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貴君とは、それからもいい友達だった。
仕事は仕事、遊ぶ時は思いっきり遊ぶ、割り切り方が気持ちよかった。
「たしか、バイク乗るって言ってなかった?」
「私?うん、250持ってる」
「じゃあ今度は、バイクで道の駅巡りとかどう?」
「お、いいですね!でも最近乗ってないからホコリかぶってるわ」
「ホコリだけならいいけど、たまにはエンジンかけないと…」
「それは大丈夫、たまに乗ってる、郵便局とか行く時に」
「なら、次、天気が良さそうな時に」
「行きましょう!」
ガレージに置いたまま、週に一回乗るか乗らないかのバイク。
カワサキのグリーンがキレイで一目惚れしたやつ。
「欲しいなら買ってあげようか?」
「いいの?欲しい欲しい!これで一緒にツーリングしようよ」
3年くらい前に、旦那が買ってくれたヤツ。
結局、ツーリングは2回しか行ってない。
せっかく貴君に誘ってもらったから、キレイに磨いて出かけよう。
楽しみが増えた。
どこに行こうかな?
ルンルン気分(古いな)で家に帰り着いた。
ガレージに、旦那の車があった。
あれ?もしかして…?
「ただいま、おかえり」
「あ、おかえり」
リビングでタロウと遊んでいる旦那。
「出張終わり?」
「そう」
「晩ご飯は?」
「なんでもいいよ、あるもので」
かっちーん!
出た!
私が一番嫌いなヤツ。
意地悪な返事をする。
「あるもの?冷蔵庫見てないからなぁ、何があるか知ってる?」
「いや、知らない」
「疲れてるだろうから食べに行こうか?とか言って欲しかったなぁ」
「俺は別に、あまりものでもいい」
「あまってるの?」
「いや、知らないけど」
なんでだろ?なんでこんなにイライラするんだろ?
家事は私がやって当たり前なのは、出張前と変わらないのね。
「ずっと1人だったから、作り置きとかないの。レトルトのカレーくらいしかないよ」
「それでいい」
「そこはせめて、それがいい!と嘘でも言って欲しかったな」
ダメだ、私、どんどん嫌な奥さんになる。
深呼吸して落ち着いて、お米を研がないと。
キッチンへ向かおうとしたその時、カツンと何かを蹴飛ばした。
旦那の飲みかけのビールだった。
「なんでいつもこんなとこ置いとくの!!」
私の中でイライラがマックスになった。
天気のいい日。
バイクのツーリングは5人になった。
雑誌で調べた道の駅を三箇所巡って、美味しいものも食べた。
季節もよく、走るたびに心地いい風が体を吹き抜けていった。
「じゃあ、お疲れ様でした」
「お疲れ!また誘って」
「次は南の方行こうよ」
単純に楽しい。
男も女も関係ない。
同じ趣味での集まりは、気を使うこともなくて日頃のストレスも解消できると思う。
解散して、1人、スーパーに寄った。
晩ご飯は作らないとなぁ、なんて考えるところはまだ主婦だ。
今日は平日、旦那は仕事に行っている。
カートを押しながらあれこれ、カゴに入れていく。
お肉より魚のほうがいいかな?
あれこれ考えるより、鍋にしちゃう?少し暑いからダメか。
「あれ!未希ちゃん?」
野菜売り場でどこからか私を呼ぶ声がした。
振り返ると、同じようにカートを押して久しぶりに会う友達がいた。
「誰かと思った、早苗ちゃんじゃないの!久しぶり」
「久しぶり!外に見たことあるバイクを見つけたから、もしかしてとは思ってたけど」
早苗ちゃんは、バイクを買ったお店の店員で、私の高校時代の友人。
バイク屋さんで再会するまでは、特に親しくはなかったんだけど。
「バイク、現役で安心したよ」
「あまり乗ってなかったけどね、今日は久しぶりにツーリング行ってきた」
「旦那さんと?」
「ううん、新しいツーリング仲間で、道の駅巡りしてきたよ」
「ふーん…」
なんだか、何か言いたいことがあるように感じた。
「ん?なにか?」
「あー、これ、未希ちゃんに言ってもいいのかなぁ?」
「なに?いいよ、言って」
「言いにくいんだけど…」
少し声を低くした早苗ちゃんの様子に、嫌な予感がした。
「これ、ホントは進さんに言わないといけないんだけど…」
「え?旦那?」
「振り込まれてないの、最近、バイク代」
「えっ!」
私が気に入ったからと、ローンで買ってくれたバイク。
ローンといっても会社のではなく、この早苗ちゃんが先に一括で払ってくれて、それを均等に割って毎月払ってる…はず。
金利もバカにならないから、その方がお得だよと言ってくれたから。
なのに振り込まれてない?
「うそっ!え、いつの分?」
「半年前くらいから。一回、忘れてませんか?と電話してその時は振り込まれたけど、またその後振り込まれてなくて。さすがに困るからまた電話しようと思ってたところなんだ」
「2万だったよね?その半年分ってことは12万?」
「そう。ねぇ、なにかあった?旦那さん、リストラとか?」
「そうじゃないけど、あ、あの、あれだ仕事変わったから給料日が変わってドタバタしたせいかも?」
変な嘘をついてしまった。
どうしてだろう?見栄をはってしまう。
「もしも、今キツイならもう少し待つけど?」
「ううん、いい、ごめんね、連絡すればよかったね。てかさ、残り全部一括で払うから、私が」
「え、いいの?私はその方が助かるけど。じゃ、旦那さんにそう電話しとこうか?」
「いいよ、面倒だし、うん、で、いくら?」
うーんとね、と手帳を開く。
「22万だよ」
「わかった、明日にでも、振り込むね。ごめんね、待たせて」
「いいよ、だいたい旦那さんから未希ちゃんへのプレゼントだったからさ、未希ちゃんに言うのもどうかと思ったんだけど…」
ものすごく申し訳なさそうに言う早苗ちゃん。
悪いのはこっちなのに。
「ホント、ごめんね!また、バイク乗ってお店に遊びに行くね」
「うん、待ってるね」
顔では早苗ちゃんに謝りつつ、心の中で、怒りがメラメラと燃えてきた。
何故?どうして?
それも給料が下がったせいだというのか。
バイク代、22万、それを払ってしまったら私の貯金はもう残り少ない。
急いでレジを済ませると、バイクに荷物を積んで帰った。
確認しなきゃ。
他に借金がないか!