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きいと
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コメント
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えっと……すごく重くて、でも綺麗な空気の話だったね。 大我と北斗、どっちも家庭に闇抱えてるのに、お互いにだけは素を見せられる感じが切なかった。特にあの砂浜で「星になりたい」って言うシーン、死にたいとは違うって笑ったところがすごく刺さった。孤独じゃないって思えることがどれだけ救いかって。 それに、ドライフラワーアートとか星空の話とか、物語全体に「儚くて美しいもの」が散りばめられてて、そのセンスが好きだわ。続き、気になる。
この作品は
凪良ゆうさん
「汝、星のごとく」
を参考にして作られた作品です。
そして小説のように、
文字が行をあけずぎゅうぎゅう詰めになっています。
読みずらいかもしれませんがご了承ください。
また少し、言葉遣いを方言風にしています。
違和感を持つかもしれませんが
ご了承ください。
最後に一つ。プロフィールの通り
主は中学生です。
凪良ゆうさんを参考にさせていただくとは
言いつつ、完全にあの様な素晴らしい作品にはできません。
まだ社会を知っている訳でもありません。
そこまでのクオリティを期待せず
読んでいただけると幸いです。
【注意⚠️
一万字を超えています。
時間がある日ゆっくりお読みください。】
更新は大変遅くなります。
気長にお待ちくださると嬉しいです。
───⟡───
朋よ、星と散れ
───⟡───
参考 凪良ゆう様
「汝、星のごとく」
目次 𖤐
プロローグ
第一章 朱夏 1話より
第二章 乖離 2話より
第三章 齟齬 3話より
第四章 終焉
エピローグ 4話より
朋よ、星と散れ
プロローグ
蝉の声がしつこく響き渡っている。
仕事の息抜きとして来た
羽咋のカフェでさえ、
若者の集いの場所となり、雑音が
耳障りとしかならない。
若者の集いの場所と言っても、古びた建物だが田舎にはここぐらいしか娯楽がないのだろう。
諦めて店を後にする。
そのまま自分の家に帰る。
海の傍、平屋の一軒家が見えた。
鍵穴に鍵を差し込み、右へと回す。
ガチャと小さく鍵穴から音が響く。
夕焼けの陽の光が窓から差し込む。
自分の仕事部屋へと向かう。
扉を開けると目に飛び込んで来たのは
色とりどりのドライフラワーアート
灰みがかった青や緑から、色鮮やかな
ピンクや赤、オレンジなど
この部屋だけ別世界の様な雰囲気をしている。
少し小さめな背もたれのない丸椅子に
腰掛け、作業を開始する。
新しく買ってきた花をシリカゲルで急速に乾燥させたり、花を吊るしてじっくり乾燥させたり。時には、造り花でアート作品を作ることもある。とあるお店の看板だとか
普段はこんな地道な作業をやっているだけで軽く数時間は超える。
────なんでそんな作業に数時間も集中できるの?
などと聞かれるけど自分でも理解らない。
理解らない自分になれるから、俺は
これをずっと好きでいられるのだろう。
けれど今日はどうにも集中できない。
部屋を出てクロックスを履き、
外に出る。
もう夜も近く、静かそうな
家の近くの海へと向かった。
辺りはしんとしていて砂浜を歩く足音が響いていた。
波の音が心地良い。
空を見上げると、七つの星が目に入った。
─────星になりたい。
頭の中で再生される声に耳を傾けた。
砂浜に座り仕事のアイデアを浮かべる
やはり、さっきと同様集中できない。
数分ぼーっとしただろうか。
立ち上がり振り向くと、
海岸と堤防の通路を繋ぐ階段の先に
見えるのは一組の男女。
