そりゃそうだろ」
僕もあつまれせいぶつの森の日課をしながら話す。
「ん?」
引っ掛かるところがあり、匠のほうを向く。
「あれ?匠せいぶつの森でも大金持ちじゃなかったっけ?」
匠と一緒に買って、匠とよくオンラインで一緒に遊んでいた。
「まぁね。ATMに5000万はあるね」
「じゃ、いらねぇーじゃねぇか」
「まぁね?でもこっちはこっちである程度持っときたいんよ」
「え?あぁ別なのか。島」
「そそ。また再熱しちゃってね。で違う端末で1から始めた」
「それでね?なるほどね?」
「怜夢んとこラタンの家具どんくらいある?」
「ラタン?どうだろ」
ネットショッピングのサイトを開き、確認する。
「こんくらい」
匠に画面を見せる。
「おぉ〜、ちょ注文していい?金払うから」
「いいよ」
匠が僕のサティスフィーをいじる。
そんなことを講義中にしていたら、あっという間に3限の講義が終わる時間に近づいていた。
「もうそろ終わりじゃん」
「おぉ、マジじゃん」
「匠次もあるだろ?」
「あるよ」
講義名を確認すると同じだった。
「じゃ、次も同じか」
「だな」
「オレ日課終わっちゃったしなぁ〜。なにしよ」
「アリオギャラクシーやる?」
「お!いいの?」
「マジで金が必要になったときのためにもう1台持ってきてるから」
「あ、そっちに入ってんのね」
「そーゆーこと」
ろくに講義も聞かずに
「えぇ〜時間なのでここで終わります。お疲れ様でした〜」
と講師の方が講義を終えた。講義室にいた生徒がぞろぞろと講義室を出ていく。
「ちょっとアリオ触らせて?」
自分のサティスフィーの電源を切る。
「おん」
匠がトートバッグの中から、もう1台サティスフィーを取り出し、僕に手渡す。
「サンキュー」
電源を入れると匠のプレイしていたままだった。
「匠のデータでちょっと遊んでいい?」
「別にいーよ」
あまりステージのネタバレにならないように、でも操作感に慣れておきたかったので
難しいステージに入る。しかし途中でポーズをかける。
「ダメだ。やってたら講義遅れるわ」
「じゃ、移動すっか」
「だな」
2人で荷物を持って4限の講義が行われる講義室へ向かう。
開け放たれた扉から中に入ろうとすると
向かいから妃馬さんと音成さんが話しながら歩いてきた。
「「あ」」
匠と2人で声を漏らす。その声が聞こえたのか音成さんとの談笑中
妃馬さんがこちらをチラッと見る。目が合う。
「あっ」
妃馬さんも声を漏らす。音成さんはそれに気づいて音成さんもこちらを見る。
「あっ」
4人分の「あ」が空間を彷徨う。
「おはよう…ございます」
僕が第一声を出す。
「おはようって」
音成さんが笑う。
「たしかに」
「たしかに」
妃馬さんと匠も笑う。
「たしかにな」
僕も笑う。
「じゃ、音成、後でね」
「あ、うん」
匠が中に入る。
「また後で」
僕も妃馬さんに声をかけ、匠の後ろをついていく。後ろから
「はい。後で」
という妃馬さんの声が聞こえ、軽く心臓が跳ねる。
別に仲良いのだから同じテーブルに4人で座ればいいのだが、なぜか2、2で別れて座った。
「なに?後でって」
座るや否や、匠に聞く。
「あぁ、この後一緒に出かけるから」
2人それぞれ荷物を置き、サティスフィーやらスマホやらをテーブルに出す。
「マジか。デート?」
鹿島や匠に言われてきたことをつい僕も言ってしまった。
「うぅ〜ん。まぁそうかな?」
「そうなんだ!?」
割とあっさり認めた匠の回答に驚く。
「まぁオレはね?オレはデートだと思ってるよ?」
「なるほどな。そーゆーことね」
「そそ。オレは音成が好きだから。だから「オレは」デートだと思ってる」
あっさり、さらっと言った「オレは音成が好きだから」発言に
なんだか、どこかむず痒く、こちらが照れるような、なぜか僕も少し心拍数が早くなった。
「おぉ〜」
感嘆の声が漏れる。
「なに?」
「へ?」
「ニヤけ顔」
気づかないうちにニヤけていたらしい。
「あ、マジ?」
「鏡見せようか?」
「いいいい」
匠からサティスフィーを貸してもらう。スマホのホームボタンを押す。妃馬さんからの通知。
「ちゃんと来ましたね( ˊᵕˋ)ノ ˊᵕˋ ) スイスイエライエライ」
「でも扉前で会うとは」
そのメッセージの後に猫がビックリしているスタンプが送られていた。
顔文字の可愛さにニヤけそうになり、下唇を噛み堪える。通知をタップし返信する。
4限も匠のサティスフィーでスーパーアリオギャラクシーをしたり
妃馬さんとLIMEしたりして、ろくに講義を聞かずに
