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※たぶん甘々、ほのぼの
水さん誕生日配信のときの「あっめっちゃちむの匂いする」発言からインスピレーションを得たもの。短い。
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「っぁ゙〜…、どうしよ」
数刻前からほとんど変わっていないパソコンの画面。そこには作曲ソフトが映し出されている。
こんなに苦戦するのはどうにも久しぶりやなあ、なんて思いながらパソコンと睨めっこする。
「…いやあ、ちゃうな……でもな……」
何となく思い描いているイメージを音に変換するが、中々納得のいく音が生まれない。この曲に着手してからずっとこの調子だ。
一度これに入ると中々抜け出せないんよな…。
「あー、やめややめ!一旦休憩するか…」
これ以上張り付いても何も進まないなと思い、一度リビングでダラダラすることにした。
・・・
「あ、れるさん」
現在アレが家に出て我が家に居候中のちむ。リビングのソファでくつろぎながらスマホをいじっている。
そんなちむの隣に深く腰をかけ、ため息をつく。
「どしたのれるさん、なんかあった?」
「いや…」
れるからどことなく良くない空気を感じ取ったのか、ちむは少し心配した様子でこちらをのぞき込む。
そのとき、ふわりと落ち着く匂いが鼻を掠めた。やさしい、人の香り。
こちらに近付いてきたちむを衝動的にぎゅっと抱きしめる。
「ぇ、ちょ、れるさん…?!」
そのまま肩に顔を埋めて息を吸う。ちむにも聞こえるくらいに、強く、深く。
「なっ、なにしてんの!?」
ちむは困惑してれるを引き離そうとする。 離れないように、もっと強くちむの胴体を締め付ける。
狼狽える彼には目もくれず深く吸って、ゆっくり吐くという行為を繰り返す。
頭がちむの匂いで飽和するのを感じる。それがなんとも心地よくて、麻薬のようだ。ずっとこのままでいたいなんて思うほどに。
れるが離れないと気がついたのか、ちむは途中で離れることを諦めた。
軽く3分はこの状態だっただろうか。自分が満足するまで堪能し、やっと手を離してやる。
「…っ、なにしてたの…」
「んん…ちむ吸い…?」
「えぇきも…」
動揺と羞恥を混ぜたような顔をしているのが少し面白い。
思い出したらもう一度したくなったため今度は首元に顔を寄せる。
「ぁ、う…ちょっ……」
肩よりも直にちむを感じられて良い。濃くなった匂いで酔倒しそうだった。
「ぅ…ッ」
流石に羞恥心が大きいのか、れるの事を弱々しく押し返しているのが分かる。それがいじらしくて、かわいいと思った。
ふわふわと多幸感に包まれて、なんとなくしあわせを感じる。
「……ん、まんぞく」
「…………あ、そ」
分かりやすく複雑な感情を露わにしていておもしろい。
「なあちむ、居候してる間はよろしくな」
「はあ!?もう嫌ですけど!」
「いやいや、住まわせてもらってる身やのに家主の要望聞けへんの?」
「う……」
この心を撫でてくれるような、やわらかい香りをちむが居候してる間は心置き無く堪能出来るのだ。
そう考えると、家を貸してやるのも悪くないな、なんて。
この後作業に戻ったら有り得ないくらい捗ったのは、また別の話。
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優しい話、書き慣れない。