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「洋平〜〜〜‼︎」
「どうした? 美優〜」
美優を手伝って、キッチンに立ってくれるようになった洋平
夕食後に洗い物をしてくれている優しい旦那様♡
「どうしたの? 美優、大丈夫?」
「動いた!」
「え?」
「お腹……」
「お腹?」
「赤ちゃん」
──なんで単語なんだ? ハハ
「美優〜〜〜♡」
手をエプロンで拭き拭き
「失礼します」と、両手でお腹を触る洋平
「……」
「動かないね……さっきは動いたんだけど……」
「そっか……もう寝ちゃったかなあ〜?」
「また、すぐに動くよ」
「うん」トボトボと、またキッチンへ
「洋平〜〜〜‼︎」
バタバタ バタバタ
サッと両手をお腹に添える
「……」
「なぜ俺が触ると止まるの? 赤ちゃん」
「警戒してるのかなあ?」
「パパでしゅよ〜♡怖くないよ〜♡」
「……」
「まだ、認められてないみたいだな……」
「大丈夫よ! 育児書には、お腹が変形するぐらいに
動くこともあるって書いてあるし……そのうちね」
「うん……」トボトボ
──そんなに落ち込まなくても……あは
「どうして、あなたはパパには動かないの?
大丈夫だよ、あなたのパパは、優しくてイケメンでカッコイイんだから、早く会わせてあげたいよ♡」
グニョー
「よ、洋平〜〜〜‼︎」
「またか〜‼︎」
バタバタ バタバタ
「……」
「もう、ココで待ってたら?」
「うん、もうすぐ洗い物終わるから……」
ようやく、洗い物を終え、隣りでずっとお腹を
ガン見してる洋平
「赤ちゃん、パパも居るよ〜ちょっとだけ動いてあげてくれないかなあ?」
グニョー
「うわーー! スゲ〜こんなに動くの?」
「ふふ、そうだよ、早く手を……」
「……」
「もう、ずっと撫でてたら?」
「うん」
「赤ちゃん、パパだよ〜愛してるよ〜♡」
グニョー
「うお〜! 赤ちゃ〜ん♡」
「ふふ、良かったね」
「うん、嬉しい〜」
それからというもの、安心したのか赤ちゃんは、
グニョグニョ動くようになりました。
「あ〜!」
「美優〜そんな声出さないでよ〜♡」
「違っ、急に動くからビックリするのよ」
「なんだ、誘われてるのかと思ったよ〜♡」
「勘違いだから!」
「う〜ん、美優ちゃ〜ん♡安定期なんでしょう?
チュッ」
──う〜ん、もう面倒くさいなあ〜
「寝る!」
「あーん、美優ちゃ〜ん♡」
「ちょっと〜」
「お願い触らせて〜♡このレア品を……」
「バカね〜」
「もっと爆乳になれ、爆乳になれ〜」
「あ! ちょっと先っちょ痛くなって来たから、触らないでね」
「えー‼︎ そうなの……?……ハイ……」
──ショック
「パパ気をつけて、頑張りま〜す♡」
「バカ……♡」
火曜日
いつものように洋平と出社。
洋平は、珍しく
井上と午後から取引先に出かけると言う。
「じゃあ、行ってくる、定時には間に合わないから、帰り道、気をつけて帰れよ」
「うん、分かった」
「何かあったら、すぐに電話しろよ」
「うん」
「山本に言っておくから、帰りマンションまで送ってもらえよ」
「あ、イイよ。大丈夫だから、山本も忙しいだろうし……」
「そうか?」
「うん、ありがとう。帰りに買い物もして帰りたいし……」
「重い物は、持っちゃダメだよ」
「うん、分かってるから、早く行って。気をつけてね」
「うん、分かった。じゃあ!井上行こうか」
「いってらっしゃ〜い」
「じゃあ、行って来る」
「うん、気をつけて♡」
あちらでも、井上と片岡ちゃんが別れを惜しんでる
──ふふ、すぐ帰って来るってば……同じ都内なんだから……私たちもあんな風だったのかなぁ? ふふ
「美優さん、何笑ってるんですか?」
「いや〜あなたたちを見てると微笑ましくて……」
「え〜美優さんたちだって、今もラブラブ♡
もう杉野課長の顔を見てたら、ベタ惚れって感じでニヤニヤしちゃいますよ♡」
「そんなことないでしょう〜ふふ」
「もうすぐですね、結婚式」
「うん、すごく楽しみ」
「良かったですね、ウェディングドレス着れて」
「そうなのよ、もう着る機会がないかと思ってたから、嬉しくて……」
「美優さん、お綺麗だからとってもお似合いだと思います。あとで写真見せてくださいね」
「うん」
「にしても、ホント美男美女で羨ましいです」
「えー片岡ちゃんも可愛いし、井上だって黙ってたら……あ、ごめん」
「あ、いえ。優しいんですよ」
「うん、そうね、井上は優しいよね。大事にしてくれると思う」
「はい、大事にしてくれてます♡」
「はは、言うね〜」
「楽しみだなぁ〜あなたたちの時も……」
「う〜ん、私も早くそうなりたいです」
──え?アイツまだプロポーズしてないんかい!