俺らが通った学校の制服。
ブレザーを少し着崩して、
他愛ない会話で笑いあっている姿を見て思い出すのは、
海に沈んでいく夕日、誰もいない砂浜で
鼻を掠めた、甘い香り。
第一章 朱夏
京本大我 十六歳 夏
「何撮ってるの?」
後ろから急に声をかけられ、
肩を震わせる。
振り向くと、同じクラスの松村北斗だった
フルネームを知っているのは
記憶力がいいとかではなく、
田舎のこの学校は生徒人数が60人程度。
この志賀町に一つしかない小規模な高校だからだ。
確か一昨年、静岡から転校してきた。
「何って、空。」
淡々と答える。
「それはわかるよ。どれ撮ってるの。」
「色々。」
色々って、と小声で言われた。
けれど気にしない。
そこまで他人に干渉するつもりはない。
何事もなかったかのようにその場を去る。
帰り道も写真を撮りながら、
何も考えずに歩いていると
スマホがなった。
『帰りどこでもいいからスーパーでおつまみ買ってきて〜ついでにビールも』
『めんどくさい家からでも近いでしょ』
『歩くのいややお酒飲んどるし
車運転出来ん』
本当にめんどくさい。
元々、酒を飲むようなタイプじゃなかったんだけど。
別に俺の家庭は変じゃない。
夜遅くまで働いてくれる父親、
パートで帰りが早く、
夜飯を作って待ってくれている母親。
別に変じゃない。だけど裏に闇がある。
地雷がある。そこを少しでも踏むと、
一気に地獄の家庭へと変わる。
夜遅くまで働いてくれるが、少し金使いが
荒い父親。
元々貧乏なうちは、母親がそれに
癇癪を起こす。
けれど平和な時は平和で、
仲良く食卓を囲む時だってある。
友達に、──今日家族とさー、
なんて話すのはだいたい平和な話。
──仲良いんだな。──羨ましい。
などと言われる度、形だけは
平和で平凡な家族であろうとする。
見た目が綺麗なりんごでも中が腐っているようなものだ。
゛現実 ゛この二文字に人生を
賭けなければならないことが悔しい。
どれだけ現実を見てきても、
慣れるようなものじゃない。
でもこれは、
今ぐだぐだ考えるものじゃない。
もう考えても、遅い。
渋々、スーパーへと足を運ぶ。
と言っても、ここのほとんどは自転車が
交通手段だ。車より自転車の方が多いと言っても過言では無い。
都会も、そういうものなのだろうか。
駐輪場に自転車を止め、
スーパーへ入った。
おつまみをパパっと買い、
お酒が売っているコーナーに行くと
一人が目に入った。
さっき海岸で出会ったはずの松村北斗だった。
なにかおかしな事が起きていると思ったが
そんな事もなさそうだ。
帰る時間を遅くしたくて、
寄り道しては写真を撮りながら来た俺と比べたら、早く着いていてもおかしくはない
「京本。」
何故か呼び捨てで呼ばれた。
けれど自分の苗字は大嫌いだ。
「名前で呼んで。苗字好きじゃない。」
少し驚いた顔をされたがすぐ表情を戻して
大我。と俺の名前を呼んだ。
知っている事にも驚いたが気にはしない
「それでお願い」
何故こんな所にいるのだろうと思った。
善人そうで、家も仲が良さそう。
けれど所詮、こんなのはただの偏見でしかないのだろう。
その事には触れないようにし
適当にビールを選び、レジへと並んだ。
身長は高い方でそこまで未成年とは疑われない。夜のスーパーだということもあるのだろう。従業員にやる気が見えない。
スーパーを出て自転車にまたがった。
信号もほとんどなく、歩道も異様に広い。
それでいて歩道を自転車で走るなと言うなら、人が通らない歩道を小さくして自転車の通路ぐらい作って欲しい。
やけくそになってだいたいの人は
歩道を走る。注意もほぼされない。
変な世の中とつくづく思う。
家に帰ると、母親が一人飲んでいた。
「ありがとう、買ってきてくれて
ごめんな、頼りないお母さんで。」
