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耀聖(ようせい)
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【強襲艇・監視中のアーレイ】
「ファマス、そろそろ準備してくれ」
上空からサラの様子を見ていたアーレイ。
戦闘が始まり、動きが慌ただしくなり始めた――。
「ああ、いつでもいいぞ」
いくらサラが優れていたとしても、傭兵相手では些か不利だ。
ここで護衛を投入する決断をする。
「アーレイ陛下、私も出ます」
「ファビオも楽しんでくればいい」
「はい」
ファマスは少々短気なところがある。彼より冷静なファビオと二人一組で行動させた方が良いと考え、アーレイはガルーダの元近衛騎士であるファビオも呼んでいた。
「それじゃ頼んだぞ」
コサックのような戦闘服。
腰には長剣とハンドガンを携えた二人。
数体のバトルドロイドと共に、光の粒子になって、地上に送り込まれた――。
※※※※※※
【グレイスの部隊】
突然、トレントのような草木に襲われたグレイスは、こめかみの辺りから血が滲んでいる。
「クッソ、あの女、銃床で殴りやがって」
最初は棍棒の類いで殴られたのかと思ったが、傷の形状から銃床で殴られたことが分かった。
今はステルスを解除して、応急処置の最中だ。
「あの女生徒がゲリラ戦に長けているとは、想定外だったな」
「それに依頼者を先に潰しにくる辺り、なかなかだぞ」
傭兵達は余裕の表情を浮かべ、サラの攻撃を逆に感心していた。
「だが、どうやってステルスを見破ったんだ」
「多分、突然吹いた風だ。あれしか思いつかない」
サラは風魔法を使い、木の葉を舞い上がらせ位置を特定していたのだ。
おまけに、グレイスは銃を構え、殺気を放っていたので、わかりやすかった――。
「それにしても、逆襲に遭うとは、運が悪かったな」
シールドで守られ大怪我こそしなかったが、銃床でボコスコに殴られたグレイスは超不機嫌だ。
「あの女を追い詰めてボコボコにしてやる」
「追いますか。手負いだから、そんなに遠くには行ってないはずだ」
傭兵達は軍用多目的端末を取り出し、サラの後を追い始める。
「この先、200メートルほど先に潜んでいるな」
「赤外線には反応しないぞ」
「ああ、吐息に含まれる二酸化炭素を探知している。風が吹かなければ追跡できる」
サラは位置情報を追跡されていると考え、通信機を地中に埋め、赤外線探知から逃れるために身体に蔦を巻きつけた――。
だが、敵はプロだ。傭兵たちは別の手掛かりを頼りに確実に距離を詰めてくる。
※※※※※※
【逃走中のサラ】
「イタタ、クッソ、めっちゃ撃ち込みやがって」
タクティカルベストには無数の穴が開いていた。アーマースーツのおかげで致命傷こそ免れたものの、助けに入った傭兵たちから散々撃たれたのだ。
致命傷には至らないが、サラの表情は苦痛で歪んでいた――。
「シールド装備とはね、恐れ入るわ……」
雇い主のグレイスを銃床で殴り失神させ、その隙に逃げようと企んだサラだったが、シールドが張られ目的を達成できなかった。
まさか丸腰の学生相手にシールドを張る念の入れようとは思わなかったのだった。
「もう潮時ね。距離を取らないと……」
当然、二回目は通用しないと判断すると、サラはウルフの近くまで逃げるつもりだ――。
その時だった――。
ジュワッ。
ドーン!
「エッ?」
移動前に木陰から様子を伺うと、青い閃光が見えた。
そして次の瞬間、頭上の大木が弾け飛び、遅れて爆発した。
「クッ、殺傷モードで撃ってくるなんて――」
毒づくサラは、文句を言いつつ爆風を利用して、グレイス達と一気に距離を取る。
「傭兵にしては射撃精度が悪かったわね……」
これは、もちろん傭兵が放ったものではない――。
彼らはあくまで依頼を受けただけで、演習中に生徒を殺せば、ただでは済まない。
傭兵たちは、そこまで愚かではなかった。
「チッ、外したか。だが次は仕留める」
怒りに我を忘れたグレイスはあろうことか、最大出力の殺傷モードで撃ったのだ。
高出力レーザーなら、大木など木っ端微塵に吹き飛ばしてしまう。
腕にかすっただけでも、千切れてしまうほどの威力だ――。
「楽しくはないけど、ゾクゾクするわね」
途方もない状況なのに、サラは泣き言を言わずに最適解を考えながら身を低く構え、森の中を移動し始める。
パシューン
ドーン
止まっては移動を繰り返すと、少し遅れて高出力のレーザーが、先ほどまでいた場所を焼き尽くす。
その銃撃には一定のパターンがあるように見受けられる。
追われているサラは、その僅かな違和感に気づいていた――。
「少しでも留まると撃ってくるか……何らかの痕跡を追っているようね」
破壊力抜群の銃撃を行っているのは一人だけだ。
傭兵は相変わらずスタンを放ってくる。