あっという間に講義が終わる時間に近づく。
「あと10分じゃん」
講義室の前の時計を見る。
「ほんとだ」
匠はあつまれせいぶつの森の画面に出る時間表示を見たようで顔を上げることはなかった。
「どこ行くの?」
「ん?あぁこの後?」
「そうそう」
「特に決めてないな」
「マジかよ」
「どっかないかな」
2人でスマホで検索する。
「冷袋(ヒエブクロ)とかは?水族館あるし」
「あぁ冷袋いいな。animania(アニマニア)あるし」
「お前はそこだろうな」
「冷袋ムーンライト水族館って何時までやってんの?」
なぜか僕がHoogle(ホーグル)に「冷袋ムーンライト水族館 時間」と入れ、検索する。
「えぇ〜10時から6時。6時15分から9時」
「9時…。9時か。え、めっちゃびみょーな時間じゃない?」
たしかに。4限の講義が終わるのが16時10分。
大学の最寄り駅から冷袋駅までの所要時間おおよそ40分。
そして駅から歩いておおよそ15分。すると水族館に入るのはおおよそ17時。
前半が18時に終わるので水族館滞在時間約1時間。すごく微妙だ。
「た し か に な」
「どうしよ」
「夜ご飯は?一緒に食べんの?」
「それも決めてない」
「あぁ〜…。ベタに公園とかは?」
「公園?」
「ほら真新宿にデカいとこあるじゃん」
「伐々木(ホホギ)公園?」
「あぁそうか。伐々木公園もあるか」
「え、違うの?」
「あのぉ〜なんだっけ?御苑?」
「あぁ真新宿御苑ね」
「あそことか綺麗そうじゃない?」
「あぁ〜ね。たしかに」
匠がスマホをタプタプする。
「入場料200円だって」
「え!?金かかんの!?」
「らしい」
「知らんかった」
「んん〜…。わからん。デートってどこ行きゃええんや」
「たしかになぁ〜」
「怜夢、高校のときどこ行ってた?」
「別にどこってとこは行ってないよ。真新宿とか甘宿で買い物したり
ゲーセン行って、クレーンゲームで遊んだり
プリパニ(プリント カンパニー)撮ったりしてたよ」
「あぁ〜高校生らしいな」
「そう考えると、たしかに二十歳越えてのデートってムズイな」
「な。酒も…そっか飲めるのか…」
「飲めるね。いや飲めるか?」
「飲めるでしょ。今年21よ?」
「年齢のことでなくて、匠酒強くないだろ?」
「怜夢もだろ?」
「まぁそうなんだけど」
「居酒屋とかバーで飲むってなったら1、2杯はいけるだろ」
「まぁな」
「酒って選択肢もあるか」
「そうなると夜ご飯込みだな」
「あぁ〜…そうかぁ〜…」
「夜ご飯の選択肢はない感じ?」
「いや、向こうのご両親次第じゃない?」
「あぁ、そーゆーことな」
「迷う〜マヨイちゃん〜迷う〜」
「マヨイちゃん…?」
「あぁオレの好きなアニメ、マンガのキャラ」
「あぁね」
「そうだなぁ〜…冷袋でanimania(アニマニア)行ったりして1時間くらい時間潰して
水族館かな」
「いんじゃん?」
匠がある程度のデートプランを決めたところでちょうど
「はい。本日の講義はここまでです。お疲れ様でした〜」
と講師の方が講義の終了の合図を出した。
講義室はざわめき出し、続々と講義室から出ていく生徒たち。
「はい。返す。楽しかったわ」
匠にサティスフィーを返す。
「ん」
匠は荷物をまとめる。僕も荷物をまとめる。
匠と一緒に立ち上がり、妃馬さん音成さんのほうへ向かう。
「あ、どうも。リアルでは初めましてですよね。小野田匠です。よろしくお願いします」
と匠が今更の自己紹介をし、頭を下げる。
「あ、こちらこそ。根津妃馬です。よろしくお願いします」
妃馬さんも頭を下げる。
「なにこれ」
音成さんに尋ねる。
「さあ?」
音成さんは肩をすくめる。
「今日この後デートなんだって?」
なんとなく音成さんの気持ちを知っていた僕は揶揄うように音成さんい言う。
「うるさい」
匠と妃馬さんは軽い会話を交わす。
「怜夢とか音成からよく話は聞いてます」
匠の言葉に反応する音成さん。
「よく話してるんだ?サキちゃんのこと」
揶揄うように言ってくる。
「うるさい」
妃馬さんもそれに返すように
「私もよく怜夢さんとか恋ちゃんから、よくいろんなこと聞いてます」
妃馬さんの言葉に反応し
「「いろんな」こと話してんだぁ〜?」
とまた音成さんを揶揄うように言う。
「うるさい」
そこに僕も割って入る。
「じゃ、まぁぼちぼち歩きながら話しますか」
と言うと
「だな」
「そうですね」
「せやな」
とみんな賛同してくれて駅までの道を4人で歩く。