「別に。」今更気にすることじゃない
軽く返事をし、買ったものを置き、二階の自室へ上がる。
小さな棚からアルバムを取り出し、自分が今まで撮った写真を見つめる。
こう見ると風景ばかりで、自分のコミュニケーションのなさが目に見えてわかる。
一度は人をモデルにして撮ってみたいと思うが、難しいだろう。
スマホのアプリを開いて今日撮った写真をデータ移行する。
そのまま、優吾に送る。
高地優吾。
なんでも自由に投稿できるアプリで知り合った。優吾は風景画を描くのが得意で元々優吾の絵は好きだった。そのうち相手も自分を認識してくれ、俺の写真を描きたいとコメントが来た。
快く了承し、有言実行。
優吾は俺の写真の風景を描いてくれた。
予想以上にアプリ内で評判がよく、
ペアのように俺が撮った写真を
優吾が描くという現状に至る。
優吾からも通知が来ていたので見てみると
今回もすごい絵が載っていた。
すぐに現実から引き離され、
数秒見つめる。
その後は隅々まで写真を撮った者として
見ていく。
相変わらず、細かいところまで神経が行き届いていてやっぱり此奴の絵が好きだと思う。
優吾から通知が来た。
『今から描き始める』
こういう所が本気で絵が好きなんだろうと伝わってくる。
『りょーかい』
緩めに返して、スマホを閉じる。
小さめで少し足のはみ出るシングルベッドにダイブする。
そのまま眠気が襲ってきた。
ふと、思い出して来た顔は何故か
松村北斗だった。
松村北斗 十六歳 夏
もう夏も終わりに近かった。
段々と涼しい風が吹き、秋が近づく。
いつものあの場所へ向かった。
俺の安らぎの場所で普段は人気のない場所に一人の高校生らしき人物。
よく見てみると京本大我だった。
何となく不良というかどことなく不思議な雰囲気を出していたため彼のことはわかる。
カメラを手に持ち、空を撮っていた。
足音をたてないよう、そっと近づいて
「何撮ってるの?」
声をかけると華奢な肩が少し震えた。
振り返られたその顔は、儚げで想像以上に
美しかった。
思わず、少し目を逸らす。
生まれつきの性格というのは消えない。
「何って、空。」
落ち着いていて透き通った声だった。
けれどその裏には少し冷たい空気が感じられた。
「それはわかるよ。どれ撮ってるの。」
「色々。」
素直に答えてくれた事よりも、
認識してくれているのに驚いた。
その事が何故か嬉しくて、少し上擦った声で返す。
色々って、と呟く。
それでも確かに、見上げると空には一面色々な星が散らばっていた。
そのまま何事もなかったかのようにその場を去られた。
人見知りなのか、人に干渉するタイプでは
ないのか。
上を見上げたまま、呆然としていると
スマホがなった。
『酒買ってこい』
父親だった。
母親はまだ物心もついていないような年頃に病死した。
それから性格が一変した父親は、
酒に溺れ、タバコを吸いまくり、
息子を常にほったらかした。
前住んでいた静岡では、父親に関する噂が
出回り嫌気がさして引っ越してきた。
ここもまぁ小さな町だが、前居たところよりはずっとましだろう。
『わかったよ』
家にはあまり帰りたくないが
やる事も特にない。
そのままこの町唯一のスーパーへ向かう。
この町の人は大抵優しい。
知らない人なはずなのに、構わず挨拶を
してくる。
都会ではこういうのがないと聞くが、
まぁ、あんなに沢山の人に挨拶なんてしていたらそれだけで人生が食われる。
スーパーへ着くと、お酒のコーナーへ
直行し、どの酒を買うか悩んでいた。
父親はだいたい指定をしてこない。
めんどくさいの一点張りなのだろうけど、
こっちはさらにめんどくさい。
お酒の前で突っ立っていると、
足音が聞こえた。
こちらへ近づいてくる。
顔をあげるとさっき見た通りの
美しい顔が目に映った。
その後すぐに目を逸らした。
