薄暗い街並みがぼんやりと朱く染まって騒がしい。その空気感に馴染めてない僕はきっと異質な存在なんだなと思い、その街を後にした。僕は祭りが嫌いだ。普段なら買わないであろうもの達にお金をつぎ込み、浴衣なんか着て、心躍らせるなんて馬鹿馬鹿しい。そして何より僕の最も嫌いな金魚。祭りのせいで僕は金魚のことを考えてしまう。だから祭りは嫌いだ。
僕が金魚に嫌悪感抱いたのは小学校低学年の時だった。僕がお風呂に入る時、金魚が出でくるのだ。朱いなんとも憎たらしい金魚。桶で掬おうとするがなかなか捕まえられない。しかし、僕はこの朱い悪魔を全て掬わなければならない。こんなものが浮いていたら僕は僕でなくなってしまう。早く取り除かなければ、、。だんだん焦ってくるとあいつは分裂しさらに僕の手を煩わせてくる。こうも上手くいかないと自分が嫌になってくる。元々自分を愛せるほど誰かに愛情を注いでもらった記憶は無いし、常に他人に嫉妬した。自分は自分じゃない誰かになれば幸せになれると思っていた。異質な存在ならきっと誰か好いてくれるんじゃないかと思って、僕は女の子が好きで短髪でかっこいいものが好きな人間になろうと思った。だからこの金魚は僕にとって害悪でしか無かった。
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