まったく……
あれ? この前、高橋さんが変な関西弁使ってたから、私までエセ関西弁だわ……ハハ
午後の引き継ぎも終え、これでもう大丈夫だろう。
ちょっと肩の荷が降りた。
「じゃあ、お疲れ様でした」
「お疲れ様〜」
山本は、まだ現場から戻って来ない。
きっと忙しいんだろうな。
デパートで買い物して帰ろう。
赤ちゃんの物も欲しいし……
と、1人で会社を出た。
デパートまでは、マンションとは逆方向に10分程度かかる。
ベビー用品売り場で、色々見て
最初に着せるベビー服が可愛くて♡
どうしても欲しくなった。
まだ、断定ではないが、妊婦健診で、たぶん女の子。
たまに、隠れてることもあるから……って。
だとしたら、腹帯に書かれてた文字は、逆で当たっていたことになる。
「可愛い〜」
1着だけ買おう。
白ならどちらでも着れるし……
退院時の服やおくるみやベビー用品は、
結婚式が終わったら、また、洋平と母と一緒に買いに行こう!
って言われているから、あまりたくさん買っちゃいけないし……
そして、ネクタイ売り場で
素敵なネクタイが目についた。
──洋平に似合いそうだなぁ〜
特に何の日というわけではないが、
買ってあげよう。
それから、地下で必需品のトマトときゅうりを買った。
もう、さほど、ピングレは、欲しく無くなった。
あんなに、洋平が探し回ってくれたのに……
なんだったんだろう。
ふと、キャビアが目に入った。
──え? 食べたい!
なぜ?私、そんなの滅多に食べないのに……
あ、赤ちゃんが食べたがってるの?
でも、塩辛いし……妊婦にはあまり良くないよね〜
しかも、こんなに小さい瓶で、5千円!
──食べたい?
──あ、いや、やっぱりダメだよ
──お高いし……塩分多そうだし、妊娠中毒症になったら困るし……
──いや、そんなに量は、食べないし……
──あ、ダメダメ、コレ買ったら1人で食べたいもん
いろんな葛藤の末
阻止し、買わずに済んだ
危なかった……
もう少しで、キャビアを買ってしまうところだった。
何度もキャビアの前を行ったり来たり……
怪しい人か、万引きでもするんじゃないか? と、
思われなかったかなあ。
デパートの外に出た。
すると……
「美優?」
と、男の人の声がした。
振り返ると、
見覚えのある顔が……
高校3年生の時から短大2年生の夏まで
付き合っていた元カレだ!
「え?」
二度と会いたくない人だった。
二股をかけられ、彼の家で浮気現場をまともに目撃してしまった、最低なクズ野郎だから……
なぜこのタイミングで、しかもこんな場所で
再会しなきゃいけないのか……
このまま知らないふりをして、立ち去ろうか……
一瞬で頭の中、フル回転させるが、
答えを出せないまま、立ち尽くしてしまった。
「久しぶり! 元気だった?」
「……」
「あれから連絡付かなくなって、後悔してたんだ。
ホントに悪かった」
そう話す元カレに、なんの懐かしさも感じず、
ただただ不快だったから、早くその場から離れたかったのに、驚き過ぎて足が動かない。
「もう過去のことだし……」やっとの思いで返した。
「相変わらず、綺麗だな。今、幸せか?」
「うん、とっても幸せ」
「そうか……お茶でも行かない?」
「行かない。私、結婚したの」
「そうなのか?」
「うん」
「でも、まだ早いし、少しなら、大丈夫だろ?」
「ううん、もう主人も帰って来るし、帰らなきゃ」
「え? こんなに早く? 寂しいなぁ、ちょっとは、俺の話も聞いてよ」
と、帰ろうとする美優の腕を掴んだ。
「離してよ!」
「なんでそんな言い方……」
と、途中まで言いかけた元カレの腕を誰かが掴んだ。