どうもこの顔に弱くなってしまった。
けれども気まづくて、
特に意味もなく名前を呼ぶ。
「京本。」
「名前で呼んで。苗字好きじゃない。」
予想外の返答で目を見開いた。
まぁ、事情があるのだろう。
家庭のあれこれなんてガキの頃から知っている。
「大我。」
「それでお願い」
何がなんやら、そのままお酒手に取って
行ってしまった。
少し古びたアンティークな雰囲気の腕時計を見る。
もう、夜も近い。
適当に手に取り、京本のあとをついて行く
意外にも京本は特に未成年と疑われることもなく、レジを済ませて帰っていった。
身長、はまぁともかく。
顔つきは可愛らしく、声色も高めだ。
けれども従業員の顔、声に生気がやどってない。
所詮田舎のスーパー、増して夜なんか
こんなものだ。
俺も素早く会計を済ませ、徒歩で帰った。
街灯も少ない田舎では、自分でライトを持ち運ぶしかない。
最近は便利でスマホでライトがだせる。
技術の発展は嬉しいがまともじゃない
ところもちゃんと直して欲しいとは思う。
色んな思考を巡らせながら、
小声で歌を口ずさむ。
ゆらゆらとレジ袋を揺らしながら
一人で歩くこの時間が好きだ。
人は温かい。けど裏では冷たい空気が
感じられる。
加えて俺は小さい頃から冷たい人を見てきてる。
何にも気を使わず、フラフラと帰るだけ。
なんて気楽なんだろう。
けれど楽しい時間なんてあっという間で
気づいたら家に着いていた。
これからは父の機嫌を最大限保つために
神経をすり減らさなければならない。
意を決して扉を空け、父に目をやると
もう潰れていた。
「水飲も。」
そう言って父を起こし、水をくみ、
飲ませた。
父親を布団に寝かせ、二階へあがる。
ようやく今日の一段落だ。
そのまま眠気に身を任せ、
布団にダイブ。
質素な木製の天井を見上げる。
彼も、家に着いただろうか、
ふと、思い出したのはあの綺麗な顔で。
彼とは何か、何故か、
分かり合える気がする。
直感でしかない。理由も根拠もない。
でも、何か同じような空気を感じる。
こんなクソみたいな世の中で、
初めてと言っていいほど、久しぶりに
小さな小さな淡い光を見つけた。
でもそれはきっと想像以上に儚げなもの
なのだろう。
京本大我 十六歳 秋
「わっ、!」
学校からの帰り道、誰かに声をかけられた
振り向いて顔を確かめると松村北斗だった
「びっ、くりした。」
まぁまぁ驚いた。初めて逢った時も
驚かされた気がする。
砂浜で会ったのが1週間ほど前だろうか。
何故かその日から少し馴れ馴れしく接して来るようになった。
別に嫌ではないけれど、少し戸惑う。
「松村、」
「なんで今更苗字で呼ぶの?」
今更って言っても1週間前喋ったくらいの癖に。
「北斗。」そう呼ぶと、合格。と
得意げな顔をされた。
相変わらず変なやつと思う。
「ねぇ、今日も写真撮りに行くの?」
唐突に質問された。
「行くならついて行ってもいい?」
まさかとは思ったが予想的中のよう。
「いいけどさ、」
「やったね。」
これが単純というやつなのだろう。
「ねぇ、あの砂浜いこー」
何かよく分からないが生意気な気がする。
「、いいよ。」
「大我は優しいね。」
不意をつかれた。
「何、急に、」
「照れた?」
「照れてないっ、」
「可愛いね〜」
「可愛くないっ!」
急にいじり倒してくるのはやめてほしい。
一目散に走って逃げてやった。
「あ、逃げた。」
「追いついた〜!」
すぐ追いつかれた。自分の運動神経が
悪いことはわかってたけど、悔しい。
此奴足速いのかよ。
少しばかり鼻につく。
「なんでそんな足速いの。」
「ごめんね。多分才能ってやつ。」
「まぁ賢いのは俺のほうでしょ。」
「こないだの中間テスト何点だった?合計」
「350以上ぐらい?ギリ400いかなかった」
「ごめん。俺450以上。」
