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「ウチの奥さんに何かご用ですか?」
「洋平!」
「え? 誰?」
「美優の夫ですが、何か?」
「あ、いや、そうなんですね、じゃあ……」
走って逃げたチキン野郎
「洋平……」自然に涙が溢れた。
「美優、大丈夫だったか?」
ぎゅーっと抱きつき、抱きしめる洋平
「うん、怖かった」
一緒に居た井上が、
「誰だアイツ? どこかで見覚えが……」
「大学の時付き合ってた……」
「あ〜あの二股浮気野郎か?」と洋平
「うん」
「あ〜!」と、井上
「どうした?」
「アイツ、俺と同じ大学でした」
「え? そうなのか?」
「今年29歳?」
「うん」
「俺と一緒だ。学部は違うけど……
でも、友達の知り合いだから顔は、見たことある。
そういえば、彼女居るのに、コンパの度に、あっちこっちの大学に彼女作って……って有名だったぞ。
その彼女がお前だったのかよ。まさかだな……」
「そうなんだ……最低!二股より酷かったんだ……」
「美優〜大丈夫か?」
「うん、ごめんね、心配かけて
洋平が来てくれなかったら、私どうなってたんだろう」
「良かった、無事で」
ぎゅー
「でも、どうして?」
「ちょうど駅に着いて、歩いて会社に戻るところだったんだ。
井上がアレ美優じゃない? って気づいて、そしたら知らない男と話してるから……ナンパでもされてるのか? と思ったから急いで走って来た」
「そうだったんだ。ありがとう。
井上もありがとうね」
「いや、良かった無事で」
「うん、ごめんね」
「歩けるか?」
「うん、大丈夫」
「クリニック行かなくて大丈夫か?」
「うん、あ、でも、ちょっとお腹が張ってる感じがする」
「じゃあ、やっぱり行っておこう! 井上、悪いけど俺、今日、直帰にしといて!」
「はい、分かりました」
「え? 仕事大丈夫? 会社に戻るはずだったんでしょう?」
「今日は、報告だけだし……井上がちゃんとやってくれるよ。美優のことより大事な仕事なんてない!
な、井上!」
「え? あ、はい……」
「ふふ、頼んだぞ!」と、にこやかに笑う洋平
「ハハ、はい」
「無理しなくても大丈夫だよ」
「ダメ、美優に何かあったらダメだから、一緒に行く」
「ごめんね、井上、ご迷惑をおかけします」
「いやいや、大丈夫だから、それより赤ちゃん、
気をつけて」
「うん、ありがとう〜」
「じゃあ、美優、タクシーで行こうか?」
「うん」
「じゃあ、井上悪いな、頼むよ。明日頑張ろう!」
「はい、じゃあお疲れ様でした」
「お〜お疲れ」
「お疲れ様〜ありがとうね〜」
「じゃあ」
「ごめんね、良かったの? 仕事?」
「うん、謝らなくていい。奥さんの一大事に仕事なんてしてられるかよ……」
「洋平〜」
「良かった、美優が無事で……」
また、泣きそうになった。
そのままクリニックへ行った。
妊婦健診がちょうど翌日予定だったから、
診てもらった。
「うん、赤ちゃんは順調よ。ちょっとお腹張ってるみたいね。でも、これくらいなら大丈夫でしょう。
もし、ずっと張りが治らなかったら入院になるけど」
「え? 日曜日、結婚式なんです」
「あら〜そうなの? じゃあ、2、3日安静にしておいた方が良いわね」
「え〜!」と、美優が言うのを|遮《さえぎ》り、
「分かりました。休ませます」と洋平
「え?」
「今週は休め! な!」
「うん、分かった」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「お大事に〜」
「美優、昼間お母さんに来てもらおうか?」
「大丈夫だよ、ジーっとしてれば……」
「お昼ご飯とか……家事とか、やっぱり動いちゃうでしょ?」
「うん」
「お母さんも結婚式が無くなったら心配するし、来てもらおう」
「うん、分かった。そうする」
洋平が連絡してくれて、母は翌日、朝から来てくれることに……
「美優〜ゆっくり休んでるんだぞ」
「うん、分かった」
「ハグはしてもいい?」
「うん」
「チューは?」
「して!」
朝から、いつもより優しい優しいキスが落ちてきた
「ふふ、気をつけてね、いってらっしゃ〜い」
「行って来ます」もう一度 チュッ
ピンポ〜ン
──危なかった!美優、口紅塗ってなくて良かった
「おはよう〜」
「おはようございます。すみません、お母さん」
「いえいえ、洋平さん、いってらっしゃい」
「はい、では、行って来ます。お願いします」
「はい、はい」
「いってらっしゃい」と、手を振る。
「な〜に? いってらっしゃいのチューでも
してたの?」
「しないわよ……」
──鋭い!母
「美優、大丈夫なの?驚いたわよ」
「うん、ごめんね、急に……今は落ちついてる」
「まあ、しばらく安静にしてなさい」
「うん、ありがとう」
「朝は、何か食べられたの?」
「うん、洋平が作ってくれた」
「へー洋平くん、優しいね〜」
「うん」
「じゃあ、私は洗濯と掃除でもしましょうか?」
「あ、洗濯も洋平が夜に干してくれた」
「あらま、すごいわね。」
「海外で一人暮らしが長かったから……」
「そっか……とりあえず、もう少し休んで来たら?
妊婦は、睡眠が大事よ」
「うん、ありがとう。じゃあお願い」
「うん」
お昼まで二度寝をして、スッキリ!
「お昼ごはん、おうどんなら食べられるかと思って、買って来たの」
「うん、ありがとう」
母と一緒に鍋焼きうどんを食べた。
「あ〜温まって美味しかった〜」
「良かった」
「美優は、働いて1年もしたら、一人暮らしがしたい!って……ここに来ちゃて……だから、平日にお昼を一緒に食べるのなんて、久しぶりね」
「そうだね」
「赤ちゃんが生まれたら、しばらく帰って来る?」
「うん、そうだなぁ〜洋平、寂しがるかなぁ?」
「どうかなぁ? 羽根伸ばしたりして……」
「どういう意味よ! でも、洋平お料理は、簡単な物しか出来ないから、心配だなぁ〜」
「じゃあ、毎日晩ご飯は、洋平くんも、ウチに来るようにしたら?」
「パパ居るのに、気を使わないかなあ?」
「美優と赤ちゃんに会う為に、パパに会うのを我慢するか? 外食するか? どっちかよね。選んでもらったら? 毎日じゃなくても、週何日かでもいいし……」
「そうだね、聞いてみる」
「洋平くん、イケメンだし、優しいから美優が居ない間に誰かに言い寄られるかもしれないしね〜監視しとかなきゃ」
「え?」
──あーもう〜又、あの巨乳女を思い出してしまったじゃないのよ
「何? 心当たりあるの?」
「ううん」
──あるな! これは……母の勘
「まあ、男なんて皆んな浮気する! って思ってる方が気がラクよ」
「しないよ、洋平は……」
「そうね、しないよね〜しない、しない」
──妊婦にはチョット衝撃的だったかしら……
「晩ご飯、カレー作っておいたから……」
「あ、ありがとう」
そう言って、母は夕方には帰って行った。
「明日も来るわね」
「ありがとう〜」