何かの痕跡を追っていると考えたサラは、動きを止めようとはしなかった。
だが――。
「グハァ!」
時折、正確に撃ってくるスタン。
その距離が少しずつだが詰まっていた――。
「腐ってもプロね、反撃して銃を奪わないと詰むわ……けど逃げるしかないよね」
サラの考えは正しいが、傭兵がそう易々と武器を奪われることは無い。
一人ならまだしも、二人相手はさすがに手に負えない。
逃げの一手に転じるが――
「グハァァ」
俊足のサラを追い込むプロの傭兵。
ふくらはぎを撃たれ、俊足が封じられた。
ザザザ——
草木をかき分ける音。
必死に逃げるサラの周りに、傭兵が近づいてきた。
「白旗を上げてもらおう」
「チッ、ここまでか」
ステルスを解除した傭兵は、銃口をサラに向けた。
完全に後ろを捉えられ、逃げ場は無い。
銃を放り投げたサラは、両手を上げる。
「やっと、この時が来たな。サラ死ね!」
グレイスは本気でサラを殺そうとしている。
悪意に満ちた歪んだその顔を見れば一目瞭然だ。
グレイスはニヤリと笑いながら、トリガーに指を掛けた。
ズバァァァ
「なっ!」
青い閃光が走った瞬間、レーザーガンは真っ二つになる。
その直後、何もなかった空間が揺らぎ、一人の騎士が姿を現した――。
「殺されたくなければ、手を上げろ」
「死ね!」
ズバァァァ――。
傭兵が銃口を動かした瞬間、また何もない空間から青い閃光が走り、銃が真っ二つになった。
「分かったよ、降参だ」
傭兵達は、目の前の男一人だけではないと、即座に判断すると銃を放り投げ両手を上げた。
「女の子を三人で追い詰めるとは、腐れ外道だな」
「俺たちは雇われだからな、なんとでも言え」
傭兵達は悪びれる様子もなく、飄々と応え、ファビオは傭兵と分かると、苦い顔をする。
「さて、君が雇い主なのか、責任は取ってもらうからな」
「意味がわからない、この女は貴族の敵だ。死んでも構わない」
全く反省するどころか、この状況になっても恨みは消えてない。
女の子一人に対し、この態度は些か異常だとしか思えない。
ファビオは呆れていた――。
「クッソムカつくガキだな。根性が曲がっとる」
あまりの悪態に、ステルス化していたファマスが姿を現す。
彼は弱い者いじめが大っ嫌いな性格をしているので、腹が立って仕方がない。
「煩いオッサンだな、黙れよ」
「我儘もここまで来ると病気だな」
ゴン!ガン!
「グハァ!」
そしてファマスは、グレイスを拳で叩きのめし、顔と鳩尾を殴られたグレイスは、その場に蹲る。
「……」
傭兵達も思う所があるのか、黙って見ていた。
「くっそ」
だが、グレイスはあろうことか、腰にある拳銃に手を伸ばし、ファマスに向け引き金を引こうとする。
だが——
「ダメよダメダメ〜」
ブン!
突然、ブーンと高周波ブレイドソードの音が響き、ピンキーがグレイスの腕ごと叩き切った。
「ギャァァァ、腕が、腕がぁぁぁ」
「殺されなかっただけマシと思え、さて、後は陛下に任せるか……」
そして、傭兵とグレイスは強制転送で強襲艇に収容されるのだった……。
「それでは我々は引き上げます」
「騎士さんありがとうございます」
「それでは引き続き、旅行を楽しんでください」
むさっ苦しい親父二人は、サラが頭を深々と下げると、ニヤリと笑い光の粒子になって消えていくのだった……。
「はぁ〜最悪だったわ……」
殺意にさらされることには慣れている。しかし本気で殺しにきた奴と対峙するのは初めてだった。
いくら脳筋のサラとはいえ、さすがに凹んでいた。
誰もいなくなり気が抜けたのか、ぺたんと座り込んでしまう。
「サラ、大丈夫だったか」
爆発が気になりウルフは様子見に来ていた。
ボロボロのサラを見て、とても心配そうな顔をして隣に座った。
「ウルフ……まぁなんとかなったよ」
「そうか……」
ウルフはサラの助太刀に現れた二人の騎士と、バトルドロイドを見て、何か言いたそうな顔をする。
(あれはアーレイ陛下のドロイド……それに老齢の近衛騎士……)
しかし、憔悴したサラを目の前にして、それを聞くのは無粋と思ったのか、ウルフはハイドレーションパックを渡す。
コメント
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読み終えたあとの気持ち、ツカレタ……でもすごく面白かったです🥀 サラが追い詰められていく緊迫感が最初から最後まで途切れなくて、一瞬も目が離せなかった。特にグレイスの異常な執念、殺傷モードで撃ってくるシーンは本当にゾッとしました。 ファマスとファビオの恰好よさ! あのタイミングで現れるの、胸熱でした。最後にウルフが黙ってハイドレーションパックを差し出す優しさにじんわりきました。 重い展開の中でサラの諦めない強さと、ちゃんと凹む人間らしさのバランスが好きです。続き、絶対に読ませてください🌙