腹が立って、バシンと北斗の肩を叩く。
俺と北斗が会った砂浜に着いた。
「この階段地味にキツくない?」
「それは分かる。」
「いい運動ですよー」
「さっき自分からキツイとか言ってなかった?なんで俺煽られてんの。」
「ほれほれ、頑張れ。」
「北斗が足速いの。」
やっぱりムカつく。
「おー、いい景色!」
「綺麗、」
水平線上に綺麗な夕焼けが沈んでいた。
すぐにカメラを構えた。
無心でシャッターを押す。
俺にとってこれ以上ない安らぎの時間だった。
自分が今、見ている景色を
形に残せる。
辛くなった時は幸せなこの時間を思い出す
この時間だけ俺の周りが凪ぐような
自分以外の誰かに気を遣わなくていい。
昔の俺には夢物語みたいなもので。
「大我。」
北斗の声で現実に意識が引き戻された。
何分ほど時間が経ったのだろうか。
夕焼けはもう殆ど沈んでしまっていた。
「なに、」
よりによって此奴の声で引き戻された事が
少し悔しくて、俺より少し高い身長の彼奴を睨みつける。
「楽しそうにしてたのはわかるけど、
まぁまぁの時間ぼーっとしてるから、
そんな睨まないでよ。」
「別に、気にしてないし、」
「気にしてるやつじゃん。ごめんて、」
松村北斗 十六歳 秋
「綺麗、」
隣でぽつりと呟いた声が聴こえた。
目を少し開いて、ただただ夕日を見つめ続けている。
俺にもこの時間は邪魔してはいけないことぐらいわかる。
見つめて、カメラを持ち上げシャッターを押して、写真・夕日とまた見つめる大我を横目に俺はその場に腰を下ろした。
そのまま、自分も夕日を見つめる。
綺麗。そう思った瞬間、アイデアが頭を埋め尽くした。
きた。そう思った。
メインは暖色系のカラーで、
背景のボード、藍色とかかな。
日本海をイメージしよう。
ドライフラワーアート。と言って
背景のボードに乾燥させた花。
いわゆるドライフラワーを並べ、付着させる。何処か儚く、此処ではない何処かに連れて行ってくれる。そんな惹き込まれる感覚が好きだった。
新しく作ろう。そうと決まったら花屋に行って、新しく買わないと。ボードも後数枚しかない。
そんな考えのまま立ち上がると、
まだ大我が突っ立っていた。
熱心で、ただ好きな物に真っ直ぐなんだろう。けれど、そろそろ俺は行きたい。
「大我。」
漸くこちらに戻ってきたのか、
はっとした顔をし、なに。と呟くと
俺を睨みつけてきた。
俺より少し身長が低いのか、上目遣いになっている。
「楽しそうにしてたのはわかるけど、
まぁまぁの時間ぼーっとしてたから、
そんなに睨まないでよ。」
「別に気にしてないし、」
「気にしてたやつじゃん。ごめんて、」
「いいもん。行くよ!」
そのまま早足で歩いて行く大我。
小走りで追いかけて、肩を組む。
「やめて。いじっかしいし、階段降りずらい。」
「えー、いいじゃん。」
「おわっ!」
まずい。大我が階段で躓いた。
咄嗟に手が伸び、大我の腹部を支え、
此方側に寄せた。
「あ、有難う、」
恥ずかしくなったのか、少し耳が赤い気がする。
「照れた?」
「は、?照れてないし、夕日で赤く見えるだけ!」
「そう?」
他愛ない会話をしながら、何故か俺の家に向かった。多少の心配はもちろんあったが
ほんとに酷い日はそうないので、
連れて行った。
ガチャという音と共に扉を開けると、
食器か、酒瓶か何かが割れる音がした。
しまった。そう思った頃にはもう遅く、
遂には、此方にも何かが飛んできた。
「大我、ごめん!外、ちょっと離れた所で待ってて、」
大我が息を飲む音とわかったと少し低めのトーンの声が返ってきた。
扉を閉める。
ここからは大変だ。まず、何が起こっているか確認しなければ。
頭を守れるもの、と考えた時、
近くにあった学校指定の
白で後ろに反射ステッカーが着いている
ヘルメットが目に付いた。それを被り、
