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「では、まずは言い出しっぺの私から」
賢者が自分の胸に手を当て、それから軽く咳払いする。
「私の名前はアウレリア。人間と水精霊のハーフで、歳は……400からあんまり数えてないのです。恐らくこの中だと一番お姉さんだと思うので、何かあれば頼ってほしいのですよ。おつむの方には少しだけ自信があるのです。……こんな異常事態に私の力がどこまで通用するかはさておきとして。」
賢者…もとい、アウレリアの自己紹介に魔女がぱちぱちと拍手を送り、剣士と雪女がそれに倣う。アウレリアはそれににっこりと微笑みを返した。
「次は、拙か?」
賢者の隣にいた剣士が己を指差し、異論の出ないことを確かめてから立ち上がる。
「拙は姓をフジツ、名をサキと言う。齢は……確か、22だったか。特異な産まれは何も無い、ただ剣を振れるのみの只人だ。見ての通り血を喰らい屍を踏み付けにする身の上、故にあまり馴れ合うことも無いだろう。護衛など、必要があれば役立ててほしい」
剣士…もとい、サキは古めかしく難解な言葉遣いをするせいか、自己紹介をきちんと理解できたのはアウレリアと雪女だけらしかった。二人は困ったように顔を見合わせ、苦笑している。
魔女は初めて聞く言葉を噛み砕くためにフリーズしてしまい、天使は未だ意識が現実に追い付いていなかった。
自己紹介を終えると、サキは隣で気絶している天使の頬をぺちぺちと軽く叩きその意識を呼び戻す。
起き上がった天使にアウレリアは状況を説明しつつ既に自己紹介を終えた2人の名前をとりあえず頭に入れさせ、「あなたのことも教えてほしいのですよ」と優しく自己紹介するよう促した。
「えぇーっと、その、すみません私ったら気絶してたみたいで……えっと、名前はリエルって言います。家名は無いですね。あ、よく勘違いされるんですけど、間違っても天使みたいなそういうやつじゃなくて、翼人族という種族で、特に大した力なんてのはなくちょっと空が飛べるくらい……あ、歳は24です。えっと、これ以上なにを話せば良いか分からなくて、終わってもいいですか……?」
そうやって肩を縮こまらせながら天使…もとい、リエルが締め括ると、苦笑や生暖かい視線と共に拍手が送られる。リエルは居た堪れなさそうに俯きながら耳を赤く染め、その場に正座で座り直した。
弛緩した空気の中でリエルの隣にいた魔女が挙手する。
「次は私ですか?えっと、 魔女見習いやってます、エレシーナ・バラーゾです。いつもはエルシーって呼ばれてるので、皆さんもそう呼んでください。種族は普通の人間ですね。歳は16です。これから1年間、よろしくお願いします!」
魔女…もとい、エルシーは微かな緊張を滲ませながら元気よく頭を下げる。その弾みに帽子がふわりと浮き上がり、慌ててそれを抑えた。5人の中で唯一のティーンということもあり、まだ幼さを滲ませるその仕草に微笑ましげな眼差しが集まる。エルシーにはその眼差しが辛く、そのまま帽子を目深に被り直してリエルのように縮こまってしまった。
雪女がくすくすと楽しげに笑いながら「次はわたしの番でしょうか?」と立ち上がった。
「わたしの名前はマツリ。雪女ですので、厳密には人ではありません。酷寒の地ならば十分な力も使えましょうが、日に当たれば溶けてしまい、今こうして日差しの遮られる場にあっても形を保つので手一杯の始末。お役には立てないでしょうが、どうかよろしくお願いします」
優雅に一礼する雪女…もとい、マツリ。よく見るとさして暑いと感じるような気温でもないのに手や首筋を雫が伝っており、形を保つので手一杯というのが誇張でもなんでもないと分かる。
一通りの自己紹介を終えると、アウレリアがぱちんと手を鳴らし4人の注目を集める。
「それでは挨拶も終わったので、ひとまずはマツリさんが形を保てるような場所を探すのですよ。今後について話すのはその後で!」