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20
あまね🍡💠
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休日の朝。
約束の時間になると、一台の黒い車が朝霧家の前に止まった。
車から降りてきたのは、育成プログラム教官・日下部隼人だった。
「朝霧湊君。」
「おはようございます。」
「今日は見学だ。肩の力を抜いて来てくれ。」
「はい。」
湊は少し緊張した表情で車へ乗り込む。
車が走り出す。
窓の外を眺めながら、湊は静かに口を開いた。
「日下部教官。」
「どうして僕なんですか?」
日下部は少しだけ微笑んだ。
「その答えは、今日、自分の目で見つけてほしい。」
それ以上は何も語らなかった。
約一時間後。
車は巨大な施設の前で止まった。
高い塀。
厳重な警備。
広大な敷地。
入口には大きく刻まれている。
『能力者育成プログラム 本部』
「大きい……。」
湊は思わず声を漏らした。
日下部は静かに歩き出す。
「ここには全国から選ばれた能力者たちが集まっている。」
「将来、日本を支える人材だ。」
「テレビで見る人たちも……?」
「ああ。」
「ここから巣立っていった者も多い。」
湊は改めて、この場所の重みを感じた。
施設の中へ入る。
すれ違う能力者たちは皆、制服を着ている。
誰もが真剣な表情だった。
廊下の先から、何かが爆発するような音が聞こえる。
「訓練場だ。」
日下部はそう言って歩き続ける。
大きなガラス越しに見えたのは、広大な訓練施設だった。
「すごい……。」
湊は息を呑む。
訓練は実戦を想定して行われていた。
火災現場を再現したエリア。
炎能力者・黒崎駿斗が炎を操っている。
しかし目的は燃やすことではない。
燃え広がる炎を最小限に抑え、避難経路を確保する訓練だった。
教官が叫ぶ。
「火力じゃない!制御だ!」
「一人でも多く助けることを考えろ!」
「はい!」
黒崎は炎を細かく操り直した。
隣では風能力者・天城楓。
煙を一方向へ流し、安全な避難経路を作っている。
さらに別の場所では氷能力者・如月葵。
真っ赤に熱せられた鉄骨へ手をかざす。
一瞬で温度が下がる。
救助隊役の隊員たちが瓦礫の奥へ走っていった。
そして念力能力者・九条蓮。
巨大なコンクリート片を静かに持ち上げる。
その下から救助役の人形が運び出された。
どの訓練も、人を倒すためではなかった。
人を助けるためだった。
日下部が静かに話し始める。
「能力は剣にもなる。」
「盾にもなる。」
「だが、我々が育てたいのは剣ではない。」
湊は訓練を見つめたまま耳を傾ける。
「人を守る盾だ。」
その言葉に、湊は小さく頷いた。
その時だった。
サイレンが鳴り響く。
『能力犯罪者制圧訓練、開始。』
訓練場へ数機の無人ドローンが飛び立つ。
能力犯罪者を想定した特殊訓練だった。
「ここからは、有事を想定した実戦訓練だ。」
炎。
風。
氷。
念力。
それぞれが連携しながらドローンを追い詰めていく。
そこへ、一筋の雷が空を走った。
一瞬で最後のドローンが停止する。
「速い……。」
湊が思わず呟く。
雷の先に立っていたのは――
神童輝羅だった。
訓練終了の合図が鳴る。
輝羅はタオルで汗を拭きながら歩いてくる。
そして湊を見る。
「湊……来たのか。」
「輝羅。」
二人が言葉を交わした瞬間。
周囲の能力者たちがざわついた。
「えっ?」
「神童の知り合い?」
「同じ育成プログラム生じゃないのか?」
輝羅は短く答える。
「ああ。同じ学校だ。」
すると一人の能力者が尋ねる。
「何の能力なんだ?」
湊は少し困ったように笑った。
「僕は……無能力者です。」
その場が静まり返る。
「無能力者?」
「ここに?」
誰もが信じられない表情を浮かべる。
その時。
九条蓮が静かに口を開いた。
「……教官が選んだなら、理由がある。」
たった一言だった。
しかし、その場の空気が少し変わる。
日下部は湊の横へ立つ。
「その理由も。」
「今日ここへ来てもらった理由も。」
「自分の目で見てほしい。」
そう言って歩き出す。
訓練場の奥。
今までよりさらに大きな扉の前で立ち止まる。
日下部は重い扉へ手を掛けた。
「ようこそ。」
ゆっくりと扉が開く。
「育成プログラムへ。」
扉の向こうには、まだ湊の知らない新たな世界が広がっていた。
第13話 新たな世界 完
コメント
1件
わああ第13話読み終わったよ〜!!😭✨ 施設のスケール感と訓練のリアルさがすごく伝わってきて、湊くんが緊張しながらも「あ、ここだ」って感じ取ってく過程が本当に良かった…! 特に九条蓮くんの「教官が選んだなら理由がある」、あれめちゃくちゃグッときたよ…無能力者ってだけで否定しない空気、尊すぎる…🥺💕 「人を守る盾」っていう日下部教官の言葉も心に刺さった!続きが気になりすぎるよおおお!!🔥