そのままリビングへと続く扉を開けると
リビングは酷い状態だった。
だいぶ前から暴れていたのか、
ソファーでぐったりと、いびきをかきながら寝ている父親。
父親が吐いたのであろう吐瀉物。
幸い、高めの家具、電気製品は壊れていないものの、そこらじゅうに酒瓶の破片が飛び散っている。
何があったかなんて分からない。
脳内の処理が追いつかず、とりあえずと思いヘルメットを外すと共に、ガチャと音がした。バッと横を向くと
大我だった。
「なんで入ってきたの!遠くで待ってろって言ったじゃん!」
焦りながら言うと、だってと口を尖らせた
「物音止んだし、あんな音してたら
酷い状態だと思って、手伝いに。」
怖いもの知らずなのか、少し天然なのか
わからないが、助かったというのは本音だ。
当然だが、大我はリビングを見てうわー、
といった。
こんな光景を見てまで、俺と会話をしようとしてくれるだけで、俺は此奴をどうしようもないほど信用してしまう。
何からしようか。
これもまた、不幸中の幸い。
父親は特に怪我もなく、吐瀉物で身体が汚れているわけではなかったので、そーっと起き上がらせた。案の定起きたが、
疲れているのか、特に手も出してこなかった。寝よっか疲れてるよね。と声をかけ
寝室へ追いやった。
ここからが本番だ。
リビングへ戻ると、大我が酒瓶の破片を集め、処理していた。
慌てて代わろうとすると、もう殆ど終わった。と言われた。
大我の母親も、メンタルが不安定になってきたらしい。よく食器を割ったりするそうだ。詳しい事はわからない。
掃除機だけ貸して。とあっけらかんとした表情で言われたので、場所だけ口頭で教えた。俺も吐瀉物をさっさと片付けた。
親の世話で割れ物などの始末に慣れている十六歳は普通、じゃない。
幸せとも言いきれない。
ふたりでキッチンのカウンターに腰掛けた。
どっと疲れた。そう思い目を閉じると、
頬に何かがつんと当たった。
目を少し開けて、横を見ると、
大我が口角をあげていた。
頬を指でつつかれたようだ。
平和。久々に味わった気がする。
「なんか飲む?って言っても冷蔵庫酒ばっかや。」
「お酒飲んでみよっかな。ってバカだよね、」苦笑いしながら言われた。
その考えはなかった。
飲むか。そう言って、酒を準備した。
目に付いたのが「澪」というお酒だった。
度数を見ると5程度だったのでそれを
グラスに注いだ。
コツッと音を立ててカウンターに出すと、
遠慮がちに手が伸びてきた。
初めて飲む酒だったが、炭酸ジュースのような味で意外にするすると飲めた。
大我も同じような反応だった。
「美味しい。ジュースみたいだけど、
それとは違って、なんとなく脳がぼやける。」
酔ったのかは分からないが、少し目が潤んできていた。そんな瞳に惹き込まれ、
俺たちは初めてのキスをした。
甘くて、何処か少し苦くて、
そう思ったのは、俺だけじゃない。
その後に肩を寄せあって笑った。
夜の闇が濃くなっていった、
12時ぐらいの出来事だった。
京本大我 十六歳 秋
俺と北斗が付き合ったことは、
すぐ親にバレた。
なんであんな親の、しかも男の子、
など色々言われたが、とやかく言われる筋合いはない。
初めて付き合い、キスをしてから
抱き合うまでそう時間はかからなかった。
北斗は前に言っていた。
確か、北斗の部屋に邪魔させてもらった時だった。
目に飛び込んできたのは美しいドライフラワーアートというものだった。
暫く見つめ、カメラを構え、色々な角度から撮った。撮り続けた。
北斗は恥ずかしそうに、そんなに取らんといて等と言っていた。
それと同時に、高校卒業したら、
長野行って、もっと本確的にやりたいとも言っていた。
「俺も一緒に行く。」というと、
驚いた顔をされたが
よし、じゃ一緒に行くか。
とすぐに言ってくれた。
────彼処付き合ってんろ?
────らしいね。一緒に町も出るらしいよ。
町で飛び交う、噂話に耳もくれず
俺たちはまた、あの浜辺で会う約束をしていた。
普通、という目からすればただの男同士の遊びだが、俺からすればデートに等しい。
気合いと言ってはなんだが、
少し髪を短くし、前髪のある状態で
その日、浜辺へ向かうと
何が起こったのかなんて何もわからないまま、ゴロゴロしている消波ブロックの隙間に連れ込まれ、襲われた。
オシャレにそこまで興味がない俺は
全身ジャージという、なんとも脱がされやすい格好だった。これがいけなかったのだろうか。
行為後、もう遅いというタイミングで
ごめん、と謝れた。
「何しに来たんだっけ。星見にきたんだよね。」
そう少し嫌味っぽく冗談で言うと、
犬のように項垂れていた。
段々、眠くなっていきコトンと眠ってしまった。
行為後はどうもすぐに寝てしまう。
起きた後、少しからかわれるまでがセットだ。
けれど、今回は珍しく北斗に起こされた。
誰かの声が聞こえるらしい。
急いでジャージを着ると、
ひょこ、と見慣れた顔が見えた。
田中樹。
この町の唯一の天文学者だったか。
「何してるんですか。」
と聞かれた。まだジャージを来ている途中で上半身だけ、肌が見えている状態だった。
聞くまでもなさそうだな。と言うと
「連休明け、俺の研究所に来い。」
とだけ言われた。
やらかした。この五文字しか頭になく、
北斗を責めた。
ごめんって、と北斗も申し訳なさそうにしてたので、今回は許してやった。
連休明け、研究所の前で恥ずかしい等と言い合っていると、声が聞こえたのか
田中さんが出てきた。
こっち来い。とだけ言われたのでついて行くと、大きな望遠鏡がある、観察室に案内された。
「お前ら、避妊は。」
そう、淡々と言われた時は驚いた。
一瞬で顔が暑くなるのもわかった。
北斗が小さい声で、外に…、等とごにょごにょ言っていると、ほいとコンドームを渡されたときは絶句した。
「それとよ、別に好きにしていいけど、
場所はもうちょい考えような。」
とだけ言われた。
それは自分達も思っていたので
はい。とすぐ返事をした。
もう少し時間を食われると思っていたが思いの外すんなりと帰され、驚いた。
「なんか変な人だったね。」
「でも悪い人じゃないんじゃない?」
少し目を見開く。
「北斗が、人を褒めた」
「俺の事どう思ってんのよ。」
「人の事まるっきり信用してなそう。
なんなら俺のことも。」
「いや、さすがに大我は大丈夫。
上の文は、否定はしないかな、」
しろよ。とだけ突っ込んで、
上を見上げた。
今夜も一面に星が煌めいている。
松村北斗 十六歳 秋
家の風呂からあがると共に空気が震える音がした。
スマホを手に取ると、大我からだった。
すぐに応答ボタンを押すと、
「母さんが出てった!今度中間だから勉強してて、部屋から出てきたらいなかった。父さんが珍しくリビングにいる。いっつも帰り遅いのに。しかも母さん今日薬飲んでるはず」
そんな事はどうでもいい。
何故出てった?
「わかった。大我一回落ち着こ。
お父さんに何があったかしつこく聞いて。
今そっち行くし。」
「怖い。北斗切らないで」
「俺もきってあげたくないけど、
お母さんから電話とかかかってくるかもやろ。」
少し間をあけて、うん。と返事が来たので
大我との電話を切り、田中さんへ電話をかけた。
実は田中さんの研究所へ行った日。
俺の父親の噂はとっくに知っているそうで
何かあったらと電話番号をくれた。
ワンコールで電話に出てくれた。
すぐに「なんかあったか」と聞かれた。
話が早くて本当に助かる。
事情を素早く説明し、車を出してくれることになった。
結構長くこの町にいるそうで、大我の家は
把握しているそう。
大我の家に車で来てもらうことにし、
俺は家を飛び出し、自転車へ跨った。
ギアをあげ、全速力でペダルを漕ぐ。
元々体力のある訳ではない俺は、
すぐに息切れし始めた。
それでも足をとめず、ものの数分で
大我の家についた。
もう、田中さんは大我の家に着いていた。
中から言い争う声が聞こえる。
幸い鍵が開いていたので、
そのまま声が聞こえる方へと駆けつけた。
大我をなだめ、父親にここで待っているよう言い聞かせた。
田中さんに車を出してもらい、大我の母親が居そうな場所へと向かった。
なんとなくわかる。自死しようとしているのだろう。
大我が泣きながら言っていた。
父親が借金をしたんだそう。
この辺りで自死できそうな場所。
やはり、志賀町付近の沿岸だろう。
凪いでいるように見えても
以外と強い渦が、巻いていたりする。
ニュースなどでしょっちゅう言われている
「この辺りの海でで一番強い渦が巻いているところに向かってください。」
そう言うと無言で田中さんは車を走らせてくれた。その無言が今はとても心強いものだった。
ブレーキがかかり、田中さんにありがとうございますとだけお礼し、すぐ車をおりた。夜の海はとても冷えていて、すぐに鳥肌がたった。
階段をおり、海辺へ目をやると、
一つ影が動いたのが見えた。
「母さん!」と叫んだ後、大我が走って行こうとしたので止めた。
「大我まで海に飛び込んだらそれこそ大我も死んじゃうよ。」
二人で必死に足を動かした。
深く積もった砂が鬱陶しい。
そのまま大我を待たせ、大我の母親の手を取り、こちらへと引き寄せた。
危なかった。もう少しで渦に飲み込まれるところだった。
こうなる事がわかっていたかのように、
田中さんがブランケットを持ってきてくれた。
大我の母親を車に乗せ、また家へと向かった。
家に入った瞬間、母親は父親に殴りにかかった。酒瓶を投げつけ、蹴りをいれ、
また拳で、と。
どれだけ、こんな状況に慣れている俺でもきつい光景を、大我は呆然とした顔で見つめていた。
止めなければ、けれど、足が動かない。
立ち尽くすしかなかった俺たちを横目に
田中さんが大股で歩んでいき、
大我の母親を止めた。
何処までも、信用できる人だと思う。
そのままその夫婦を交えて、話し合いをしてくれた。
結果は離婚。また家にきて離婚届を書いたりはするけれど、今日からもう別居することになったそうだ。
出ていくのは父親。
まぁ当然だ。一見、落着のように見えるが、更に大我を襲うのはこれからだ。
母親はパート働きだと言っていた。
これからの事を更に大我と母親で話し合わなければならない。
こうなってくると俺はただの部外者。邪魔者だ。お邪魔しました。とだけ声をかけ
自転車に跨った。一段と寒さが増した気がする。頬に当たる風が肌を乾燥させていく
扉を開けると、父親がソファーで寝ていた。優しく肩を叩き、起こし、寝室へ連れていく。それと同時にスマホが鳴った。
『ごめん。一緒に町出れない』
あぁ、そうだろうな。
来年になったら、こんな親の世話から解放され、好きな人とずっと一緒に居れる。
そう、思っていた。
いや、わかりきったことだった。
幸せと不幸は常に隣合わせだ。
そして、〈純愛〉今までの俺になかったもの。俺の幸せをいつも燻ませるのは現実だ
『海行く?』
なるべく軽く返したかった。
すぐに、『行く』と返ってきた。
上着を羽織り、自転車に跨った。
駐輪場に自転車を止め、浜へ向かうと
もう大我はいた。
無言で空を見つめていた。
「大我。」
大我は首だけをこちらにねじった。
「星はさ、四季折々で、出てくる星が違うのがいいよね。」
「例えば?」
「春。南の空のかなり高い位置。
青白く儚く輝く星。スピカ。又の名を
真珠星。
夏。東の空の天頂近く。
白く輝く一等星。デネブ。又の名を天津甕星。
冬。西の空の低い位置。それも日の入り直後。これも青白く輝く星。ベガ。又の名を織女星。」
「秋は?」
そう言うと大我は首を真上へと向けた。
空一面に星たちが輝いている。
「北斗七星。」
秋。北の空の高い位置。
七つの星が煌めいている。
六つは青白く。けれど内一つ。
一番暗く、白く輝いていた。
大我はそこまで言うと黙ってしまった。
数秒の沈黙の後、大我は言った。
「星になりたい。」
驚いて、首を大我の方へと勢いよくねじった。なんとなく俺の中で死にたいと同じ意味な気がしたのだ。
俺の心を感じ取ったのか、大我は笑って言った。
「違うよ。ただ、一人で輝いてるけど、
孤独じゃないってどれだけ幸せだろうなって。」
納得してしまった。けれどまた現実の話になるのが嫌だった。
「俺がいるよ。」
「ほんとに?」
「うん。星は何処からも見えるでしょ。」
現実は常に隣にいる。
だから、同じ星を、同じ時間に、見られている時。これを噛み締めたかった。
何処まで続くかわからない。
けれど、続くところまで共に歩きたい。
お互いの目に同じ星が映っているうちは─
無言で手を差し伸べた。
大我は何も言わず、その手をとった。
今、叶わなくても。
じゃあいつか、一緒にあがろう。
一緒にいよう。約束しよう。
その日が何時、どんな時だろうと────